がんとの共存とがんサーバイバー

癌と診断されて以後、癌と共に生きている方々は、がんサーバイバーと呼ばれています。
特に、転移を伴った癌であると診断されて以後、治療を続けながら何年もの経過を辿っている患者様のことをここではスーパーサーバイバーを呼ばせて貰います。

当院にも癌と診断されて数年の経過を持つ、スーパーサーバイバーがいらっしゃいます。
大腸癌で肝転移を起こしていた方、肺癌で骨転移を持っていた方、卵巣癌で腹膜播種を起こしていた方、など当院受診中の患者様全体のわずか数%ですが確かにいらっしゃいます。

もちろん、ハイパーサーミアだけで生き残ったと言いたい訳ではありません。
同時に、平行して化学療法を続けていたり、放射線治療を受けていたり、免疫療法を行っていたり。
患者様方、個々に違いがあります。
大きく影響しているのは、癌そのものの性格ではないかと思います。

一口に癌と言っても、色々な顔を持っています。
分裂する速度が早く、あっという間に大きくなり、身体中に広がって仕舞う癌もあれば、殆ど活動しておらず、一定の状態から変化しない癌もあるのです。
当院に受診しているスーパーサーバイバーの患者様方は、後者のようなタイプかも知れません。

もちろん、ハイパーサーミアを受けた全ての方が、この様な経過を辿る訳ではありません。
患者様により非常に大きな時間的差があるものの、むしろ多くは次第に進行する傾向がみられます。
今のところ、最先端の医療をもってしても、進行癌を完全に治すことは困難です。
しかし近い将来、登場する新たな治療の恩恵を受けるようにしなくてはなりません。
そうなることで、更に多くのスーパーサーバイバーが誕生して行く訳です。

生きている限り、身体の病から逃れることは出来ません。
どうすれば病気と共に生きて行くことが出来るのか。
これが一番気になる部分だと思います。
患者様から、自分で出来る食事療法や生活習慣のなかで、何か良い方法はないかとご質問を受けることがあります。
自分の中に起こった病気を、自分で少しでも良くなるようにしたいと誰もが願います。
一つだけ言えるのは、「これは遣ってはいけない」や「この様にしなければならない」は間違いだと思った方が良いということです。
若し、何か方法があるとしても、それが全ての方に当てはまる訳がありません。
どのような慢性疾患に対しても同じことが言えると思いますが、当たり前なことを常識的な範囲で行うようにお願いしています。
ご自分で毎日の体調を管理し、癌との共存を図りながら生活することが最も大切です。

CT結果の提供をお願いする理由について

当院でハイパーサーミアの治療を受けている患者様には、化学療法や放射線治療をなさっている医療機関で行った画像診断の結果を拝見させて頂くようにお願いしています。
一般的に治療が行われた場合、その効果判定を目的に検査を致します。
しかし当院では、ハイパーサーミアの効果判定を目的として検査を行っていません。
検査設備の不備があることは否めませんが、最大の理由は放射線被爆の問題にあります。

化学療法など標準治療を受けている患者様方は、治療効果判定のため、必ず定期的に造影CTなどの画像診断を受けているはずです。
CT検査だけではなく、場合によってCT以外にもPET検査や、骨シンチを受けなければ判断出来ないこともあります。

このような状態の中で更にまた、ハイパーサーミア効果判定のためとは言え、放射線を被爆することは発癌の恐れを招くだけであり、本意ではありません。
同時にまた、余分な出費も必要になります。

電磁波温熱療法の治療効果判定のために把握し、追い続けなければならない特殊な検査はありません。
一般的に、癌の治療効果は造影CTで判定が行われます。
このため、標準治療の効果判定を目的とした造影CT検査など、画像診断の検査結果をもとに判断させて頂くため資料提供をお願いしています。

HSP70に焦点を合わせたハイパーサーミアの制癌効果

ハイパーサーミアによる癌への効果について、HSP(ヒートショックプロテイン)に焦点を合わせ、説明してみたいと思います。

HSP(ヒートショックプロテイン)と呼ばれる蛋白質はご存知かと思います。
HSP(熱ショック蛋白質)とは細胞がストレスに曝された時に発現し、細胞を保護する蛋白質で別名、ストレスタンパク質(Stress Protein)とも呼ばれています。
新しく作られた蛋白質に結合し、蛋白質の折り畳みや折り畳みの解除をコントロールする機能(分子シャペロン機能)があります。
HSP(ヒートショックプロテイン)には分子量の違いにより幾つもの種類が存在していますが、HSP70(70キロダルトンのヒートショックプロテイン)と呼ばれている蛋白は、NF-kB(エヌエフカッパービー)の活性化を阻止することが分かっています。1)

NF-κBは、ストレスや紫外線の刺激によって活性化され、免疫反応で重要な役割をもった転写因子の一つです。
炎症反応や細胞増殖、アポトーシスなどの生理現象に関与し、癌ではNF-κBの活性化が認められます。
細胞分裂の際に遺伝子をコピーする因子で、遺伝子の発現を調節する蛋白質なので、NF-κBの活性が高くなると癌は増殖し易くなり、浸潤や転移が起き易くなるのです。
また、癌細胞にあるNF-κBの働きが、抗癌剤の効力が低下する要因の一つではないかとも考えられています。
このことから、ハイパーサーミアによりHSP70が産生され、NF-kBの活性化が抑えられることにより、癌を制圧し易くなると同時に、抗癌剤の効力を維持する働きが期待できます。

