血液浄化療法

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Introduction

血液浄化療法

血液浄化療法とは血液をいったん体外に取り出し(体外循環)、ろ過・吸着することで病気の原因となっている物質を除去・分離し、きれいになった血液を再び体内に戻す治療のことです。

近年、免疫機能が原因で起こる病気(自己免疫疾患)が世界的に増加し続けています。血液浄化療法はその安全性や治療効果の高さから、日本を中心に世界で注目されています。

当院で取り扱う血液浄化療法

直接血液灌流法

Direct Hemoperfusion:DHP
血球成分除去療法
イムノピュア
吸着型血液浄化療法
レオカーナ

二重膜濾過血漿交換法

Double Filtration Plasmapheresis:DFPP
血漿交換療法
日機装:Pure Adjust

DHP

直接血液灌流法
(Direct Hemoperfusion)とは?

腸管に炎症を起こす白血球を吸着する為に、片方の腕の血管から血液を取り出して、特殊な血液浄化器(カラム)を通し、反対側の腕の血管に返すという治療法です。副作用も少なく、安全性の高い治療でおおよそ20年の臨床的な歴史があります。

透析を除く体外循環治療はアファレシスと呼ばれますが、その中で血液を吸着器で選択的に病因物質を除去する治療法を血液吸着療法(hemoabsorption:HA)または、直接血液灌流法(direct hemoperfusion:DHP*)などと呼びます。

*乳がんの化学療法であるDHP療法とは違うものです。

当院ではイムノピュアというカラムを使い、潰瘍性大腸炎などの治療にを行っております。また、レオカーナというカラムでは、閉塞性動脈硬化症(ASO)における潰瘍の治療を行うことができます。

イムノピュア

レオカーナ

about Immunopure

イムノピュアによる
血球成分除去療法(DHP)

潰瘍性大腸炎の治療にはさまざまな種類の薬があります。主に「5-アミノサリチル酸(5-ASA)製剤」と「ステロイド製剤」を使用して治療を行いますが、その他にも「免疫調節薬」や「生物学的製剤」が用いられています。しかし、中等症や重症例、再燃寛解を繰り返し緩解に至らない難治例は、活動期の潰瘍性大腸炎の治療法として白血球除去療法があります。血球成分除去療法は、身体に炎症を起こしている活性化された白血球を選択的にとり除く治療です。

画像:日機装株式会社提供

炎症を起こしている腸管粘膜には、顆粒球・単球・細胞障害性Tリンパ球などの活性の高い白血球が集まっています。炎症性腸疾患ではこのような白血球が、腸管の粘膜を攻撃するように間違った情報を与えられ、自分自身の身体を攻撃しているのです。ステロイドや免疫抑制剤が炎症性腸疾患に対して効果があるのは、活性化された白血球が攻撃している腸管粘膜に作用し炎症を抑制しているからだと考えられています。

画像:日機装株式会社提供

治療の時間は1回あたり60分程で、具体的には片方の腕の静脈から血液を抜き、反対の静脈へ戻します。カラム中のビーズ表面で、活性化された白血球や活性化された血小板などを吸着し、それ以外の血液成分はそのまま身体に戻します。

画像:日機装株式会社提供

一時的に白血球の数は減少しますが、骨髄から白血球が動員されて半日ほどで正常な数まで戻ってきますので、血球成分除去療法を週1回程度繰り返しても白血球が少なくなることはありません。また、ステロイドや免疫抑制剤の治療にみられるいろいろな副作用をあまり心配しなくて良いことも大きな特徴です。

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about Rheocarna

レオカーナによる
吸着型血液浄化療法

血行再建術*が行えない閉塞性動脈硬化症患者(ASO)における潰瘍の改善を目的に使用されます。閉塞性動脈硬化症とは、糖尿病、喫煙、脂質異常症(中性脂肪やコレステロールが高い)、高血圧、慢性腎不全などの基礎疾患により動脈硬化を起こし、特に下肢の動脈が詰まったりして、脚や足への血流が悪くなる病気です。重症になると安静時にも痛みが持続し、潰瘍や壊疽を起こし、最悪の場合には下肢の切断が必要になることもあります。「レオカーナ」は2020年8月に製造販売が承認され、吸着式血液浄化用浄化器(閉塞性動脈硬化症用)として2021年3月1日より保険適用となっています。

