「足のツリ」多彩な原因とその対策

突然、夜中に足がツリ、強烈な痛みで目が覚める。
これをお読みの方、全ての人が経験しているのではないかと思います。
寝込みを襲われるほど嫌なものはありません。
急に血圧は上がり、睡眠は妨げられます。
更に、痛い足を我慢しながら、もとに戻すほど辛いものはありません。
それも、毎日のように起こる場合もあります。
これは、俗に言う「こむら返り」です。
医学辞典に「こむら返り」の頁があり、muscle crampと英文が添えられています。
筋肉の痙攣という意味です。
これを、有痛性筋痙攣と呼ぶこともあります。
症状を引き起こす原因には、次のように様々なものが関わっています。

Ⅰ)筋肉や腱そのものの問題

腱紡錘の異常 – センサーの劣化
筋肉が極端に収縮や弛緩を起こさないよう、制御するセンサーが筋肉にあります。
筋紡錘というもので、筋肉が弛緩し過ぎて断裂しないように神経を介して脊髄へ情報を送り、脊髄からの神経伝達により筋肉が過剰に伸展した場合、筋肉が縮まるよう指令を出します。
筋肉が骨と付いている部分を腱と呼びます。
腱にも同じようにセンサーがあり、筋肉が過剰に収縮した場合、腱が断裂を起こさないように神経を介して脊髄へ情報を送り、脊髄からの神経伝達により筋肉へ緩めるように指令を出します。
これらのセンサーが上手に働いて調節しているわけですが、経年劣化などによりセンサーの働き、特に腱紡錘の感度が鈍くなると、筋肉が極度に収縮を続けてしまい足がツリ易くなります。

Ⅱ)筋肉や腱以外の問題

電解質のバランス不均衡 – 細胞の異常興奮を起こしやすくなる方向へ傾く環境の変化
筋肉の細胞や神経の細胞は、イオンバランス(カリウム・ナトリウム・カルシウム・マグネシウムなどのイオン)によって活動が始まり、収縮を起こしたり情報を伝えたりします。
通常、何らかの病気がない限り、イオンバランスは保たれた状態です。
しかし、眠っている時は水分の補給が長時間行われず、また体温調節のために目に見えない水分が皮膚から失われ、脱水に傾いています。
また、昼間活動しているときと比べて血行の循環が悪く、足などの抹消血管は細くなった状態です。
このような状態が長い時間続くと、イオンバランスに異常が起こるため、末梢神経の興奮が抑えられ難くなり、夜中に足がツリ易くなると考えられます。

要因となる主なものを挙げると
1:局所の冷却
2:循環不良
3:脱水
4:栄養障害
5:過度の運動や過度の安静
6:老化
7:様々な疾患(筋疾患・甲状腺疾患・副甲状腺疾患・人工透析・脊椎疾患など)
8:薬剤(スタチン系・カルシウム拮抗薬・βブロッカー・利尿剤など)
などです。

特に、年を重ねると次第に筋肉は衰えます。
また、年齢とともに抱える病気が増え、特に腰部脊柱管狭窄症などのような脊椎疾患は避けようがありません。
病気が増えると、それに伴い治療薬も増えてきます。
お薬も、それぞれに意味があって使われているので、勝手に止めることは出来ません。
そうなると自分で出来る対策は、一体何があるでしょう。
結局、要因になりそうなものに対策を打つことです。

1:局所の冷却 → レッグウォーマーなどで、下肢の保温を行う
2:循環不良 → 入念に下肢のストレッチやマッサージを施す
3:脱水 → こまめに、水分の補給を行う
4:栄養障害 → 偏りのない、バランスの良い食事をとる
5:過度の運動や過度の安静 → 適度な運動を心掛ける

何事もやり過ぎは禁物です。
ストレッチやマッサージの方法は、ご自分で出来る範囲のことを遣ってみましょう。
効果が期待できると思います。
7:8:に示されているような様々な疾患(筋疾患・甲状腺疾患・副甲状腺疾患・人工透析・脊椎疾患など)は自分でどうしようもありませんし、治療のための薬剤(脂質異常症で投与されるスタチン系・高血圧で投与されるカルシウム拮抗薬やβブロッカー・利尿剤など)は自分で調節することが出来ません。
また、6:の老化についても避けることが出来ません。
しかし取り敢えず、何とかならないかと薬を希望される患者様が多いことも事実です。
そのような場合、芍薬甘草湯という漢方薬をまず試して貰うようにしています。
効果が得られるかどうかは差があり、経験的に確実な効果は余り期待できないかも知れません。
症状が酷い場合は、筋弛緩作用を持った内服薬(広く頸腕症候群や肩関節周囲炎、腰痛症などに利用されている)エペリゾン塩酸塩やバクロフェンを使用することがあります。
どうしても症状が治らない場合は、一度ご相談下さい。
少なくとも下肢のストレッチやマッサージなど、ご自分で出来そうな対策は積極的にやってみることが大切です。

アクビは脳の冷却と覚醒をもたらす

今年の夏は本当に暑かった。
全国で観察された酷暑の記録は塗り替えられ、テレビでは毎日のように熱中症への注意が伝えられました。
しかし、「こんな暑さは、今まで経験したことがありません」と言えば嘘になります。
かなり昔の話になりますが、ある病院に勤務していた頃、危険なほど暑い医局で過ごした経験があります。
当時、勤務していた病院の医局は、改築のためプレハブ小屋。
真夏の暑い最中、プレハブ小屋で過ごした経験をお持ちの方は、余りいらっしゃらないだろうと思いますが、非常に暑いです。
無論エアコンはついているのですが、そもそも断熱性が低い。
折角、冷えた空気が出てきても、直ぐ暑くなります。
それよりも、外から薄い壁を通して伝わる熱で、部屋の壁側に居ようものなら、熱波が肌に張り付いて来るのです。
壁からジリジリ迫りくる熱気に堪えなくてはなりません。
そんな環境でも、診察を終え一息つくのは医局しかありません。
しかも厳しい暑さの中、更にエアコンを切る輩がいたのです。

都内某大学附属病院から毎日、交代で非常勤の先生が勤務していました。
大学病院での仕事は、忙しく大変です。
当直明けで更に勤務となれば、さぞかし辛いことでしょう。
医局でちょっと仮眠したくなるのは当然。
それは仕方ないことです。
しかし、困ったことに真夏の暑い最中、プレハブ小屋の中でエアコンを切って寝る。
これは、殆ど自殺行為です。
自ら熱中症で死を選ぶのは構いませんが、複数の人が利用する医局では大変迷惑します。
折角、エアコンをつけて出て行っても、帰ってきたらエアコン切って寝ているのです。
本当に、「このままだと死ぬぞ。」と思っても、寝ている人を起こす訳にも行きません。
疲れて眠っていることを知っていて、睡眠を妨げるのは無粋です。
結局、泣く泣くそっと耐え忍ぶしか選ぶ道がありませんでした。
白衣は脱いでも、それ以上脱いで裸になれば変質者扱いです。
しかし、仮に裸になったとしても、まだ暑いに違いありません。
何しろ、室温は32℃。
外気温と大差はないのです。
「そんなに暑いところが好きなら、医局の外で寝て欲しい。」
と言いたいところですが、それをお願いする訳にも行かず、鬱憤は募るばかりでした。

こんな環境のなかにいると、頭はボーとなりアクビが出始めます。
これはもう、熱中症の症状ではないのか。
真剣に生命の危機を感じました。

ところで、アクビはどうして出るのかご存知でしょうか。
疲れた時や眠いときにおこる動作ですが、不思議なことに詳しいメカニズムは良く分かっていないのです。
昔から、脳の酸素分圧が低下したときに起こる反射であると考えられていましたが、どうも酸素分圧の低下は観察されないため、最近はアクビの動作により脳の温度を下げているのではないかという考えが定着しています。

アクビの反射を司る中枢は、脳の視床下部にある室傍核という場所にあるのだそうです。
医学書院の医学大辞典にもアクビの頁があり、
視床下部室傍核(オキシトシン含有細胞を含む)が中枢と考えられている。視床下部室傍核から延髄の呼吸・循環中枢,唾液核,顔面神経核,脊髄などに投射し,呼吸・循環系,自律神経系,脊髄運動系の広汎な反応を引き起こす。
と記されています。
この視床下部の室傍核に刺激を与えた実験を、色々な研究者が行って来ました。

2010年頃の研究ですが、当時の東邦大学医学部生理学講座が行った研究によると、視床下部の室傍核にオレキシン(神経ペプチドのひとつで、摂食行動の制御因子であり、また覚醒の維持に重要な役割を担っていることが分かっています。因みに、比較的最近の睡眠導入剤には、オレキシン受容体拮抗薬という種類の薬が存在しています。)を投与してアクビを誘発し、この時同時に脳波をみると覚醒している時にみられる脳波が確認されるため、アクビによって脳は「覚醒」すると結論づけています。

実験を行った東邦大学医学部生理学講座の有田先生と鈴木先生は、アクビに「覚醒」と「警鐘」の二つの意味があると述べています。
確かに、眠たくなるとアクビが出るのは、脳を覚醒させる効果があるためだろうと思われます。
アクビをすると、少しスッキリしたような気がします。
人の話を聞いているときにアクビをするのは無礼だと思われますが、脳の覚醒効果から考えれば、一生懸命話しを聞こうとする態度だと褒められるべきなのかも知れません。
寧ろ、眠くなる話に問題があると言えるでしょう。
これを読んでいる方にも、既にアクビが出ているのではないかと心配しています。