もちろん、HSPの関連を考慮しなくとも、化学療法とハイパーサーミアの併用は、抗癌剤の効果を高めるメリットがあります。
体内に投与された抗癌剤の分布だけを考えた場合、ハイパーサーミアで癌の病巣を加温すると、癌の血管網は血流調整が出来ないので中心部にあたる血流は低下しますが、正常な血管が存在する癌の辺縁部では血流量が増えることになります。
周囲部の血流量が増えるということは、投与された抗癌剤が血流に乗り、効率よく癌の病巣周囲に届くことになる訳です。
身体全体の分布から考えてみると、相対的に抗癌剤は癌の周りに集まるため、抗癌剤がより効き易くなります。

また、ハイパーサーミアは免疫機序を介し、癌の治療効果を高めます。
細菌やウィルスなどの外敵が侵入した時や、癌など異常を発生した細胞を排除する身体の免疫機序はよく知られているように、樹状細胞やマクロファージ、B細胞、T細胞、NK細胞等が担当しています。
まず敵を捉え、攻撃目標を教える役割を担っている細胞が、樹状細胞やマクロファージなどの抗原提示細胞です。
樹状細胞は、ウィルスや細胞を取り込んで分解し、目印となる抗原を免疫担当細胞に伝達します。

癌の場合にも、癌の細胞膜に目印となる抗原があり、樹状細胞は癌細胞を取り込んで癌の抗原を拾い出し、標的となる癌をT細胞に抗原提示します。
T細胞は、ヘルパーT細胞というリンパ球からの刺激でキラーT細胞が活性化し、標的であると認識された癌細胞に攻撃を始めます。
更にまた、これとは別に、常に体内をパトロールし、異常な細胞があれば自動的に直ぐ攻撃する機能をもった、NK(ナチュラルキラー)細胞というリンパ球があります。

しかし、そのような免疫機序が働いているにも関わらず、なぜ癌は身体の中で成長し、命を蝕んで行くのでしょうか。
癌は、先ほど述べたような私達の免疫から逃れる能力を持っているからです。
癌の細胞には、それぞれに特有な癌抗原がMHC-Class1(Major Histocompatibility Complex; 主要組織適合性複合体)と共に癌の細胞膜に存在します。
MHCとは細胞表面にある糖タンパク分子で、細胞内のタンパク質の断片(ペプチド)を細胞表面に提示する働きがあります。
樹状細胞などに貪食された結果できるペプチドのことを、「抗原ペプチド」や「ペプチド抗原」と一般的に呼ばれますが、「抗原ペプチド」がMHCと結合して細胞表面に抗原提示されると、キラーT細胞がこれを認識して癌に攻撃を始めます。
キラーT細胞(細胞傷害性Tリンパ球)は、癌抗原を察知して癌細胞を攻撃しますが、癌抗原が隠れていると攻撃することが出来ません。
癌は、私達の免疫から察知されないよう、癌抗原を隠しているのです。

ここでもまた、ハイパーサーミアは免疫に働きかけ、癌への効果が期待出来ます。
ハイパーサーミアによって体内に作られたHSP(ヒートショックプロテイン)、特にHSP70は、癌抗原とMHC-Class1の複合体を作り、HSP70と癌抗原、およびMHC-Class1の複合体が癌細胞の目印となり、Tリンパ球への抗原提示をより強力に行うことが出来るようになるのです。2)

以上、今回はHSP70に焦点を合わせ、ハイパーサーミアの効果を述べてみました。

1)T.Tanaka,A.Shibazaki,R.Ono&T.Kaisho:Sci.Signal,7,ra119(2014)

2) Ito, A., Shinkai, M., Honda, H., Wakabayashi, T., Yoshida, J., and Kobayashi, T. 2001. Augmentation of MHC class I antigen presentation via heat shock protein expression by hyperthermia. Cancer Immunol. Immunother. 50: 515-522.

ハイパーサーミアの副作用について

電磁波温熱療法の副作用について、少し述べておきたいと思います。
電磁波温熱療法(ハイパーサーミア)でみられる副作用は、化学療法や放射線治療などの標準治療と比べ、非常に軽微です。
生活に影響するような、重い副作用は有り得ないと考えて良いでしょう。

敢えて副作用を挙げるとすれば、先ず火傷です。
火傷をするとしても、電極を当てていた皮膚の一部が赤くなり、少しヒリヒリするようなもので、そのまま放置していても、2~3日で良くなる程度(Ⅰ度の熱傷)が殆どです。
当院では、それ以上に重度の火傷を経験したことがありません。
火傷を起こして仕舞う最も多い原因は、身体と電極の間隙です。
電極と皮膚との間に隙間があると、そこにある空気に遮られて電磁波が乱反射し、そこがチクチクとした痛みを感じ、その部分の皮膚が赤くなったりします。
そのため、成るべく電極と身体が圧着させた方が良いのです。
多少、苦しいと感じるかも知れませんが、圧迫することが可能な患者様には、出来るだけ電極を圧着するようにしています。
電極で押さえることで、副作用を軽減することが出来ます。
背側と比べ、腹側の方が人体表面の皺や凹凸が多く、ご自分の体重で電極へ圧着させることを目的とし、うつ伏せの姿勢で行います。
こうすることで、火傷も起こし難くなる筈です。
更に、エコーゼリーを身体と電極の間に塗り込んで、隙間が出来ないようにし、痛みを感じやすい部分には、テープを貼り保護すると共に、皮膚の皺や弛みがある部分を伸ばすように貼り、成るべく症状が出ないような工夫を加えます。
また、火傷を避けるためにも、施行の最中に何か異常を感じることがあれば直ぐ、係の者へ伝えるようにお願いしています。

