肥満治療薬のGLP-1受容体作動薬「ウゴービ」とは

ウゴービの有効成分はセマグルチドというもので、GLP-1受容体作動薬です。同じ成分の「オゼンピック皮下注」は、すでに糖尿病の治療薬として使用されています。

「ウゴービ」の薬理作用

食後に内因性末梢GLP-1濃度が増加することが分かっています。GLP-1上昇によって満腹感が増強され、これによって食事の摂取量が減少するということから考え、GLP-1の生理的な作用として、食事の摂取量や体重の調節作用があると考えられています。

Novo Nordisk Pro資材ライブラリーより

ここでGLP-1受容体作動薬について簡単に述べますと、「ウゴービ」の成分セマグルチドはGLP-1受容体作動薬であり、糖尿病の治療に使われているものです。

GLP-1はGlucagon Like Peptide-1(グルカゴン様ペプチド-1)という消化管ホルモンで、小腸や大腸に存在しています。

消化管に食べた物が入ると、小腸からGLP-1が分泌され、血液により膵臓に運ばれます。

膵臓でGLP-1は血糖値を下げるホルモンのインスリン分泌を促します。

分泌されたインスリンは、細胞に作用することで血中のブドウ糖を細胞内に取り込み、血糖値を下げることになります。

ウゴービの主成分であるセマグルチドは、GLP-1受容体を介して食事摂取の調節に関係している視床下部や脳幹に直接作用し、食欲などを調節して体重を減少させると考えられています。

同時に、胃内容物の排出を遅らせることにより、空腹を感じ難くする効果もあります。

「ウゴービ」の使用方法

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ウゴービの容量は0.25㎎、0.5mg、1.0㎎、1.7mg、2.4mgの5段階があるので、0.25mgから開始し4週毎に増量していきます。

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段階的な増量により、副作用の観察や効果の評価を行いながら治療することになります。最大2.4mgの投与までには、最短で5ヶ月かかります。投与方法は、週1回皮下注射を行います。

「ウゴービ」の効果と適応の条件

日本人を含んだ東アジア人を対象とした臨床試験で、治療開始して68週後の体重変化の評価を行っています。治療後、68週後の体重変化は以下のようになりました。

ウゴービ2.4mg群:– 13.2%
ウゴービ1.7mg群:– 9.6%
プラセボ群:– 2.1%

治療の対象となる方は以下のような条件です。

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13.2%の減量効果は、体重100kgの方が13.2kg減量したということになります。しかし、以下のような推奨事項があり、臨床試験時の食事と運動を実践すれば、自ずと効果が得られるかも知れません。

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プラセボ群においては2.1%の減少に留まっていたということですので、食事療法と運動療法だけを実践するより明らかに効果があったと考えられます。

「ウゴービ」使用時の注意

Novo Nordisk Pro資材ライブラリーより

「ウゴービ」を使用する際には、同様の薬理作用をもった他の薬を同時に使わないように注意を促しています。

「ウゴービ」の副作用

有害事象に関しては、嘔気、下痢、便秘などの胃腸障害が多く、ウゴービ2.4mg群で59%、1.7㎎群で64%、プラセボ群では30%にみられたということです。有害事象全体では、ウゴービ2.4mgで86%、1.7mg群で82%、プラセボ群で79%と報告されています。

使用中に消化器症状が出やすいと思われますが、食欲を抑える目的からすると仕方のないことです。

しかし、耐えられないほど症状が強ければ、増量の途中でも一旦減量したり、増量せずに投与量を維持するなどの必要があります。

おわりに

2023年3月に承認された肥満症の治療薬「ウゴービ」(ノボノルディスクファーマ社)について、厚生労働省は2023年11月15日、公的医療機関の適用対象にすると決め、2023年11月22日から適用されます。

公定価格の薬価は、量によって5段階が設定され、1回あたり1876円、3201円、5912円、7903円、1万740円となったようです。

治療の対象となる方は、高血圧症、脂質異常症、2型糖尿病のいずれか病気があり、肥満度を測る指標のBMIが35以上か、27以上で肥満に関する健康障害が二つ以上あるといった条件を満たす患者となります。

2023年11月15日公表の情報では、以下の条件が追加されています。

・ 最大投与期間は68週まで
・ 2カ月に1回以上は管理栄養士による栄養指導を受ける
・ 処方は日本循環器学会・日本糖尿病学会・日本内科学会の専門医のみ
・ 上記学会から教育研修施設として認定された施設のみ治療ができる

痩身美容目的など、GLP-1製剤の適用外使用については、国や関連学会が警戒を強めていると考えられます。事実、医師会の回覧で下記のような通知が来ました。

「今般、厚生労働省よりGLP-1受容体作動薬の在庫逼迫や美容、痩身目的の治療等といった 適応外使用がなされている状況をふまえ、GLP-1受容体作動薬を2型糖尿病の治療以外を目的として使用していることが明らかな場合、適応外使用として、査定対象とすることが示されました。」

一般的に、ほとんどのクリニックや診療所は教育研修施設の認定は受けていないため、ウゴービの治療を受けられるのは病院です。

しかも、教育研修施設の認定を受けた総合病院ということになります。
ウゴービの治療を受ける場合、かかりつけ医で適応を見極めてもらい、一定の治療や指導を受けてから総合病院へご紹介するということになるのかも知れません。

舘内記念診療所

!このページのコンテンツは全て院長 医学博士 安部英彦の監修に基づいて執筆・制作されております。