もう一つの「警鐘」は、心筋梗塞や脳梗塞など循環器疾患でみられるアクビです。
脳の血流低下により起こるため、重大な事態への警告と考えられます。
同じ頃の研究ですが、ニューヨーク州立大学オネオンタ校のアンドリュー・ギャラップ准教授が行った実験では、ラットの脳に電極を埋め込み、脳の温度を測定したところ、温度が0.1度上昇するだけでアクビを誘発し、アクビをすると温度が0.4度低下したとの報告を行っています。
これからすると、脳のオーバーヒートを防ぐためアクビをしていると考えられるのです。
脳内にある温度が高くなった血液を脳の外へ排出し、相対的に低い温度の血液を脳へ送り込んでいるのではないかと説明されています。
脳へのダメージを防ぐために警鐘を鳴らし、同時にその対策として冷却を行っていると考えて良いのでしょう。
何れにせよ、視床下部室傍核に与えられた何らかの刺激(温度変化やグルタミン酸、神経ペプチドのオレキシンなど、最も有力な刺激は温度上昇)によってアクビを起こし、脳を冷却し、更に覚醒しようとすることは間違いないようです。

因みに、「欠伸」と書いてアクビと読みます。
もともと、「欠」だけでもアクビの意味があるそうです。
アクビをする時、手足を同時に伸ばす動作を「伸」で表し、一連の動作を「欠」と「伸」の二つ合わせて作られた当て字ではないかと考えられています。

このアクビに相当する動作は、殆どの動物で確認されるそうです。
アクビが非常に原始的な反応であると同時に、自らの生命を守るために必要とされている反応だということを表しています。

プレハブ小屋の医局で経験したアクビは、生命の危機に対する警鐘だったと考えられます。
もう少しで、危うく倒れるところでした。
「この怒りの捌け口はないものか。」と考え、怒りをノートに書き殴りました。
あまりにも汚い言葉ばかりなので、残念ながら公表できません。
その昔、昭和33年に、島倉千代子さんが歌ってヒットした「からたち日記」という歌謡曲がありました。
歌謡曲とは全く関係ありませんが、題名をもじって「腹立ち日記」という記録を残していた人物がいます。
釈明しておきますが、私ではありません。
役に立っていたかどうかは知りませんが、少なくともストレスの捌け口になっていたとは思われます。

心気症治療には症状の理解と苦しみの共感が必要

外来診療では、些細な症状が心配になって仕方ない患者様が、まれに来院されます。
そのような患者様の症状は多彩で、吐き気や胸やけ胃痛などの消化器症状、動悸や胸痛などの循環器症状、皮膚がチクチクやピリピリするなどの知覚の異常、熱感や発汗、倦怠感、ふらつき、不眠等など様々な訴えがあり、統一性や一貫性は余りみられません。
多彩な症状があるにもかかわらず、病院で調べても特別な器質的疾患が発見されることはなく、そのような症状が6ヶ月以上続いた場合に診断されます。

心気症という病気につい、その原因は良く分かっていませんが、ストレスや過労、または患者様のご家族、知人の病気などを契機として発症することがあります。
軽微な心身の不調から、何か生命に危険が及ぶような重い病気ではないかと強い恐怖や不安を感じてしまうのです。
あらゆる検査を受け、医師から異常がないと診断されてもそれを受け入れることができず、他の病院へ転々と受診することが多いのも特徴です。
疫学的にみて、病気の発症に性差や年齢差はないようです。
病気の位置づけとしては、身体表現性障害というカテゴリーに入ります。
このような病名は、他に器質的疾患が無いことを除外した上で診断されます。

心気症の定義は、重篤な身体疾患があるという頑固な確信やこだわりが半年以上持続し、そのために日常生活が障害され、医学的治療や検査を執拗に求めるもので、身体表現性障害の一つとされています。

抗うつ薬や安定剤の投与が、一般的な治療方法となります。
症状に囚われることなく、何か嬉しいこと楽しいことを計画したり、夢中になることに参加したりして、日々の生活を充実したものにすることが大切であり、患者様にはそのような指導が行われます。
ご自分の症状と付き合いながら、生活していくことが必要です。
治療としては抗うつ薬や抗不安薬などが用いられますが、ご本人が薬に対して不信感を持っていたり、服薬により体調不良を訴えることが良くみられます。

実際に、当院で経験した患者様との遣り取りをご紹介させて頂きます。

「センセ〜、お腹が張って苦し〜」。
何度も同じ訴えで 来院される70代の女性の患者様です。
「お腹は空くの。空くから全部食べちゃう。その後、お薬飲んだらお腹が張って痛いの。」
どうも薬が合わない、と言うことらしいのです。
近くのクリニックで胃カメラを受け、異常なしの診断を頂いたようです。
一応、制酸剤を処方されています。
それを飲むと、お腹が張って痛くなるのだそうです。

何か他の薬はないかと、別のクリニックにも受診。
「そこの先生が、僕も飲んでいるからと良いよって言うので貰って来たんです。」その薬がまた合わない。
「薬を貰ったその日は何となく良いけど、翌日からお腹が張って調子が悪くなってくるの。」だそうです。
これまでいろんな薬をもらったようですが、全て合わないと仰います。
「世の中には、沢山の薬があります。しかし、どの薬も合わないと思いますよ。」
とお話を致しました。
「私も気分だと思う。もともと心気症だから・・。」

昔から精神科へ通院しているようで、精神科から心気症の診断を受けています。
精神科から安定剤を処方され、次第に良くなった経験があるとのお話です。
それなら同じ薬を飲めば良いと思うが、ご本人は薬に頼りたくないという気持ちがとても強いのです。
症状は辛いが、薬は飲みたくない。
この矛盾が、悪化した原因の一つかも知れません。
「今必要なことは、精神科への受診だと思います。」と申し上げると、
「精神科の先生は今、夏休みでいないの。だから先生、何とかして下さい。」
「薬が嫌なら、日常生活の過ごし方を工夫し、自分に合った方法を見つけて下さい。」
そして、お腹のマッサージやストレッチを指導しました。

お具合から察すると、胃や腸のガスが腸を圧迫している可能性も考えられます。
「排便はどうですか。」と伺うと
「便がちょっとずつ何回も出るの。」だそうです。
しかし、お腹を診察しても異常はなく、ガスが溜まった様子もありません。
腸の音も普通で、消化管の動きは良好です。
取り敢えず、マッサージやストレッチをご自宅で実行して貰いました。
すると「ガスが少し出れば、お腹が一寸楽になるみたい。」
それでも「食べるのは食べるけど、食べたら後でお腹がキュッと痛くなる。」そうです。

そしてまた、ある日のこと
「夏休みに、家族が皆で出かけようって言うんです。行った先が山の中だから、もし何かあったら心配で・・。どうしましょう。」と仰しゃいます。
「それは良いことです。気分転換になるので、是非行ってください。」
とお答えしました。
悶々と病気と向き合うより、ご家族皆さんで楽しくお話をして過ごす方が、どれほど精神的に良いか分かりません。
しかし、ご旅行から帰って来ても症状は変わらず。
お腹の症状は、それ以後も繰り返し続きました。

このように心気症の患者様は、症状に対しての心配が強く、医師は忍耐強い対応が要求されることが多いことも事実です。
また、医療機関を転々とする傾向を起こしやすいので、継続した治療が難しくなるのも特徴の一つと言えます。
時間をかけながら、お話に耳を傾け、患者様の症状を受け入れ、病気への恐怖を理解し、その苦しみに共感することが大切だと思います。

COVID-19による死亡率の性差とエストロゲンは関係するか

パンデミックとなった、今回の新型コロナウイルス感染症。
今のところ日本では、イタリアやアメリカで報告されている大惨事はみられません。
余談は許しませんが、出来るだけ早く治まることを祈るばかりです。

これまで、中国やイタリアなどのデータから判明している死亡率の男女差について、非常に興味深い点があります。
今までに海外で報告されている死亡率の男女差は、男性の方が高いのです。
中国武漢市での統計では、男性の死亡率が2。8%に対し、女性は1.7%と男性に比べて低かったようですし、イタリアでも、男性は10.6%であったのに対し、女性は6%と、同様に女性の方が低かったのです。
同様な現象は、他のコロナウイルスが原因となったSARS(重症急性呼吸器症候群)やMERS(中東呼吸器症候群)でも男性の死亡率が高かったことが分かっています。
その一因と考えられているのが、女性ホルモン(エストロゲン)です。

アメリカ合衆国アイオワ大学のマウスを使った実験で、コロナウイルスに感染させた結果、人間の場合と同じように雄の死亡率が高かったそうです。
次に、雌の卵巣を取り出した後、コロナウイルスに感染させてみた結果、雌の死亡率が大幅に上昇したということです。
このことから、エストロゲンが持っている何らかの作用で、コロナウイルス感染への効果をもたらしたのではないかと考えることが出来ます。

そこで、大豆に含まれるイソフラボンの効果を利用できないかと考えるのは、自然の流れかも知れません。
大豆に含まれるイソフラボンは、分子構造が女性ホルモンの「エストロゲン」に似ているため「植物エストロゲン」と呼ばれています。
納豆やみそ汁などの大豆食品を毎日摂っていれば、新型コロナウイルスの感染リスクを少しでも下げることが出来るのではないかと期待してしまいます。
しかし、腸内にエクオール産生菌を持たない人は、イソフラボンによるエストロゲン(女性ホルモン)様の作用は期待出来ません。
また、エクオール産生菌を持っている人は、30~60%だと考えられており、エクオール産生能力にも相当な個体差があるといわれています。
しかも、一体どの程度摂取すれば一定の効果が得られるのか、全く分かりません。
大量に大豆食品を摂取したとしても、感染リスクが下がることを期待するのは無理でしょう。