その他、注意すべき点は脱水です。
出力が上がれば上がるほど、身体から発生する熱は多くなります。
当然、体温は上昇し、発汗します。
発汗が多くなれば、体液が奪われ、脱水へ傾く訳です。
そのため、脱水に陥ることがないように、予め水分の補給をお願いしています。
一度に大量の水分を摂るよりも、少量の水分をこまめに摂るようにした方が良いと思います。
治療を受けている最中にも、水分を摂ることが可能です。
手助けが必要な場合には、係の者へ伝えて頂ければ、お手伝いを致します。
終了した後、治療中に余り汗が出なかったと感じても、必ず水分を補給するようにお願いしています。

また、一時的に熱のため、皮下脂肪が溶け、治療後に皮下脂肪の塊が皮膚の上から触ることがあります。
コロコロした塊が皮膚の上から触れるので、驚くことがあります。
しかし、治療を受けた後から起こったという明確な因果関係があり、触れるとヒリッとした痛みを感じるので、直ぐに判断することが出来るでしょう。
皮膚への転移で生じた腫瘍を触れたとしても、そのような痛みを感じることはありません。
大体、10日から2週間ほどで、脂肪の塊は溶け、身体の機能に異常は残しません。
このような現象が起こる場合があると知らなければ、驚くことがあります。
滅多に経験しませんが、このようなことが起こる場合もあると知っていれば、慌てることがないでしょう。

その他、起こり易い症状は、倦怠感です。
一般的には、湯中りと同じ状態で、遅くとも1日から2日で治ります。
筋肉痛も稀に起こすことがあります。
これらの症状は、いずれも軽微なものであり、通常生活への支障はあり得ません。
最初に申し上げましたが、ハイパーサーミアを受けるにあたり、重大な副作用を考える必要はないでしょう。

但し、ご高齢の方や梗塞や出血などの血管障害をお持ちの方、心不全や呼吸不全の既往がある方など、リスクをお持ちの場合には十分な注意が必要です。
そのため、治療を行う場合には患者様の状態を考慮し、経験的な出力の調整が不可欠となります。

標準治療とハイパーサーミアを受けるタイミング

癌の標準治療と同時に、ハイパーサーミアを受ける際、そのタイミングはいつが良いのでしょう。
化学療法や放射線治療の前が良いのか、後が良いのか。
いつ受けるべきかと、患者様から良くご質問を受けます。
同時に行う事が出来ればより良いでしょうと申し上げますが、治療を受ける医療機関が違う場合は些か困難です。
実際の診療から感じた自身の意見を交え、少しだけ述べてみたいと思います。

ハイパーサーミアを受けるタイミングについては、標準治療の前後それぞれに違ったメリットがあります。

1:標準治療前
p53蛋白と呼ばれる、がん抑制遺伝子の活性化や耐性化蛋白の半減期を考えると、標準治療を予定している日より前3日の間にハイパーサーミアを行うことで、化学療法や放射線治療の増感作用が期待できます。

2:標準治療当日
放射線治療では、がん細胞を破壊するための活性酸素が必要です。
当日にハイパーサーミアを行った場合、がん細胞の攻撃に必要な酸素分子を供給する作用があると考えられます。
また、化学療法に対しては、薬物の分配システムに対して効果が期待できます。

3:標準治療翌日
放射線治療や白金製剤投与などの化学療法により、がん細胞はDNA損傷を起こします。
がん細胞では、障害を修復するためにDNA修復酵素が働き始める訳ですが、酵素が機能を保つためには、一定の至適温度が必要です。
DNA修復酵素が働いている時、酵素が働く至適温度から外れてくると、上手く機能しなくなり、がん細胞はアポトーシス(プログラムされた自然死)を起こすことになります。

治療の際に最も大切な要素は、患者様の体調だろうと思います。
個体差はあるものの、標準治療には少なからず副作用が出ることを考えなくてはなりません。
抗がん剤の副作用が酷い方は、身動きが出来ないほど全身が重く、何も口に出来ないほど食欲がなくなることがあります。
抗がん剤の種類によっては、全身に皮膚炎を起こし、手足が腫れたり、ヒリヒリする痛みを起こしたり、一日中トイレから出られない程酷い下痢が続くこともあります。
副作用に苦しみながらハイパーサーミアを受ける事自体、心身ともにストレスとなり、治療を続けることが困難でしょう。

化学療法のスケジュールは、抗癌剤の選択や投与法により異なりますが、休薬期間が設けられます。
投薬によって起った酷い副作用も、休薬することにより徐々に改善して行く筈です。
副作用が重い方の場合、ハイパーサーミアを予定するとすれば、抗癌剤投与の直前に行う方がより確実ではないかと思います。

また、副作用が余り現れない方もいらっしゃいます。
そのような方の場合、基本的に週1回の割合でハイパーサーミアを受け、更に化学療法の予定がある時には、投与日になるべく近い日を選択し、予定を組むようにお薦めしています。

癌に対するハイパーサーミアの抑制機序

一般的に、35℃位の低体温が続いていると、免疫力が低下すると考えられています。
NK細胞や細胞傷害性T細胞の機能も低下してしまうため、癌になり易い状態になるのです。
人間の身体には、毎日5000~6000個ほどの癌細胞が発生しています。
しかし、全ての人が癌にならないのはNK細胞が巡回し、直接癌細胞を攻撃し駆除しているからだと言われています。
低体温やストレスなどで免疫力が低下すると、癌の発生率は上昇すると同時に、癌細胞を駆除するNK細胞の能力も低下して行くので、癌が育ち易くなるのです。

古代ギリシャの医師、ヒポクラテス(紀元前460~370年)も「癌は熱に弱い」と記しています。
昔から、皮膚の表面に現れる皮膚癌や乳癌には、発熱によって縮小したり消えて無くなったりする報告が数多くあるのです。
外部温度環境と癌細胞の生存率について調査した研究が過去に行われていますが、その結果によると、環境温度が1℃上昇するだけで癌細胞の生存率は変化し、42℃以上1時間の加温で癌細胞の生存率は100分の1まで低下することが分かっています。

このような基礎研究を踏まえ、癌組織内の温度を上げる治療(ハイパーサーミア)が行われるようになりました。
以前から行われてきた研究結果より、ハイパーサーミアの効果には、次のような理由が挙げられています。

1:腫瘍組織内では血流が少ないところで熱がうっ滞するため、腫瘍組織の温度が正常組織より上昇しやすく、癌細胞に直接的なダメージを与えることができる。

2:血流の悪い腫瘍組織を加温すると、癌細胞に抗癌剤が届きやすくなる。

3:細胞分裂が盛んな癌ほど抗癌剤が与える癌細胞へのダメージが強く、抗癌剤により癌細胞がDNA障害を受けた後、DNAの修復のためDNA修復酵素が働くが、熱があるとDNA修復酵素の作用が低下して癌細胞が死に至りやすくなる。

4:腫瘍組織の低酸素状態で、癌細胞は嫌気性解糖によりエネルギーを生み出しており、結果として乳酸が腫瘍細胞内に蓄積し、酸性状態になっているため、熱による癌細胞への殺傷能力が高くなる。

時代が進むに従い、更に研究が進みます。
新たに解明されてきた分子レベルの発見から、ハイパーサーミアが癌に対しての効果を発揮する理由について、これまでになかった機序が登場してきました。

1:マイルドハイパーサーミア(39~40℃までの加温)によって、腫瘍組織内の血流が増加し、腫瘍組織内部の酸素分圧が増加します。
これにより、低酸素誘導因子(HIF-1α)の減少が起こり、化学療法や放射線治療に対しての感受性が改善する効果が期待できます。

2:43℃以上の高い温度で行う電磁波温熱療法では、正常組織の細動脈が拡張するため、正常組織の血流が増加します。
その影響を受け、逆に腫瘍組織内の血流はスティール現象によって低下し、腫瘍組織内の酸性化や、赤血球や血小板の凝集、腫瘍血管内皮の熱障害を発生します。

3:癌細胞に対して腫瘍免疫の増強、例えばHSP70(ヒートショックプロテインの一種)の増加、リンパ球の免疫監査力の増強、インターフェロンγの産生などがみられます。

4:RNA遺伝子転写因子であるNF-κB活性化の抑制がみられます。

5:癌細胞中での低酸素誘導因子が減少し、その結果、P糖蛋白減少や多剤耐性遺伝子蛋白減少、CREBなど生存シグナルの減少、CD95細胞死シグナル(Fasシグナル)の増強などが関与して、抗がん剤や放射線に対して癌細胞毒性が高くなります。

6:腫瘍組織内の血流増加によって薬物分配が改善し、抗癌剤が腫瘍組織に届き易くなります。

7:誘導型一酸化窒素ガスにより、腫瘍組織内に出来た細胞傷害性高濃度の一酸化窒素ガスを発生する機序が働きます。

8:低酸素条件下、嫌気的解糖系でエネルギーを産生して生きている酸性状態にある癌細胞が熱の影響で死に至り易くなります。

また、免疫に関わる効果についても、次のようなことが考えられています。
39~42℃程度の軽い電磁波温熱療法(マイルドハイパーサーミア)を行うことにより、免疫系の活性化をもたらし、癌への攻撃が始まるのです。
理由の一つとして、NK細胞の表面上に存在するNKG2Dという受容体が活性化するとともに、癌細胞表面にある癌の目印であるMICA/Bも活性化しますが、MICA/Bが強く発現している癌細胞であれば尚更、NK細胞からの攻撃を受け、癌は死に至ることになるからです。
更にまた、マイルドハイパーサーミアでは、ヒートショックプロテインを癌細胞内に作るため、ヒートショックプロテインと癌蛋白との複合体が細胞表面に出てきます。
細胞傷害性Tリンパ球が癌細胞を破壊すると、ヒートショックプロテインと癌抗原の複合体が飛び散り、それを樹状細胞が取り込んで行きます。
これにより、樹状細胞は細胞傷害性Tリンパ球へ、より効率的に癌を抗原提示し、癌に対しての免疫力が上がることになる訳です。

生理学の新たな発見とともに、様々な生命の構造が解明されてきました。
今後も更に、複雑に入り乱れ絡め合う生命の糸が次々に紐解かれて行くものと思います。
経験的な実証から、ハイパーサーミアへと発展してきました。
これからも、ハイパーサーミアが効果を生む新たな機序が解明され、書き加えられて行くでしょう。

嫌気性解糖:
酸素を利用せず、糖をピルビン酸や乳酸に分解して、エネルギーを産生する反応を指します。酸素がある条件の下ではピルビン酸まで、酸素がない条件の下ではさらに乳酸やエタノールなどに分解されます。

低酸素誘導因子:
低酸素誘導因子は、細胞に対する酸素供給が不足した環境により誘導されるタンパク質で、転写因子として機能します。癌の病巣においては栄養不足や細胞外pHの低下、血流不足による酸素供給不足状態が認められますが、癌細胞が生き延びるためには新たに血管網を構築することで病巣への血流を増加し、低酸素状態を改善する仕組みをもっています。

HSP70:
熱ショックタンパク質(ヒートショックプロテイン)とは、細胞が熱などのストレスを受けたとき、細胞を保護する蛋白質の一つで、分子シャペロンとして働きます。ストレスタンパク質とも呼ばれています。HPSは分子量によって名前があり、Hps60、Hps70、Hps90、は分子量が其々、60、70、90kDaの蛋白質です。