もう一つ性差に関連し、興味深い話があります。
新型コロナウイルスが人間の細胞内に感染する場合、アンジオテンシン変換酵素2(ACE2)という酵素を利用して侵入しているそうです。
アンジオテンシン変換酵素2(ACE2)という酵素は、人間の身体に広く分布していますが、肺や心臓、消化管などに多く、また精巣にも比較的多く存在するそうです。
しかし、卵巣にはアンジオテンシン変換酵素2(ACE2)という酵素がほとんど存在していないのだそうです。
このことから考えると、女性ホルモンを主に作り出す卵巣へは、新型コロナウイルスの感染を受け難いことになります。
当然のことですが、新型コロナウイルスの感染経路として考えられる部位は気道です。
卵巣への感染は考えられませんが、死亡率の性差という視点から比較してみると、精巣と卵巣にはアンジオテンシン変換酵素2(ACE2)酵素の分布差があるという事実の妙を感じます。

女性ホルモンには、まだ解明されていない何らかの働きがあり、新型コロナウイルス感染による死亡率の性差を生んでいる可能性を完全に否定することは出来ないかも知れません。
しかし、男性は圧倒的に喫煙率が高いという事実の方が、死亡率に男女差ができる最大の原因になっていることは間違いないでしょう。
女性の方が男性より新型コロナウイルス感染による死亡率が低い理由を、無理にエストロゲンと関連させて判断するのは多少、飛躍し過ぎた考え方だろうと思います。

BCGは新型コロナウイルス感染症の予防になるだろうか

BCGと新型コロナウイルス感染症の予防効果について

患者様から戴いたご質問へ、
忽那賢志(国立国際医療研究センター国際感染症センター)先生の見解を拝借し、お答えしたいと思います。

先ず最初に、簡単なBCGの説明から
BCGは結核を予防するワクチンの通称で、牛型結核菌を弱らせ、ワクチンにした生ワクチンです。日本では、生後1年の間(通常生後5カ月から8カ月の間)に接種することになっています。生ワクチンですので、免疫が弱っている方や妊婦さんは接種することができません。

これまで、結核の予防以外にも予防効果も調査されており、小児期の呼吸器感染症や敗血症を減らす効果があることや、低出生体重児の死亡率を減らす効果が認められるという主旨の論文が発表されているようです。

結核以外の感染症に対し、なぜ予防効果があるのか十分に解明されていませんが、BCGを接種することにより、白血球の成分の一つである単球に働きかけて自然免疫を強化するゲノム変化を起こすことや、炎症促進性サイトカインの分泌、特にIL-1Bを増加させることが影響しているのではないかと考えられています。

さて、新型コロナウイルス感染の流行分布からみると、
BCGを定期接種している国(日本、中国、韓国、香港、シンガポールなど)では新型コロナウイルスの感染者が比較的少なく、それに対し、定期接種を採用していない国(イタリア、スペイン、米国、フランス、英国)では新型コロナウイルス感染者が多いとも思われます。

しかしながら、日本ワクチン学会では以下のような見解です。
「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対する BCG ワクチンの効果に関する見解【2020.4.3 Ver.2】」

「新型コロナウイルスによる感染症に対してBCGワクチンが有効ではないか」という仮説は、いまだその真偽が科学的に確認されたものではなく、現時点では否定も肯定も、もちろん推奨もされない。

BCGワクチン接種の効能・効果は「結核予防」であり、新型コロナウイルス感染症の発症および重症化の予防を目的とはしていない。また、主たる対象は乳幼児であり、高齢者への接種に関わる知見は十分とは言えない。

本来の適応と対象に合致しない接種が増大する結果、定期接種としての乳児へのBCGワクチンの安定供給が影響を受ける事態は避けなければならない。

現時点でCOVID-19を予防する目的でBCGを接種することは推奨されません。

結論
BCG接種と新型コロナウイルス感染症の因果関係は全く分かっていないため、
新型コロナウイルス感染症の予防目的でBCG接種を行うことは、現時点において意味がないと考えます。

癌と肥満は関連性がある 飢餓の歴史が倹約遺伝子を生んだ

体重計に乗るのは気が引ける、と感じている方は多いかも知れません。
私も、その一人です。
食文化が栄えると共に、肥満は増加してきました。
現代社会においては、肥満が生活習慣病を引き起こす重大な要因となっています。

肥満は、過剰に脂肪組織が増えた状態を示しますが、人間の体重に対して脂肪が占める割合で、男性20%・女性25%を超えると、肥満であると診断されます。
体脂肪率を測定して判断するのですが、肥満かどうかをみるために、BMI(Body Mass Index)で計算し判定するのが一般的な方法です。
体重(kg)÷[身長(m)× 身長(m)]で算出します。
正常値を22とし、25以上を肥満と判定します。
1度の肥満:25≦BMI<30
2度の肥満:30≦BMI<35
3度の肥満:35≦BMI<40
4度の肥満:40≦BMI
と肥満のレベルが分類されています。
これは、世界共通の判定方法です。

肥満になりやすくなった一端として、私達が培ってきた環境への適応能力も関係があります。
凡そ、一万年前に中東で農耕が始まり、急速に世界中へ広がりました。
日本へは、縄文時代に中国から稲作が伝わって来たと考えられています。
農耕文化が始まる前の人々は皆、痩せていたかというと、そういう訳ではなかったようです。
オーストラリアの鉄道工事で、三万年ほど前の地層から、太った体型の石像が出土しています。
これは農耕文明が始まる以前から、すでに肥満が存在していたことを示しているのです。
農耕文化が広まる以前は、その日に得られた僅かな食料で、数日を凌いでいたと考えられます。
そのため、獲得したエネルギーを効率よく利用し、余ったエネルギーは脂肪に代えて蓄える必要がありました。
肥満は、大昔から飢餓に曝されながら受け継いできた歴史にあると言っても過言ではないでしょう。

大昔から続いてきた食料との戦いで、私達は「倹約遺伝子」と呼ばれるものを生み出しました。
この倹約遺伝子は、「β3-アドレナリン受容体遺伝子ミスセンス変異」というもので、日本人の3人に1人がこの「倹約遺伝子」をもっているといわれます。
脂肪を燃焼してエネルギーを作るため、脂肪細胞の表面にβ3-アドレナリン受容体というものが存在します。
β3-アドレナリン受容体は、脂肪を分解して熱を作る機能があるのですが、この受容体の遺伝子が変化すると、エネルギーの生産が落ち、痩せにくくなってしまうのです。
水を飲んでも太るという方がいらっしゃいます。
浮腫んでいる場合は別として、一生懸命ダイエットに努力しても十分な効果が得られない方は、このような「倹約遺伝子」を持っているためかも知れません。

さて、ここから少し肥満と癌の相関について述べてみます。
肥満と生活習慣病についての相関は良く知られていますが、癌との相関についても沢山の報告があります。
例えば、肝臓癌との関連です。
肥満になると、「二次胆汁酸」を作る腸内細菌が繁殖します。
「二次胆汁酸」は血行に乗って肝臓へ運ばれ、肝細胞の炎症を起こします。
この時、「SASP」と呼ばれる現象を起こしますが、これが肝臓癌の発生へ繋がることが分かっているのです。
「SASP」とは、細胞老化関連物質形成という現象です。
老化した細胞のDNA損傷によりNF-κBを活性化させ、炎症性関連遺伝子の発現を亢進します。
こうして起こった炎症反応の亢進により、「SASP」は癌を促す方向へ働きかけると言われているのです。
「SASP」を起こす時、同時にIL-6やPAI-1なども産生されますが、これらの物質は肥満に伴って産生される物質でもあり、肥満によって肝臓癌を起こし易くなる要因は、このような状況が絡んでいるからであろうと考えられています。

肝臓癌だけではありません。
肥満と癌の関連を追求した研究で、一番解明されているのがエストロゲン(卵胞ホルモン)です。
特に乳癌では、エストロゲン受容体発現の有無を病理検査し、ホルモン療法を行う場合の目安となっています。
このエストロゲンは、脂肪組織でも産生されることが分かっています。
脂肪組織で作られたエストロゲンが、エストロゲン受容体が発現している癌細胞の成長を促しているのではないかと考えられているのです。
エストロゲンが強く関与している乳癌だけではなく、食道癌・大腸がんに関しても、肥満による癌のリスクが高いと言われています。
また、New England Journal of Medicineという有名な医学雑誌に掲載された論文で、男性は癌死全体の14%、女性は20%に肥満が影響していると結論付けています。

食料の獲得に苦しんだ人類は、自分の身体にエネルギーを倹約する機能を生み出しました。
時代と共に文明は発達し、少なくとも日本では、食料の不安から開放されています。
しかし、繁栄がもたらした飽食は、飢餓のために獲得した倹約の機能も手伝い、むしろ肥満を生み易くなりました。
更に、飢餓に備えたエネルギーであるはずの脂肪が、心臓血管病や脂肪肝、ひいては様々な癌を生み出す原因だと考えられるようになったのです。
肥満には、命取りになる病気への落とし穴が潜んでいます。
ソクラテスの言葉ではありませんが、我々は食べるために生きるのではなく、生きるために食べるという本質を忘れてはならないと、改めて考えさせられました。

夏風邪は治り難い 高温多湿と免疫力低下が原因

暑い日が続けば、食欲はなくなり夜は寝苦しい。
それが続けば、体力は落ちるし免疫力も低下します。
夏風邪は、気温や湿度が高くなる時期に多くなるのです。

夏風邪の原因は、人間側の問題だけではありません。
ウイルスにも、この気候が影響しています。
夏風邪には、エンテロウイルスやアデノウイルスなどが多く、これらのウイルスは、高温多湿の環境を好むからです。
ちなみに、エンテロウイルスには、コクサッキーウイルスA・B群、エコーウイルスやエンテロウイルス68~72型が属しています。

夏風邪の代表は、「手足口病」「ヘルパンギーナ」「プール熱」です。
小児の感染症として良く知られています。

「手足口病」
コクサッキーA群ウイルスやエンテロウイルス71型の感染で起こす病気です。
その名の通り、掌や足の裏・口の中に小さな水疱が出来るので、このように呼ばれています。
高熱は余りみられませんが、口の中が痛くて食べられなくなることもあります。
感染の原因には数種類のウイルス型があり、一度治ってもまた同じ病気を発症することも珍しくありません。
咳などの飛沫で感染する飛沫感染と、手指を介し感染する接触感染、経口感染で感染します。