インターフェロンγ:
インターフェロンγ(IFNγ)は、活性化Tリンパ球およびNK細胞によって産生され、ほぼ全ての免疫応答や炎症応答に関与する多指向性サイトカインです。IFNγは、T細胞、B細胞、マクロファージ、NK細胞の他、様々な細胞種の活性化、増殖、分化に関与しています。IFNγは、上皮細胞、内皮細胞、結合組織の細胞や単球系細胞株などの抗原提示細胞のMHC発現を増強します。腫瘍細胞に対する細胞障害ではマクロファージ活性化因子(MAF)として働き、抗腫瘍効果をもたらします。

NF-κB:
NF-κB(nuclear factor-kappa B)は転写因子として働く蛋白複合体です。ストレスや紫外線の刺激により活性化され、免疫反応で重要な役割を果たす転写因子の一つとされています。急性および慢性的な炎症反応や細胞増殖、アポトーシスなどの生理現象に関与しています。悪性腫瘍では一般的に、NF-κBの活性化が認めらます。

P糖蛋白:
P糖蛋白質は細胞膜上に存在し、毒性のある化合物などを細胞外へ排出する働きがあります。P-gpはABC輸送体のMDR/TAPサブファミリーに属する分子で、腸や肺、腎臓の近位尿細管、血液脳関門の毛細血管内皮細胞等に見られます。

CREB:
CREB(cAMP response element binding protein cAMP応答配列結合蛋白)は、神経細胞ニューロン間の恒久的接続を確立する蛋白質を、転写・翻訳するのに必要な因子です。この分子をブロックした場合、タンパク質合成や新たなシナプスの発達が妨げられ、その結果長期記憶の形成が阻害されます。

CD95:
CD95(FasまたはAPO-1と同義語)抗原は、腫瘍壊死因子(TNF)スーパーファミリーに属し、アポトーシス(プログラム細胞死)を媒介します。

Fasシグナル:
Fasリガンド(別名:CD95L)は、アポトーシスを誘導するサイトカイン(デス因子)です。FasリガンドやTNF(腫瘍壊死因子)は盛んに研究され、いろいろなアポトーシス誘導系の中で、細胞外のシグナルから細胞死に至るまでの経路が明らかになっているのは、デス因子によるアポトーシス誘導系だけです。

誘導型一酸化窒素ガス:
誘導型一酸化窒素合成酵素(iNOS) はマクロファージなど免疫系の細胞に含まれ、炎症に伴い発現誘導されます。iNOS発現誘導による過剰なNO生成は正常細胞のDNAを傷害し突然変異を誘導するなど癌の発生に深く関係していると考えられています。

NK細胞:
ナチュラルキラー細胞(NK細胞)は、細胞傷害性リンパ球の一つです。特に腫瘍細胞やウイルス感染細胞を自然に排除する役割があります。特定の細胞を殺傷する細胞傷害性T細胞とは異なり、感作の必要がないという意味から、生まれつき(natural)の細胞傷害性細胞(killer cell)と名付けられています。

NKG2D:
MICA/Bに対する受容体として知られており、異常細胞や癌細胞を攻撃する免疫細胞に発現しています。例えば、NK細胞は癌細胞表面上にあるMICA/Bを認識することで、癌細胞を攻撃するようになります。

MICA/B:
MICA (MHC class I chain-related gene A)、MICB (MHC class I chain-related gene B)は、主要組織適合抗原(MHC)に対し、非古典的な組織適合抗原と呼ばれており、癌やウイルス感染に対しての免疫応答に関与しています。MICAとMICBは、正常細胞には殆どみられませんが、癌細胞や感染症などで何らかの障害を受けた細胞に見られます。

樹状細胞:
樹状細胞は、樹のような形の細胞です。白血球の免疫細胞の一つで、ウイルスや細菌などの病原体や異物を発見すると、貪食し特徴を覚えます。その特徴をリンパ球へ伝えることにより、リンパ球は細胞傷害性T細胞となり、その病原体や異物を攻撃するようになります。

細胞傷害性Tリンパ球:
細胞傷害性T細胞(cytotoxic T lymphocyte:CTL)は、リンパ球のなかのT細胞のひとつで、ウイルスや癌細胞などを認識して破壊します。病原体を殺すという意味で、キラーT細胞とも呼ばれています。

ハイパーサーミアの保険費用概算

ハイパーサーミアサミアを保険で受けて戴く際、必要な費用です。
保険の自己負担割合で費用が異なります。
参考のため、ご覧戴ければ幸いです。

概算費用
保険負担割合や受診の間隔など、条件により受診費用総額は異なります。
下記の内容で、ご本人の条件に当てはめ、ご試算下さい。

初診時の自己負担金

負担割合温熱療法の
包括治療費
初診料合計
1割負担9,000円360円9,360円
3割負担27,000円1,090円28,090円
2割負担14,000円~
詳しくは市区町村へお尋ね下さい。

毎回通院時の自己負担金

負担割合再診料特定疾患管理療養料
(月2回)
1割負担120円350円
3割負担370円1,050円
2割負担250円700円

ハイパーサーミアの負担金総額

負担金総額(週に1回の割合、最短で8回治療受けた場合)

1割負担の場合 10,580円
3割負担の場合 31,800円

多発する骨転移を伴っていた肺腺癌 イレッサとハイパーサーミアの併用で長期に良好な状態を維持している症例

症例のご紹介

肺腺癌  多発性骨転移
イレッサとハイパーサーミアの併用で長期に良好な状態を維持している症例

症例:70歳代 男性

病気の経緯:
2010年8月、他県総合病院において右肺上葉肺癌の診断を受け、胸腔鏡下手術を受けました。しかし、2012年9月に行われた骨シンチで第8胸椎の転移を指摘され、放射線治療を実施。この時点から、イレッサの投与も開始されました。その後、2013年12月に骨シンチが再度行われていますが、第8胸椎の集積は減弱しているものの、右第5肋骨に新たな骨転移が認められました。このため、肋骨転移に対しても、放射線治療が行われました。

治療経過と現在までの結果:
当院へは2014年2月、電磁波温熱療法を目的として受診なさいました。イレッサの投与は継続されており、イレッサ服薬と電磁波温熱療法(ハイパーサーミア)の併用を行うことになりました。当院初診時より現時点まで約5年間に、計114回の電磁波温熱療法(ハイパーサーミア)が実施されています。2014年11月に行われた骨シンチでは、異常集積が減弱し、更に、2015年4月に行われたPET-CT検査では異常集積が認められませんでした。また、2015年12月に行われた骨シンチでも、新たな骨転移を示唆する異常集積はみられませんでした。2017年11月の骨シンチも、右第5肋骨および第8胸椎ともに集積は消失し、2018年10月に行われた直近のCT検査でも、状態は維持されたまま経過しています。

考察:
術後肺癌に骨転移が多発した症例です。遺伝子変異が確認されており、イレッサ(分子標的薬)の投与と骨転移に対する放射線治療が奏効していると考えます。複数年を超える長期のイレッサ投与となっていますが、骨転移は消失した状態を維持し、その他の部位に新たな転移は確認されていません。電磁波温熱療法(ハイパーサーミア)とイレッサ(分子標的薬)の併用により、制癌効果が持続しているものと考えられます。

追記:
肺癌と診断されて9年。当院へ受診して以後、5年が過ぎようとしています。摘出手術から2年後に骨転移が指摘されました。転移に対し放射線治療が行われていますが、その後、多発する骨転移を起こしたとは思えないほど良好な経過を辿っています。骨転移以後、イレッサの投与が開始されましたが、薬剤耐性を起こすことなく、6年以上経過したことになる訳です。

EGFR(上皮成長因子受容体)の遺伝子変異がある癌の場合に、イレッサやタルセバなど分子標的薬の効果が期待できます。しかし多くの場合、一旦効果がみられたとしても、次第に効かなくなってしまいます。これは、薬剤に対しての耐性が出来てしまうからです。耐性ができる機序について完全に解明されていませんが、今のところ分かっているのは、

*T790Mと呼ばれる新たな異変が起こってきた場合
*EGFRに関わる受容体チロシンキナーゼ(Met)遺伝子の発現が増えてくる場合

が主な原因と考えられています。このような場合に、イレッサやタルセバなどの分子標的薬は効果がなくなり、別の薬剤へ変更しなくてはなりません。T790M耐性変異による増悪がみられた場合、タグリッソを選択することになります。しかし、タグリッソも投与期間中、C797S異変が出現することにより、効果が失われてしまうことも報告されています。

このように、普通は分子標的薬の投与開始から1年ほど経過すると、薬剤耐性が出来ると考えられますが、この症例は投与開始から既に6年以上経過しています。イレッサとハイパーサーミアを併用している患者様全てが、このような経過を辿る訳ではなく、この患者様は特殊な例です。その機序は分かりません。しかし、この症例は、薬剤耐性を起こすメカニズムに対し、ハイパーサーミアが何らかの形で抑制的に働いているのではないかと考えています。

全身温熱療法と局所温熱療法の違い

患者様方から戴くご質問の中で、「全身温熱療法と局所温熱療法はどう違うのか」とのお尋ねを戴きます。
簡単に説明していますので、参考にして戴ければ幸いです。

局所温熱療法と全身温熱療法の違いについて
温熱療法の方法を大別すると、全身温熱療法と局所温熱療法に分けられます。
局所温熱療法は保険診療が認められている治療方法で、肝臓癌へ広く利用されているRF(ラジオ波)や乳癌や前立腺癌へ利用されているHIFU(超音波)がありますが、サーモトロンRF8で行う電磁波温熱療法は局所温熱療法に入ります。

ラジオ波や超音波で行う方法は、癌の部位にピンポイントで加温が可能です。
しかし、点在する癌や広範囲に浸潤した癌は、全てカバーすることが出来ません。
サーモトロンRF8で行う電磁波温熱療法の特徴は、身体の表面から6cm以上の深部に、直径30cmの電極でカバー出来る位の範囲で熱を発生することが可能です。
そのため、一回に行うことが出来る範囲は限られますが、腹部全体や胸部全体に複数の転移を持っている症例や、浸潤して広がった状態などの癌には適していると考えます。

全身温熱療法は、血液透析のように血液を身体の外へ取り出し、加温した後に再び体内へ戻す方法や、バスタブのような容器の中へ入り、皮膚から全体に熱を与え、身体の外から加温する方法などがあります。
リスクを伴うため、厳重な全身管理が必要な治療方法です。
全身温熱療法については現在、厚生労働省が認めた保険適応の方法はありません。

ハイパーサーミアの効果と標準治療との併用

電磁波温熱療法(ハイパーサーミア)は、保険診療としての認可を得た癌の治療です。
保険診療の認可を得るためには、繰り返し行われる基礎データの解析や、治療効果の有効性について比較され、その有効性が認められるか統計調査され、また副作用について、沢山のデータから重大な副作用がないか、軽微なものを含め、どのような副作用がでるか、またその発現率はどれ位かなど、膨大な調査と厚生労働省の審査を経て、保険治療としての認可を得ています。
効果がないものは認可が得られない訳です。
その効果の理由として、いくつかのメカニズムが考えられます。