「ヘルパンギーナ」
主にコクサッキーウイルスA群の感染で発症します。
コクサッキーウイルスB群、エコーウイルスなどの感染も原因となります。
発熱と口腔粘膜に水疱性の発疹を特徴とした急性のウイルス性咽頭炎です。
代表的な夏風邪で、突然高熱が出ます。
喉の奥に水疱や発赤が出て、水も飲めなくなることがあります。
感染の原因には数種類のウイルス型があり、一度治ってもまた同じ病気を発症することも珍しくありません。
咳などの飛沫で感染する飛沫感染と、手指を介し感染する接触感染、経口感染で感染します。

「プール熱」
アデノウイルス感染によるものです。
咽頭結膜熱という病気の別名です。
名前の通り、咽頭炎と結膜炎と同時に高熱が4~5日続きます。
必ず典型的な症状を起こす訳ではなく、年間を通してみられますが、夏場に塩素濃度が低いプールの水で感染することが多かったので、プール熱と呼ばれています。
咳などの飛沫で感染する飛沫感染と、手指を介し感染する接触感染で感染しますが、タオルの共用も注意が必要です。

冬場とは違い、乾燥するためにウイルスが蔓延するという訳ではなく、夏風邪を起こすウイルスは蒸し暑い気候が適しているのです。
大人の場合、小児より症状が重くなる場合も稀にあります。
夏季休暇のために仕事を詰め込み、疲れた身体で山や海へ出掛けて更に体力を消耗。
加えて気温の高い夏場は食欲も落ち、熱帯夜が続けば熟睡出来ず、免疫力を低下させる原因となります。
ご自分の体力や免疫力が低下した時、ウイルスと出会う機会があれば潜伏期を置いて発症してしまうのです。

夏風邪を起こすウイルスの殆どは、飛沫感染や接触感染です。
喉や腸で増えるので、喉の痛みや咳、腹痛、下痢など、お腹の症状がよくみられます。
身体が重く、喉が腫れて、悪いものを食べた訳でもないのに腹の調子が悪い。
そんな方は、夏風邪かも知れません。

夏風邪は、不眠や食欲不振から免疫力を落とし、発病するものなので治り難いのです。
水分と栄養の補給を行い、休養を心掛けて下さい。
当たり前の事ばかりを申し上げますが、手洗い・うがいの励行もお忘れなく。

家の中でも熱中症 筋肉痛や筋痙攣も

熱中症への注意が叫ばれています。
日本全国、毎日が猛暑日。
毎日、全国で何人もの方が救急搬送され、既に何人もの方がお亡くなりになっています。
今年の夏は急に暑くなりました。
環境の変化が激しい時は、更に熱中症を起こし易くなるといわれます。
外出しなければ安全かというと、そういう訳ではありません。
ご存知のように、家の中でも熱中症は起こります。
救急搬送される方の半数は、65歳以上の高齢者。
高齢者は、家の中で熱中症を起こしているケースが非常に多いのです。
ご年配の方は冷房を嫌う方が多く、部屋の中が暑くても平気。
しかし、室温が28度、湿度が70%を超えると危険です。
汗が気化され難くなり、その分だけ熱が奪われないため、体温が高くなります。
必ず、冷房を使うようにしましょう。

<こんな症状には注意を>

Ⅰ度(軽症) → その場で何とか対応できる
    手足が痺れる
    目まい・立ちくらみ
    筋肉が痛い・ツル
    気分が悪い・ボーとなる

Ⅱ度(中等症) → 病院へ行ったほうが良い
    頭が痛い
    吐き気がする
    だるい
    何となく意識がおかしい

Ⅲ度(重症)→ 直ぐ救急車を呼ぶ
    意識がない
    呼びかけても反応が鈍い
    ケイレンしている
    歩けない
    体温が高い

熱中症で、筋肉痛を起こす場合があります。
外来に受診された30歳台の女性。
「体中が痛くて、怠いんです。」と訴えます。
お話を聞けば、炎天下、一日中戸外でイベントのお仕事をなさっていたとのこと。
「熱中症には気を付けていたんですけど・・」
その日の気温は35℃。
暑い昼間、長時間カメラを担いで会場を廻っていたそうです。
「それは、きつかったでしょう。」
「もう、体全体ガチガチ、バリバリです。」
「食事と水分は摂れていますか?」
「はい、そのつもりで補給していました。」
拝見させて戴くと、背中と肩はまるでソフトボールの玉のように、硬くカチカチ。
単純に筋肉疲労で起こった痛みでも、全く可笑しくありません。

筋肉自体に痛みが起こるメカニズムは、大きく分けて2通りあると考えられています。

1:筋繊維の損傷
過度の筋肉使用で筋繊維が細かな断裂を生じ、その周りに炎症反応を起こし、プロスタグランジンなど痛みを起こす物質が発生するため。

2:循環不全
血流が悪くなると、筋肉が酸素不足になる。
一方、代謝物質の刺激で痛みが起こり、またその代謝物質が蓄積をおこすため。

熱中症で筋肉痛や筋痙攣を起こすことがありますが、熱中症による筋肉痛は、俗にいう「こむら返り」のような状態です。
「熱痙攣」と呼ばれることもあります。
これは、大量の汗で塩分、主としてナトリウムが失われて起こる症状です。
今回、患者様の状態を考えると、過度の疲労による筋肉痛もあるでしょう。
皆様方も、過酷な環境で体を酷使するのは止めましょう。

暑い日に、エアコンが壊れた部屋で丸一日過ごした経験があります。
酷く辛い思いをしながら、一日過ごしました。
暑い日に限って、エアコンは壊れます。
経年劣化は、どうしようもありません。
久しぶりに、空調がなかった時代へタイムスリップしたような気分でした。

文明の進化と共に、人の生活は便利になり、豊かになります。
スイッチを押せば必ず結果が現れる、それが当たり前の時代です。
若しかするとスイッチが無ければ自分では何も出来ない、そんな人間になったのではと思うことがあります。
妙なことばかり考えてしまうのは、少し暑さに遣られたのかも知れません。

痛みの機序と消炎鎮痛剤 消炎鎮痛剤は大腸癌を抑制するだろうか?

痛みは、身体に危険を知らせる重要な防御機能です。
若し、痛みを感じることがなければ、命を落としてしまうかも知れません。
痛みを感じるからこそ、危険を避けることが出来ます。
痛みは生きて行くために必要な情報ではありますが、煩わしく思うことも事実です。

私達は、一体どのようにして痛みを感じているのでしょうか。
組織に損傷や炎症が発生すると、組織や血管からプロスタグランジンやブラジキニンという物質が出てきます。
痛みを発生する原因になるのが、このブラジキニンという物質で、発痛物質と呼ばれています。
ブラジキニン以外にも、セロトニンやヒスタミン、アセチルコリンなど、発痛物質と呼ばれているものは色々あります。
なかでも、ブラジキニンは最も強力な発痛物質です。

ブラジキニンという言葉の由来は、モルモットの腸管をゆっくりと収縮させる作用がみられたことから、ゆっくりを意味するbradyと、収縮を意味するkininとが合体して出来た名前です。
このブラジキニンが、ポリモーダル受容器と呼ばれる感覚器のブラジキニン受容体と結びついて感作します。

ポリモーダル受容器にはヒスタミンやプロスタグランジン、その他にも機械的刺激などを受け取り、感作する沢山の受容体を備えています。
化学的な刺激や物理的な刺激、熱刺激など多様性がある受容器であることから、多様式のという意味でpolymodalと名付けられていますが、どんな刺激に対しても受け取ることが可能な、比較的原始的な感覚器です。
刺激を感作して活動電位が発生すると、求心性神経線維に伝わり上行性に脊髄を経て、脳の視床や島、帯状回、扁桃体などへシグナルが到達し、私達は痛みとして感じています。

痛みの治療には、様々な薬物があります。
大きく分けて分類すると、非ステロイド性消炎鎮痛剤やアセトアミノフェン、神経障害性疼痛治療薬、オピオイド(麻薬)、鎮痛補助薬、ステロイド、麻酔薬などが存在します。
なかでも、痛み止めとして広く利用されている薬は、非ステロイド性消炎鎮痛剤です。
「NSAIDs」と表記され、「エヌセッズ」と呼ばれています。

今回、先程述べたプロスタグランジンやブラジキニンへの作用点から、非ステロイド性消炎鎮痛剤の作用機序について簡単に解説してみます。
組織が損傷を受けると、細胞膜のリン脂質はアラキドン酸に変化し、シクロオキシゲナーゼ(COX)という酵素の作用によりプロスタグランジンが作られます。
ブラジキニンは最も強力な発痛物質なのですが、プロスタグランジンはそのブラジキニンに対し発痛作用を増強させるように働くのです。

良く処方されることが多い非ステロイド性消炎鎮痛剤を挙げると、ロキソニン・ボルタレン・ポンタール・ブルフェン・ハイペン・ニフラン・フルカム等など他にも沢山の薬があります。
一度は実際、お使いになった薬があるのではないかと思います。
非ステロイド性消炎鎮痛剤は、アラキドン酸からプロスタグランジンが作られる際に必要な酵素、シクロオキシゲナーゼ(COX)の作用を阻害し、プロスタグランジン自体が持っている炎症作用や、ブラジキニンの疼痛増強作用を抑えることが作用機序ということになります。

風邪の時によく処方されるカロナール(有効成分はアセトアミノフェン)は、消炎鎮痛剤として非常に広く利用されるお薬です。
アセトアミノフェンは非ステロイド性消炎鎮痛剤と同様に、シクロオキシゲナーゼ(COX)を阻害するのですが、その作用は弱く、非ステロイド性消炎鎮痛剤(NSAIDs)とは別に考えられています。
主に中枢神経でのCOX阻害があるといわれますが、その作用機序は未だ良く解明されていないようです。

非ステロイド性消炎鎮痛剤の効能について、痛みや熱に効果があるだけではなく、癌に対して抑制的に働くことが統計的に分かっています。
特に、大腸では腺腫の発生を抑えるという結果が出ており、昔から数多くの研究が発表されています。
プロスタグランジンの役割には、もともと細胞の分裂や増殖、血管の増殖などに関連した働きがあります。
このため、プロスタグランジンが増え、細胞や血管の増殖が促進されることで異常な分裂も増え、その分だけ癌になり易いのではないかと考えられているのです。
事実、大腸癌の方は、シクロオキシゲナーゼ(COX)が正常の方と比べ、多いことが分かっており、同時にまた、プロスタグランジンも大腸癌の方では増加していることが判明しています。

このことから、非ステロイド性消炎鎮痛剤(NSAIDs)の作用により、シクロオキシゲナーゼ(COX)が阻害され、プロスタグランジンの生成が低下することにより、癌の発現が減少するのではないかと考えられているのです。

しかし、どれ位の量を、どれ位の期間、使用すれば目的の効果が得られるか分かりません。
また、非ステロイド性消炎鎮痛剤の副作用による弊害もあります。
胃十二指腸潰瘍などの消化管出血や脳出血など、重大な副作用も起こす可能性があり、服薬を続けることのリスクは常に存在するのです。
一概に、使えば良いというものでもありません。

アメリカのインディアナ大学公衆衛生学部を中心とした調査班が、非ステロイド性消炎鎮痛剤と大腸癌との関連を研究した報告があります。
研究の結果、一定の遺伝子型が関係していたそうです。
ある遺伝子型の人では大腸癌になり難く、癌のリスクが30~40%ほど低下するという結果でした。
しかし、ある遺伝子型では逆に大腸癌になり易く、癌のリスクが190%も上昇するという計算になったそうです。

要するに、人によっては良くもなれば悪くもなる。
癌の予防を目的として、安易に非ステロイド性消炎鎮痛剤を服用するのは、止めておいた方が良いのかも知れません。

風疹第5期予防接種(大人の風疹ワクチン接種)

風疹第5期定期予防接種について
国の制度により、風疹の抗体価測定とワクチン接種が、無料で受けられるようになりました。
対象になる方は、昭和37年4月2日から昭和54年4月1日までの間に生まれた男性です。
3年計画で段階的に行われ、1年目(2020年3月まで)は昭和47年4月2日から昭和54年4月1日生まれの男性に対して、市町村から受診券が送付されます。
受診券が送られて来ない昭和37年4月2日から昭和47年4月1日生まれの男性も、希望すれば受診券を市町村から発行して貰うことが出来ます。

これは、免疫を持たない男性を風疹から守る目的と同時に、新生児に発症する先天性風疹症候群(CRS)の撲滅を兼ねています。
先天性風疹症候群とは、難聴・心臓の病気・白内障や緑内障など目の病気・脳脊髄炎など、妊娠時に母体が風疹に感染することで発生する、先天的な新生児の奇形疾患群のことを言います。
風疹の抗体を持っていない女性が妊娠5ヶ月までに風疹を発症すると、新生児が先天性風疹症候群を起こす危険性があり、妊娠初期、特に妊娠1ヶ月までに感染すると、先天性奇形を発症するリスクは50%以上にもなると言われています。
このため、妊娠を希望する女性は風疹の抗体価を測定し、十分な抗体価がない場合、妊娠を希望する2~3ヶ月前までにワクチン接種を受ける必要があります。
妊娠中は風疹ワクチンを接種出来ません。
もし、抗体価が低い状況で妊娠が判明した場合は、風疹の流行に注意し、ご家族を含め成るべく外出を控え、感染の予防に努めることが大切です。

風疹そのものはウイルス感染です。
「三日麻疹」と言われ、昔は普通にありふれた病気でした。
しかし、最近はワクチンの普及に伴い、殆ど見かけなくなりました。
小児科の先生は、診察する機会が多いかも知れませんが、私が最後に拝見した記憶があるのは10年以上前になるかと思います。

飛沫感染の経路で上気道へ感染を起こし、感染を受けてから約2週間で発症します。
つまり、潜伏期は約2週間ということになります。
症状は、発熱・発疹・リンパ節腫脹が主な症状です。
大人が罹患すると、発熱や発疹は長く続く傾向があります。
重症化すると、まれに脳炎や血小板減少性紫斑病などを起こすことがあるようです。
感染力は強く、インフルエンザの2倍とも4倍とも言われています。
治療法は対症療法だけで通常、最終的に免疫を獲得して自然に治ります。

昔は、風疹に感染する機会も多く、自然に免疫を獲得するのが一般的でした。
風疹ワクチンの接種が広まって行くに連れ、感染して自然に免疫を獲得することが少なくなりました。
風疹ワクチンの接種を受けていても幼少期に1回だけの方が多く、感染を予防するには不十分な免疫しかない方々が増えています。
また、ワクチン接種を受けた方々の免疫も、時間の経過に伴い徐々に低下しているであろうと考えられます。

行政からお知らせとクーポン券が届いたら、医療機関へ受診し、風疹の抗体価を調べましょう。
感染を予防できる十分な抗体価があれば、ワクチン接種の必要性はありません。

今回の制度のことではありませんが、通常の考え方や対応は、
抗体価が陰性であれば、2回のワクチン接種が必要となります。
例えば、EIA法でIgGの値を測定した場合
2.0未満であれば陰性で、2回接種が必要です。
2.0~7.9の中にあれば、1回接種となります。
8.0以上あれば陽性で、接種の必要性がありません。
2回接種する場合、1回目から1ヶ月間を置き、2回目の接種を行います。
抗体価が陰性ではないが、十分感染を予防できるだけの値がない場合、1回だけワクチン接種を行うことになります。

今回、実施される風疹第5期予防接種の適応は、
抗体価が、HI法で8倍以下、もしくはEIA法で6未満が風疹第5期(送られてきたクーポン券を利用して行う予防接種)の対象者となります。
また、ワクチン接種の助成は一回のみです。

話が混乱するのは、任意で行う風疹症候群対策がまた別途に存在することです。
クーポン券が送られていない方にも、ご本人の希望により、以下の条件が満たせば予防接種が受けられます。
1:19歳以上の品川区民
2:過去に一度もCRS対策の制度を利用したことがない者
3:風疹(MR)ワクチンを2回以上接種したことがない者
上記の1~3に該当する方で
 *妊婦と同居している者
 *妊娠を希望する女性と同居している者
上記の条件が満たせば、抗体価の判定が変わってきます。
HI法で16倍以下、またはEIA法で8未満の方がワクチン接種の対象者です。
また、抗体価を測定した時期が2014年以後の検査結果を持っていれば、新たに検査することなく、ワクチン接種の対象かどうかを判断することも可能です。

医療機関へ受診する前、以下のことを必ず確認しておいて下さい。
1:本人確認ができるものを持参する。(運転免許証、マイナンバーカードなど)
2:クーポン券が有効期限を過ぎていないかどうかを確認する。
3:クーポン券に記載されている住所と、ご本人が現在住んでいる住所と(その時点で住民登録が行われている住所)が一致しているかどうか。異なる場合、受けられません。

品川区以外の方でも、クーポン券をお持ちの方であれば、上記の条件を満たす場合、抗体価検査や風疹ワクチン接種を受けることが出来ます。

分かりにくいことが多いので、医療機関へ受診する前に念の為、受診先へ電話で連絡した方が良いかと思います。

ご参考までに、品川区の公式ホームページをご覧下さい。
https://www.city.shinagawa.tokyo.jp/PC/kenkou/kenkou-byouki/hpg000033440.html

睡眠障害は心身ともにダメージ 生活習慣の改善が大切

仕事に振り回される日が続くと、ストレスで夜も十分に眠れません。
こうなると、身体が怠い、重い、ボーとして集中力が無くなる。
睡眠は体調を左右する要です。

以前、外来に受診された40歳の男性。
健康診断で、高血圧、高脂血症、糖尿病予備軍などの診断を受けたようです。
体格は立派な方。
酒は良くお飲みになるので、当然、飲酒と食事制限、軽度の運動が指導されています。
「良く眠れますか?」
私は必ず、問診で尋ねる事にしています。
「酒を飲んだら、良く寝られるんですよ。」
とのご返事。
「夜中、目が覚めませんか?」
「トイレに、何回か起きますね。」
「朝起きた時、身体が怠く、何となくきつくないですか?」
「あー、そうですね。」
「夜中、寝ている時、イビキが酷かったり、息が止まっていると言われたことはないですか?」
「確かに、イビキは酷いと言われます。」

睡眠時無呼吸症候群の可能性を考えて、
「誰か寝ているところを観察して貰える人がいたら、確認して貰って下さい。」
と、診断基準が書かれた紙を渡しました。

睡眠時無呼吸症候群
診断基準
以下の診断基準Aか、診断基準BとCをみたすもの
A:日中傾眠があり、他の要因により説明できないもの
B:下記の内2つ以上の項目に該当するもの
 ○睡眠中の窒息感やあえぎ
 ○睡眠中の頻回の完全覚醒
 ○熟睡感の欠如
 ○日中の倦怠感
 ○集中力の欠如
C:終夜睡眠ポリグラフで睡眠1時間あたり5回以上の閉塞型無呼吸イベントがある。
閉塞型無呼吸イベントには、1)呼吸の一過性の減弱、あるいは完全な消失と2)呼吸努力関連覚醒反応が含まれる。10秒間以上の無呼吸が一晩7時間の睡眠中に30回以上、もしくは睡眠中1時間の平均で5回以上あれば、この病気と診断される。睡眠時無呼吸症候群の病名は、睡眠時の無呼吸という機能の面からみた場合の疾患群であり、下顎や上気道の形態異常や粘液水腫(甲状腺機能低下症による全身のむくみ)などの内分泌疾患も含まれています。