癌細胞は、その分裂や増殖のために多大なエネルギーを必要とします。
そのエネルギーは、血流を介して供給されるものです。
ところが癌の腫瘍は最初から身体にあった物ではないので、血流を豊富に供給されるために新しく血管を作らなくてはなりません。
そのため出来た手段が、癌へ血流を供給する新生血管です。
1ミリを超えるサイズの腫瘍には、100万個ほどの細胞があり、この大きさ以上になると十分な血流を確保するため、血管新生が必要だと言われています。
しかし、新生血管には、正常な血管のように血流の調整が出来ません。
電磁波温熱療法の効果は、この新生血管の性質上、環境温度による血流調整が出来ないことを利用しています。
つまり、癌の組織は加温することにより、正常組織と比べ蓄熱し易いのです。

細胞レベルの変化を考えると、高温環境下では癌細胞中のエネルギーが一気に使われるという現象を起こします。
細胞内代謝は温熱刺激に抵抗するために、生体エネルギーの供給物質であるATP(アデノシン3リン酸)が枯渇しエネルギーが一気になくなりますが、正常細胞では有酸素下ですぐにクエン酸回路が働き、エネルギーを回復します。
これに対して、癌細胞は低酸素下で生育し易い性質をもち、主に解糖系という非効率なエネルギー生産しか動かず、エネルギーの枯渇状態が長く続くため、細胞死に至り易いのではないかと考えられています。

更に、低酸素下での代謝の結果、乳酸が蓄積され、細胞内の体液が酸性化します。
そうすると、細胞膜の動きが活発になり、内外の物質の移動が盛んになります。
この時に、抗癌剤は細胞内に取り込まれやすいので、化学療法の効果を高める結果に繋がります。
これは、抗癌剤と温熱療法の併用の有効性を裏付ける理由と考えます。

しかし、電磁波温熱療法は、外科的な手術や化学療法、放射線療法など標準治療と呼ばれるものではなく、補完的な治療としての立ち位置です。
ハイパーサーミア単独での治療効果は限定的であろうと思います。
標準治療との併用により、一層効果が期待できる治療ではないかと考えます。

高齢者へのハイパーサーミア 基本的に年齢での制限はなし

当院では、高齢者に対しての治療に、一律年齢制限を設けていません。

一般的には高齢者に対し、積極的な癌の治療は行いませんが、ご高齢の方でも個人差や個体差が御座います。

このため、認知症がない場合。
また、ご本人が治療に納得され、治療をご希望される場合は、免疫力向上を目的として、低出力での温熱療法を行います。

30センチ径の電極を腹部と背部に当て、身体を挟むようにセットします。
この状態で、機械の上に30~40分ほど横になって頂きます。
このため、30~40分ほど同じ姿勢を続ける必要があります。
全く動くことが出来ない訳ではなく、頭や首、両手、両足は動かすことが出来ます。

変形性脊椎症などで、お身体の変形が強い場合は、左右どちらか向きやすい方向で、やや斜め仰向けになって戴きます。
介助により、機械へ乗り降り出来ることが必要です。

この様な条件が該当するようであれば、電磁波温熱療法を行うことは可能です。

緩和ケアと並行して行うことも可能です。
適正な出力を考え行いますので、決してご本人の体力的な負担になることはないでしょう。
標準治療も限界にあり、何か他の治療法を模索しているとすれば、電磁波温熱療法は良い選択肢であろうと思います。

ご病気の状態が重篤で、全身状態が極端に悪い場合は対象外です。
電磁波温熱療法を行うことが出来る限界は千差万別なので、前もってお話を伺い、直前に診察させて戴きます。

高齢者であっても、まだ何か治療を受けたいという、ご本人とご家族の希望があれば、出来る限り挑戦を続ける姿勢は大切なことだと思います。

ハイパーサーミア単独での治療も 標準治療で行き詰まった癌の方へ

進行癌への治療は、化学療法と並行してハイパーサーミアをお薦めしています。
標準治療の中でも、長期に渡り続けることになるのが化学療法です。
化学療法は、個人差があるものの、副作用は避けられません。
副作用の中には、間質性肺炎などを始めとして、致命的な副作用を発症する場合もあります。
また、化学療法を受けた患者様方は、身体を動かせない程の全身倦怠や食欲不振、嘔吐、下痢、皮膚炎など、数え切れない症状に悩まされる例も数多くみられます。

この副作用が耐えられない患者様方には、以後の治療を拒否し、化学療法を一切受けないと決めた方もいらっしゃいます。

更に、ありとあらゆる種類の抗癌剤投与を受け、次の治療の選択肢がなくなってしまった方もいらっしゃいます。

ハイパーサーミアの治療は単独で行うより、標準治療との併用をお薦めしています。
治療効果の面から、化学療法との併用がより期待できるからです。
しかし、上記のような場合、化学療法との併用は無理です。
このような状況の患者様方に対しては、ハイパーサーミア単独で治療を実施します。

標準治療以外の方法を模索し、取り入れる患者様は、数多くいらっしゃいます。
ご自分に最も合った治療を行って戴くことも、一つの選択肢です。
そのような方法の多くは、保険適応外の治療になります。
極端な考えに基づいたものや、莫大な費用が発生するものは別として、ご自分で良いと思う方法は積極的に挑戦してみる。
それは、良いことではないかと思います。

例えば、胃薬や便秘薬などで同じ成分でも、「錠剤は良いが粉薬は効かない」、更にまた同じ粉薬でも、「A社の薬は良いがB社の薬は効かない」、と訴える方が実際いらっしゃいます。
全く同じパーツで出来た顔でも、人それぞれ個々の顔が違うように、個人差は同じ薬一つでもその効き方に差が生まれる場合もあるのです。
若しかすると、何かの拍子で始めたことが契機となり、体調を持ち直す場合があるかも知れません。
例えば食事の管理など、これまでと違った食事の内容を、違った方法で摂取するなど。
試してご覧になって「何となく合うようだ」と、お感じになるようであれば、何度も同じことを申し上げるようですが、極端に偏った遣り方でなければ、続けてみては如何でしょう。
そのような場合にも、ハイパーサーミアは良い組み合わせになるであろうと思います。