どなたか観察して貰える人がいれば、
「睡眠中1時間に5回以上の無呼吸があるかどうか」
を確認して貰うのが良いかも知れません。
「日中に、気付いていたら寝ていた」なんてことがあれば、絶対、睡眠時無呼吸症候群の治療が必要です。
睡眠時無呼吸症候群(SAS)が原因で、血圧が上がったり、血糖値が上がったり、生活習慣病と称されている様々な病気の要因になります。

その後、睡眠時無呼吸症候群の専門外来へご紹介致しました。
睡眠の改善とともに、体調が良くなり、毎日お仕事に集中出来るようになったとのお話です。

睡眠時無呼吸症候群は、就眠中に反復する短い意識覚醒のため、脳の不眠を起こします。
このため、睡眠の質が低くなり、昼間に傾眠傾向となるのです。
睡眠時無呼吸症候群は不眠をきたす原因の一つですが、今回は広い意味での不眠症について少し述べてみたいと思います。

睡眠は、身体にとって成長ホルモン分泌促進・骨髄での造血促進・全身の細胞の新陳代謝促進に関与しており、脳にとっては、情報の整理や記憶の定着に必要不可欠なものです。
睡眠不足は、精神的にも身体的にもダメージをもたらします。
睡眠剥奪や睡眠妨害など、眠らせないようにする拷問の手段もあるようです。

睡眠と覚醒のバランスが悪い状態を不眠と言いますが、その原因は様々です。
ストレスや欝などの精神疾患、睡眠習慣の問題や睡眠リズムの乱れ、生活習慣病や色々な基礎疾患、更に薬やアルコールなど、沢山の原因が考えられます。

日本人の平均睡眠時間は7時間42分。
男性は7時間49分、女性は7時間36分だそうです。
年齢とともに睡眠時間は減少し、45歳で6時間36分、65歳では平均6時間、更に歳を重ねると共に少なくなって行きます。

良く知られているように、睡眠にはレム睡眠・ノンレム睡眠があります。
左右に眼球が動く、急速眼球運動がみられることから Rapid Eye Movements の頭文字をとって、レム睡眠と呼んでいます。
レム睡眠は、身体は休んでいるが脳は活動している状態にあり、夢をみている状況の時。
ノンレム睡眠は、深い眠りに入っている時で、記憶強化の時期であると考えられています。
平均して一晩で、レム期ノンレム期を3回から5回繰り返し、レム期ノンレム期のワンセットは70分から110分程だそうです。
ノンレム睡眠は前半に多く出現し、最初の3時間が深い眠りの8割から9割を占めています。
レム睡眠は睡眠の後半に多く出現します。
年齢とともにノンレム睡眠の占める割合が減ってきますが、中途覚醒が多くなるためと考えられます。

不眠のタイプとして、入眠障害・中途覚醒・熟眠障害・早朝覚醒などがありますが、入眠障害の頻度は年齢による差がみられませんが、中途覚醒や早朝覚醒の頻度は年齢に伴い上昇します。

不眠症対策は、生活習慣の理解が基礎になります。
睡眠を改善するための生活習慣として、起床時間を一定に保つことが大切です。
早く寝るというより、早起きから始めます。
朝は太陽光に当たり、日中は適度な運動が必要です。
就寝4時間以内に、カフェイン・喫煙は避け、熱湯ではなく温湯に入浴し、寝酒は止めましょう。
寝るときは、光や音などの刺激はないように配慮することも大切です。

それでも不眠が続く場合は、治療が必要です。
薬を使わない方法としては、認知行動療法があります。
カウンセリングにより、睡眠の考え方や行動パターンを見直し、不眠を改善して行く方法です。
これは、カウンセリングを行っている精神科で受けることが出来ます。

多くの場合、投薬治療が必要となります。
現在、大別して主に3種類の睡眠薬が利用されています。
薬剤が登場してきた順番から述べると、GABA(ガンマアミノ酪酸)受容体作動薬・メラトニン受容体作動薬・オレキシン受容体拮抗薬です。
GABA受容体作動薬は、抑制的に作用する神経伝達物質GABAの働きを促し、脳全体を鎮静させます。
薬の構造から、ベンゾジアゼピン系薬剤と非ベンゾジアゼピン系薬剤があります。
メラトニン受容体作動薬は、体内時計の調節に作用し、睡眠と覚醒のリズムを整えます。
オレキシン受容体拮抗薬は、覚醒を維持するオレキシンという脳内物質の働きを抑制します。

なかでも、ベンゾジアゼピン系薬剤は、効果が期待でき、他の抗精神病薬と比べ安全性が高いので、昔から広く処方されています。
確実な効果が期待出来るものの、長期の使用で薬剤依存を起こし易いため、余り長く服用するのはお勧め出来ません。
また、急に止めようとすると様々な離脱症状に悩まされることも稀ではありません。
若し、ベンゾジアゼピン系薬剤を使用しなければならない場合は、2週間以内に留めるようにした方が良いと考えられています。

メラトニン受容体作動薬やオレキシン受容体拮抗薬は、比較的最近登場した薬剤です。
ベンゾジアゼピン系薬剤と比べ効果は劣りますが、薬剤依存や離脱症状が起こらない薬剤なので、安全性の面では優れていると言えます。

不眠がある場合、取り敢えず、生活習慣の見直しから始めてみましょう。

帯状疱疹について 免疫力が落ちた証拠

ヘルペスには大きく分けて、単純性ヘルペス、帯状疱疹ヘルペスがあります。
今回は、帯状疱疹について簡単にご説明します。

帯状疱疹は、幼少期にかかる水疱瘡のウイルスと同じ水痘・帯状疱疹ウイルスが再度活性化することによって起こります。
高齢者に比較的多く、80歳までに大体、3人に1人が発症すると言われています。
若い人にも起こりますが、50歳から70歳代の方が半数以上を占めます。
日本人全体で考えると6~7人に1人の割合で起こるのではないかと考えられています。

水疱瘡を発症した後、神経のなかにウイルスは潜んでいます。
年齢やストレス、疲労、紫外線の暴露、癌など重症の消耗性疾患、重症の感染症など、ご自分の免疫力が低下したときにウイルスが活性化し、再燃するのです。

大多数は、体の片側にでき、その半数以上は上半身です。
腕から胸、背中にかけて症状が出やすく、発症した3人に1人はそれらの場所に起こします。
神経の走行に沿って皮膚炎を起こし、少し赤くなった皮膚の上に小さな水疱がみられますが、酷い場合には大きな水疱が出来、潰瘍になる場合もあります。

ヘルペスの語源はラテン語で「這う」という言葉ですが、神経に沿って広がって行く様は、まさに症状の経過を良く言い表したものかも知れません。
紀元前の大昔から、ヘルペスの記述は残されているようですが、その時代には何か悪い液性の毒が関係しているものと考えられていたのでしょう。

帯状疱疹の場合、同時にピリピリするような痛みを伴うことがあります。
余りに強い痛みの場合、痛みのために夜も眠れないと訴える患者様もいらっしゃいます。
後神経痛と言い、発疹が消えて無くなっても3ヶ月以上、痛みを残す場合もあります。
痛みは数年続くこともあり、1~2割の患者様方は、10年以上続く方もいらっしゃるようです。

先ず始めに、ヒリヒリする痛みを感じ、その後から皮膚に症状が出始めます。
最初は、皮膚に小さな赤みを起こし、その後、赤くなったところに水疱が出て来ます。
この間、おおよそ5~7日位です。
水疱が出来てから瘡蓋になるまでの期間は、5日~2週間位。
皮膚に症状が出始めて2週間から20日位で治まるのが一般的な経過です。

治療の方法は、なるべく早めに抗ウイルス薬を使用することです。
抗ウイルス薬は、皮膚の症状が出始めて、72時間以内が望ましいと考えられています。
抗ウイルス薬は、ウイルスの増殖を抑えるための薬なので、服薬を開始して効果が出るまでに2~3日ほど時間が掛かります。
薬を飲んでも次第に悪化したと思い、薬を中断する方もいらっしゃいますが、勝手に止めることがないようにして戴くことが大切です。
帯状疱疹の場合、7日間の服薬が必要です。
重症化した場合は、入院して点滴による抗ウイルス薬の投与が必要となるケースもあります。
また、痛みが非常に強い場合は、麻酔科やペインクリニックで神経ブロックが行われることもあります。

帯状疱疹は、ご自分の免疫力が何らかの原因で低下した場合に起こるものなので、先ず休養が必要です。
睡眠を十分に確保し、栄養補給を行いましょう。
また、まだ免疫のないお子さんや妊婦さんとの接触は、水疱瘡を感染する可能性があるので避けて戴くようにお願いします。

花粉症の諸々 花粉症で悩まない時代が来るかも知れない

花粉症の時期になりました。
毎年この時期、悩んでいる方が多いのではないでしょうか。
今年は昨年の猛暑で、スギ花粉の飛散が数倍多いと報道されています。
鼻水や目の痒み、喉がイガイガしたり、咳が出たり。
鬱陶しくて気分も滅入ります。

花粉に対して起こった身体のアレルギー反応による症状ですが、アレルギーという言葉は、1900年初頭に使われ始めたと言われています。
ギリシャ語で「他の」という単語と「仕事」という単語をかけ合わせた造語だそうです。
昔、農民が枯れ草に近づくとクシャミや鼻水が出て来たことから、枯草熱と呼ばれていた時代があったと多くの書籍に記されています。

アレルギーとは、身体に異物が侵入してきた時、身体が異物に対して排除しようとする反応ですが、過剰に反応し、私達には煩わしい症状となる場合があります。
このような反応を総称して、アレルギーと呼んでいる訳ですが、精神的に受け入れられないことに対してもアレルギーと一般的に呼んでいます。
精神的な反応は別にして、アレルギーの起こり方には種類があります。
大きく分け、Ⅰ型からⅣ型までに分類されています。
Ⅰ型アレルギーは、アレルギーの反応が短時間のうちに起こるため、即時型アレルギーと呼ばれています。
気管支喘息やアレルギー性鼻炎、食品や薬物アレルギーなどがこれに入ります。
Ⅱ型アレルギーは、何らかの原因で自分の細胞膜表面が抗原として誤認され、抗体が作られた結果、細胞障害を引き起こすような反応を言います。
赤血球表面膜に対しての抗体が原因となる自己免疫性溶血性貧血や、腎臓や肺基底膜に対しての抗体が原因となるグッドパスチャー症候群などがこれに入ります。
Ⅲ型アレルギーは、抗原抗体反応で発生した複合体が身体に障害を引き起こすような反応を言います。
慢性関節リウマチや全身性エリテマトーデス、抗毒素として血清が投与された後に起こる血清病などがこれに入ります。
Ⅳ型アレルギーは遅延型アレルギーと呼ばれ、症状が現れるまでに時間がかかる反応です。
抗体が関わるようなものではなく、T細胞、マクロファージなど細胞性免疫が関与する反応です。
ツベルクリン反応や接触性皮膚炎などがこれに入ります。

花粉症は、Ⅰ型アレルギーに分類されます。
免疫グロブリンの一つであるIgEと呼ばれる抗体と結合した肥満細胞(マスト細胞)が抗原と反応することで、肥満細胞からヒスタミンやロイコトリエンなどの物質が遊離されるのですが、このような物質は、組織や血管に浮腫を起こし、好酸球の遊走を促すことで炎症を引き起こします。
そのため鼻汁の分泌が亢進し、目の痒みや喉のイガイガを感じることになる訳です。

対策は原因回避です。
外出時のマスクやメガネなどは当然ですが、帰宅時に玄関先で身体全体にブラシを行い、衣類に付いた花粉を払い落とすことも重要です。
払い落としやすいよう、表面が滑らかな素材の衣類を着用すると効果的でしょう。
アレルギーを起こしている原因が花粉かどうか、一度確かめてみることも必要です。
典型的な症状があれば、一般的に花粉症であろうことは普通判断できます。
しかし、若しかするとカビやホコリなど、他の原因があるかも知れません。
症状が酷いと感じたときは、どんな原因で起こったものかを調べてみる良い機会です。
最も簡単な手段は、血液検査でIgEを測定する方法です。

IgEは免疫グロブリンの一つで、即時型アレルギーを起こす抗体です。
IgEにはアレルギーを起こす様々な原因物質に対しての特異的な抗体と、血中のIgE総量を示す非特異的な抗体があります。
IgEは肥満細胞(マスト細胞)に付き、抗原を感知すると肥満細胞の表面で抗原抗体反応を起こします。
肥満細胞はこれに伴いヒスタミンやロイコトリエンなど、煩わしい症状をひき起こす物質を分泌するように反応が進んで行きます。
花粉に特異的なIgEは最初から身体にある訳ではありません。

花粉など抗原が身体に入ることで、マクロファージという細胞が異物を貪食します。
続いてマクロファージは、リンパ球であるヘルパーT細胞へ異物が入ったことを抗原提示し知らせます。
これを受け、リンパ球のB細胞が抗体を産生し始めるのです。
この時、IgEを生み出すのですが、異物を退治するように行動する訳ではなく、上気道の粘膜などにある肥満細胞へ付いて、抗原が遣って来るまで待ち構えています。

血液検査では、特異的IgEの測定が出来ます。
アレルギー性鼻炎で普通に良くみられるようなスギやヒノキ、ハウスダストなどから、特殊な食品アレルギーや皮膚アレルギーなどの原因を探すことが出来ます。
200種類以上の項目について検査することが可能ですが、全てを一気に調べることはありません。
常識的に、原因になるであろうと考えられる幾つかの項目を測定します。
その他にも、アレルギーの検査には、パッチテストやプリックテスト、皮内反応をみる方法などがあります。
皮膚にアレルゲンを付けたり、皮内に入れたりして皮膚の反応をみるものですが、皮膚のアレルギーを判定する場合が多く、これらの方法は殆んど皮膚科で行われています。
最も簡単な方法は、血液検査でしょう。

現在、一般的に行われている花粉症の治療は、抗ヒスタミン剤の服用です。
加えて、目の痒みや鼻水鼻詰まりが酷いときは、抗アレルギー剤やステロイド剤、局所血管収縮薬などの点眼薬や点鼻薬の併用を行います。
眠気が起こらないように工夫された、第二世代抗ヒスタミン薬の登場から以後、近年登場した抗アレルギー薬が沢山あるので、主治医と相談して決めるのが良いでしょう。

比較的最近登場した「ルパフィン」という薬は、即時相反応に対しての抗ヒスタミン作用に加え、抗PAF(抗血小板活性化因子)という作用も同時に持っており、アレルギー反応の遅発性相反応に効果があるといわれています。
炎症性の粘膜膨張により起こった夜間鼻閉への作用が期待できるため、夜中に鼻詰まりで苦しんでいる方には良いかも知れません。
但し、これまでの登場した第二世代抗ヒスタミン剤と比べ、少し眠気を起こしやすいようです。

対症的な治療ではなく、アレルギーの原因となっている抗原「アレルゲン」を少しずつ身体に与え、抗原に身体を慣らして酷い症状を起こさないようにするアレルゲン免疫療法(減感作または脱感作療法)があります。
薄い抗原を少しずつ皮下に注射する皮下免疫療法や、同じく舌下の粘膜から少しずつ抗原を与える舌下免疫療法などがこれに相当します。
しかし、3年以上の歳月を必要とするため、転居などの様々なご自分の環境変化が中断する要因となることも考えなくてはなりません。
また、非常に薄いとはいえ、実際にアレルギーの原因となる物質を身体に与えるので、アナフィラキシーを起こす可能性もあります。

注目すべきは、抗体療法かも知れません。
アレルギーの原因となるIgEと結合し、肥満細胞へ結合するのを阻害する抗IgEモノクローナル抗体であるオマリズマブ、商品名ゾレアを使った治療法がその一つです。
既存の治療でコントロール出来ないアレルギー性の喘息や特発性の慢性蕁麻疹では、保険適応が認められています。
しかし、アレルギー性鼻炎への保険適応はありません。
また、ロイコトリエンと結合する抗IL3や抗IL4、抗IL5モノクローナル抗体も既に商品化され、喘息への保険適応があります。
メポリズマブ(商品名:ヌーカラ)やベンラリズマブ(商品名:ファセンラ)、デュピルマブ(商品名:デュピクセント)などです。

これらの薬剤は、アレルギー性鼻炎に対して効果があるだろうと分かっていても、保険適応となるが可能性が低いかも知れません。
その理由の一つとして、新しい治療はどうしても高価です。
アレルギー性鼻炎で困っている患者様が非常に多く、もし保険で利用されるようになれば、破綻している医療保険を更に圧迫することになりかねません。
更に、アレルギー性鼻炎自体は生命を脅かす病気ではないため、高額な保険診療を認可する必要性に欠けているからです。

また他に、ワクチン療法が研究されています。
スギ花粉構造を変えて、アナフィラキシーショックを起こし難くした人工抗原を作り、ワクチンのように与えておく方法が研究されているようです。
今後も医学は進歩して行くので、新たな治療が登場するに違いありません。
近い将来、花粉症で困っていた時代が、その昔あったと言えるようになることを願います。

便秘についての諸々 新しい緩下剤の登場

お通じに困っている方の割合は、人口100人に4人程だと言われています。
男性より女性に多い傾向があり、若い方では女性に多く、年齢と共に男性が増加。
80歳以上になると、男女が同等になります。
若い頃から便秘が続いている方もいれば、年齢と共に便秘を起こした方もいます。
私達日本人は、お米が主食という食事スタイルも影響し、欧米人と比べ大腸が長いと言われます。
また同時に、年齢を重ねるにつれて次第に大腸が弛緩し長くなるようです。
大腸の機能は、食べた食事の残りに含まれる水分を吸収することが主な役割です。
結果、大腸に食品の残渣物が長く留まれば留まるほど、大便は水分が抜けて行き、硬くなり便秘になります。

便秘の定義は、本来体外へ排泄すべき糞便を十分かつ快適に排泄できない状態でるとされています。
つまり、便が出ない場合はもちろん、毎日排便があっても残っているような感じがある場合なども便秘に含まれます。
ガスしか出ないという方や、まだ残っているような感じがして、スッキリしないという方も便秘です。
便秘を起こす器質的な原因、例えば大腸癌などで通過障害が発生するような場合は除き、慢性便秘と呼ばれる機能的な原因で起こってきたような便秘について述べたいと思います。

機能的におこる便秘のなかで、慢性便秘あたるものが一般的な便秘と呼ばれるものです。
便意を我慢したり、浣腸を日常的に使う方に起こる直腸性便秘を除くと、二通りあります。
大腸が痙攣するようにひきつった状態となり、便の通過が悪くなるような痙攣性便秘、
筋力の低下や大腸の動きが低下し、発生する弛緩性便秘です。
痙攣性便秘の代表的な例は、過敏性腸症候群。
弛緩性便秘の代表例は、高齢者の便秘です。

便秘の予防対策に重要なことは、日常生活の管理です。
食事の内容や水分の摂取、適度な運動と十分な睡眠、それと排便習慣をつけることなど。
言うまでもなく、常識的な事ばかりです。
しかし、全てを実行し、守っていても治らない方は治りません。
お通じの薬、いわゆる緩下剤を使わざるを得ないことになります。