熱の感受性は個体差がある マイルドハイパーサーミアも良い選択枝

熱に対し、その感受性には個体差があります。
熱い風呂は嫌だという人もいれば、熱くない風呂は入った気がしないという人もいます。
風呂の好き嫌いは別にして、ハイパーサーミアでの癌温熱療法についても、その出力レベルには、個体差がでます。
サーモトロンRF8は出力を変えられる機械ですが、僅かな出力でも辛いとおっしゃる方もいれば、最大の出力でも平気とおっしゃる方もいます。

当院では、最初に受診されたとき、その患者様がどの程度の出力が相応しいのか調べます。
何方が受けても絶対大丈夫のような、低い出力から徐々に上げて行き、その患者様の至適なレベルを定めます。
患者様方には必ず、我慢しないように申し上げています。
「どんな風になるのですか?」
患者様は一応に同じ質問をなさいます。
これも、感じ方には個人差があるのです。
「熱かったり、チクチクしたり、ピリピリしたり、圧迫されるように感じたり、痛くなったり」様々です。

実際に処置を受けているご本人でなければ、その症状が分かりません。
何か異常を感じた場合には、必ず直ぐ傍にいる者へ伝えて戴くようにお願いしています。
訴えに応じて、様々な対策を講じます。

一般的には皮下脂肪が厚く、太った方が熱く感じやすい傾向を示します。
しかし、必ずしもそうとは言えません。
体格が良く太った方でも、高い出力を用いて問題なく治療出来るのです。

当然、出力が高くなれば成る程、高い熱が発生します。
高出力の方がより温熱効果が期待される訳です。
42、5度を患部温度の目標としていますが、低ければ効果が無いという訳ではありません。
40~41℃位を目標として「マイルドハイパーサーミア」が行われます。
ご高齢の患者様や、体力が落ちて治療によるリスクの高い方、機械の高い出力に耐えられない方には、出力を少し低くコントロールしながら行うのです。
「マイルドハイパーサーミア」は、免疫賦活作用が期待できると考えられています。
ご自分に合った治療を取り入れながら、「マイルドハイパーサーミア」を行うことは良策です。
また、緩和ケアを受けながら「マイルドハイパーサーミア」を併用するのは、生活の質の改善に効果が期待出来ます。
今までと変わらない生活を維持することこそが、病気との共存です。

初期がんは先ず標準治療 進行がんはハイパーサーミア併用を

初期の癌と診断された患者様の中には、標準治療を受け入れず、ハイパーサーミアのみで治療を希望される方がいらっしゃいます。
基本的に、ご本人の意思を尊重致しますが、直ぐ切除すれば絶対完治するであろうと思われる場合、必ずもう一度、標準治療を考えて戴くようにお願いしています。

ハイパーサーミアだけで、初期の癌を何とかしようと思っては駄目です。
勿論、全く効果がないという訳ではありません。
厚生労働省が認めた保険治療です。
しかし、標準治療の補完的治療であると私は考えます。

初期の癌ではなく、進行癌の場合は少し考えが異なります。
リンパ節などへの転移があると判明している場合、治療で一時的に治ったとしても、その後、再発・再燃し悪化して行くことが考えられるからです。
現在、免疫機序を利用した新しい治療が開発されています。
新しい治療にも、少なからず副作用があるでしょう。
しかし今後、飛躍的に進歩を遂げて行くことは事実です。

救世主となり得る治療法は、何時か登場するに違いありません。
その恩恵を受ける日が、必ず来ると思います。
その時まで、何としても命を繋ぎ続けることが必要です。
恵みを享受する唯一の方法は、現在の健康を保ち続けること。
更に、良い体調を維持することです。

進行癌と診断された患者様には、ハイパーサーミアが治療の選択枝となります。
標準治療と併用し、補完的に行う癌の治療として効果が期待できるからです。
毎日を積み重ねて行けば、必ず明るい未来が訪れると信じます。

ハイパーサーミアのご紹介

現在「がん」は、増加の一途を辿っています。

昔に比べ、「がん」の治療方法は格段に進歩しましたが、未だ完全な治療が確立したとは言えません。

残念ながら、薬の副作用により治療を諦めた患者様や、抗がん剤や放射線治療を終了し、治療法がそれ以上ない患者様が多くいらっしゃいます。

将来、「がん」を克服する日が必ず来るに違いありません。

しかし今のところ、進行してしまった「がん」は、残念ながら未だ不治の病と言わざるを得ない状況だと感じます。

当院では、「がん」の電磁波温熱療法、ハイパーサーミアを行っています。

ハイパーサーミアは、丹毒による発熱で腫瘍が縮小した経験に端を発した治療法です。

現在では、患部を安全かつ正確に加温する方法が確立し、保険が適用される治療法となり、今日に至りました。

抗がん剤治療や放射線治療と並行して治療することにより、より一層の効果が期待できると考えられています。

医学は、その歴史からみて、経験を踏まえた発展を遂げて来ました。

ハイパーサーミアも、次第に研究が積み重ねられ、「がん」への詳細な効果とメカニズムが一つ、また一つと明らかになっています。

ハイパーサーミアは、まさに経験的な医療から進化した治療です。

「がん」の治療でお困りの患者様へは是非、このハイパーサーミアをお勧め致します。

「診療内容 – がん温熱療法(ハイパーサーミア)」および「院長ブログ – がん関連」から詳細をご覧になり、電話でご連絡頂ければ幸いです。

!このページのコンテンツは全て医学博士 安部英彦・院長 医師 安部公崇の監修に基づいて執筆・制作されております。