一般的に最も良く使われているものは「酸化マグネシウム」です。
浸透圧性下剤という分類の下剤になります。
腸管から水分を引き出し、便の水分を多くし、便を軟らかくすることにより排泄しやすくする作用があります。
腸の動きに刺激を与えることは余りなく、その分お腹の痛みは起こしにくいので、最も広く使われています。
ご高齢の方にも使うことが多い薬ですが、腎臓の機能が低下しているような場合、長期の服用で血中マグネシウムの値が上昇する場合があるので注意が必要です。

昔から良く使われる下剤として、「センナ」を主成分とするものがあります。
刺激性下剤と総称される下剤です。
確実に一定の効果がみられるため、市販薬にも含まれたものが多くあります。
しかし、長期使用することにより、次第に慣れを起こし、効き目が悪くなることも多い薬です。
そのため、服用量が増えて行き、極量を飲んでも効かないとおっしゃる方も出てきます。
俗にいう、慣れが起こってくるようです。
確かに効果が期待でき、排便感が良いのですが、連用することなく、困ったときだけ使うようにすれば良いでしょう。

ここ数年、これまでの作用とは異なる緩下剤が登場してきました。
「アミティーザ」や「リンゼス」という名前の薬です。
アミティーザは、上皮機能変容薬と呼ばれる薬で、簡単に言えば小腸の粘膜から水分を分泌させ、便に水を多く含ませる薬。
酸化マグネシウムのように大腸から水分を浸透圧で引き出すものではなく、薬の効果によりクロールのイオンチャンネルへ働き、水分を小腸へ引き出すものです。
習慣性を起こし難く、腎臓の機能が低下している方へも負担をかけずに投与出来ると考えられています。
リンゼスは、アミティーザと同様に腸管上皮細胞に働き、水分の分泌を促す作用があります。
同時に、内蔵痛覚神経繊維という部分にも作用し、お腹の痛みや不快な感覚を和らげるという効果もあります。
このため、保険適応となる病名は、慢性便秘と便秘型過敏性腸症候群です。
適応症として、便秘薬に過敏性腸症候群の病名が連ねるのは大変珍しいことだろうと思います。

更にまた、最近登場した「グーフィス」という薬があります。
胆汁酸トランスポーター阻害剤と呼ばれる薬です。
胆汁酸は、肝臓でコレステロールから作られます。
一旦、胆嚢へ蓄えられ、食事することによって胆嚢が収縮。
蓄えられた胆汁は、胆管を通り十二指腸へ排泄され、脂肪の消化吸収に働きます。
この胆汁は小腸で殆んど吸収され、再び肝臓へ運ばれ、胆汁として利用されます。
しかし、小腸で吸収されなかった一部の胆汁酸は大腸へ運ばれます。
大腸では、胆汁酸が腸から水分を分泌するように働き、また同時に、大腸を刺激して消化管の運動を亢進させます。
この、胆汁酸トランスポーター阻害薬は、小腸で胆汁酸の再吸収を抑えることにより、多くの胆汁酸を大腸へ流すことが出来る訳です。
その結果、大腸の水分が増え、腸の動きが活発になり、便秘を解消する効果へと繋がります。

便秘で悩む方が多いにも関わらず、長らく新薬の登場がありませんでした。
生活習慣病や他の病気と比較し、治療の重要性を軽んじていたのかも知れません。
欠点を考えるとすれば、その値段です。
新薬は当然、薬の値段が高くなります。
毎日のように使う薬なので、これまで使われていた緩下剤と比較し、長期になると可也の差が出ることになります。

大体3日排便がなければ、便秘と判断しても良いでしょう。
しかし中には、1週間平気で過ごす方も稀にいらっしゃいます。
1週間に1回の排便が日常だと、お通じが無いことを気になさらないのです。
余りにも長く便秘することで便が詰まり、腸閉塞になる場合もあるので気を付けましょう。
長時間、大腸の中に便が停滞することで、大腸癌の発生を上げると思われがちですが、2006年に国立がん研究センターが行った調査では、大腸癌の発生と便秘との関係はないと報告されています。
因みに、下痢と直腸癌の関連性についてはあるようです。

僅かなウイルスで発症する「ノロ」 感染性胃腸炎を侮ることなかれ

冬季に流行する感染性胃腸炎。
毎年、暮れから年明け2月頃まで流行します。
典型的な症状は、熱が出て、吐いたり、下痢したり。
多くは腹痛を伴います。
主にウイルスの感染によるものですが、原因となるウイルスの種類もいくつかあります。
その中で最も有名なウイルスはノロです。
今回は、ノロウイルス感染による感染性胃腸炎を中心にお話したいと思います。

大人の場合、感染を受けて発症するまで、1日から3日と言われています。
つまり、感染したら余り間を置くことなく、症状が出ると言うことです。
多くの方は突然、症状が起こり始め、1日から2日激しい症状に見舞われます。
数回ないし、十回以上吐くことも稀ではなく、まるで水のような下痢を何度も起こします。
発症後、3日過ぎれば殆どの患者様は状態が良くなります。
しかし、ご高齢の方や免疫が低下しているような重病の患者様は、お亡くなりになる方もいらっしゃいます。
例年、施設で集団感染を起こし、高齢者がお亡くなりになるニュースを良く耳にします。
それほど重症ではなく、発症してもお腹が少しゴロゴロするとか、一寸ムカムカするという程度の軽い症状で治まる方もいらっしゃいます。
重症化するかどうかは、ご本人の免疫力によって異なると考えて良いでしょう。
症状が良くなったとしても10日位、便のなかにウイルスは含まれ、排泄されています。
つまり、治った状態でも、飲食に関わる仕事をなさっている方は、10日仕事に復帰出来ません。

ノロウイルス命名の由来について一寸触れてみます。
このウイルスは、1968年にオハイオ州ノーウオークと言う町の小学校で集団発生した患児から検出されたもので、その土地の名前からノーウオークウイルスと命名されていたようです。
電子顕微鏡が使われるようになって以後、非細菌性の胃腸炎から、小さな球形のウイルスが確認されるようになり、小型球形ウイルスと呼ばれたり、ノーウオーク様ウイルスと呼ばれたりしていました。
小型球形ウイルスを更に調べてみると、2種類あることが分かり、1つはノーウオーク様ウイルス、もう一つは、札幌で発見されたサポウイルスでした。
そこで、2002年に国際ウイルス分類学会で、正式にノロウイルスとサポウイルスに分類が行われました。

このウイルスの感染経路は経口感染です。
ご自分の手や、食品から口を経て感染を起こします。
10個から100個ほどの僅かなウイルスでも発症すると言われています。
患者様の排泄物1gあたりに含まれるウイルスの数は10億個とも言われますので、ほんの僅かな飛散物にも、多数のウイルスが含まれていると考えられます。
実際に数週間前、廊下の絨毯に吐瀉した後から、空気中にウイルスが漂い感染を起こしたという例があるので、非常に怖い話です。

ノロの治療には、特別な治療方法がなく、主に対症療法が行われます。
時には、点滴が必要な場合もあります。
大人の場合、発症したら慌てず、ある程度落ち着くまで様子をみても良いでしょう。
脱水に傾くため、若し飲めるようなら少し、経口補水剤を摂取するようにして下さい。
診断は、ノロウイルスの迅速診断キットはありますが、
3才未満、65才以上、悪性腫瘍、臓器移植後、抗がん剤や免疫抑制剤の使用者
でなければ、保険が効きません。
また、先程述べたように、特別な治療法はなく、大多数の患者様は自然に治癒して行きます。
検査キットによって診断する必要性が余りなく、殆どの場合は臨床診断で判断することになるのは確かです。
集団感染を起こした場合は別です。
もちろん、保健所への届け出の義務があり、その感染源の特定が必要となります。
定まった治療がないため、集団感染のような特殊な事態でない限り安静にし、様子をみながら医療機関へ受診しましょう。

なにより大切なことは、予防対策です。
ご存じのように、アルコールは効果ありません。
次亜塩素酸ナトリウム(食器用漂白剤など)を薄め、排泄物の処理を行います。
最近では、塩化ナトリウムや塩酸水などを電気分解することで、次亜塩素水を作ることができる装置があります。
これによって作られた次亜塩素水は、主に食品加工などで洗浄や消毒に用いられています。
安全性が高く、ノロに対しても殺傷力が強いので、市販の次亜塩素水を利用するのも良い方法です。
装置本体ではなく作られた液体を、薬局や通販で簡単に手に入れることが出来ます。
次亜塩素水もグレードがあり、口の中に入れて使えるものから清掃に使用するための物まであるようです。
しかし、次亜塩素酸ナトリウムと比べ、わざわざ手に入れて用意していなければならないのが不便です。
その点、食器用漂白剤はどの家庭でも普通に置いているので、急な場合に便利でしょう。
排泄物処理の場合は、必ず使い捨てのゴム手袋を使用し、処理した汚物は必ずビニール袋に入れ、しっかりと閉じた後、廃棄するようにしましょう。

良く言われているように、海水温度が低下する冬に、二枚貝の生食で引き起こされ易いノロですが、最近の報告から考えると、何時どの様な形で感染するか分かりません。
年末年始は、お付き合いも多くなる時期です。
なるべく熱を加えたものを食べる方が安全だと思いますが、感染の経由は様々あります。
何をどのようにすれば未然に防ぐことが出来るのか、唯一の対策はありません。
インフルエンザのように、ワクチンも勿論ありません。
予防対策が大切と言っておきながら決定的な対策がないとは、我ながら非常に矛盾を感じます。
体力消耗することないように、睡眠を十分確保し、人混みに出掛けず、手洗いを頻繁になさいますよう心掛けて下さい。
不安に落とし入れる積りは毛頭ありませんが、年末年始はノロにご注意下さい。