*血行再建術とは、血液の流れが悪くなった血管に対して行う治療で、カテーテルでの治療やバイパス手術のことを指しています。

レオカーナは、カラム中のビーズ成分に含まれるデキストラン硫酸が血中のLDL-コレステロールを、トリプトファンが血中のフィブリノゲンを選択的に吸着除去します。これにより、血液の粘性を低下させ、末梢血管の循環を改善し、下肢の難治性潰瘍を治して行きます。

治療のスケジュール

・一回の治療は2時間程です
・週2回の実施を基本になります
・中1日以上治療間隔を明けることになります
・12週間(計24回)を1クールとします

about DFPP

二重膜濾過血漿交換法による
血液浄化療法

二重膜濾過血漿交換法とは血液から病気の原因となっている様々な原因物質をろ過して取り除く治療法です。悪玉コレステロールや中性脂肪、炎症物質などを特殊なろ過膜を用いて血液から取り除くことで、様々な疾患に対しての治療ができるだけでなく、健康状態を改善することができます。

二重濾過血漿交換療法(DFPP)回路図

上の図のように体外へ循環させた血液を血漿分離器(一次濾過膜)で血球成分と血漿成分に分離し、分離した血漿を血漿成分分離器(二次濾過膜)で濾過します。
血漿成分分離器(二次濾過膜)で濾過された血漿成分の内、大きい分子量の病因物質(自己抗体・免疫複合体など)は除去し、アルブミンなど小さな分子量の物質は身体へと戻します。

二重膜濾過血漿交換法(DFPP)により期待される効果

1,病因物質の除去
  中性脂肪、コレステロール、炎症物質などをフィルターで除去します。
2,血管内皮機能の改善
  血管の弾力性を向上させ、血管が固くなるのを防ぎます。
3,血流の改善と梗塞の発生リスクを改善
  血管を詰まらせる血栓やプラークの発生リスクを抑えます。

二重膜濾過血漿交換法(DFPP)の適応疾患

二重膜濾過血漿交換法は以下の疾患に適応があります。

肝臓  急性肝不全・劇症肝炎・慢性C型肝炎ウイルスなど
膠原病 悪性関節リウマチ全身性エリテマトーデスなど
血液  多発性骨髄腫 ・マクログロブリン血症・血栓性血小板減少性紫斑病など
血管  閉塞性動脈硬化症など
神経  ギラン・バレー症候群・重症筋無力症・多発性硬化症など
皮膚  中毒性表皮壊死症・天疱瘡・類天疱瘡など
代謝  家族性高コレステロール血症など

多くの特殊な疾患への適応をもっていますが、当院では「家族性高コレステロール血症」を対象としています。

その他効果が期待できる病変等

脳梗塞や心筋梗塞など梗塞のリスクがある方(糖尿病・喫煙歴のある方)
脳梗塞や心筋梗塞の既往がある方
動脈硬化性変化があると診断された方
アトピー性疾患(難治性)
突発性難聴
加齢黄斑変性症

治療が適していない方

場合によっては治療をご遠慮いただくことがございます。

  • 血管が治療に適していないと判断される方
  • 治療への不安が極端に強い方
  • 一度の治療で治ってしまうことを期待する方
  • 治療によるリスクを理解することが難しい方

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flow of treatment

血液浄化療法の
治療の流れ

  1. 個室でリクライニングソファーに腰掛けてゆったりとした姿勢で施術を受けることができます。
  2. 通常2~3時間かかりますので、事前にお手洗いなどをお済ませください。
  3. 片方の腕の血管に針を留置し、採血を行います。
  4. 別の腕にも針を留置し、その留置した片方の針から血液を取り出し、浄化した後にもう一方の針から綺麗になった血液を身体に戻します。
  5. 施術中は喉が渇くことがありますが、お飲み物を飲むこともできます。
  6. 治療後は採血を行った後、その日のうちにお帰りいただくことが可能です。

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faq

血液浄化療法の
よくある質問

Q 痛くないですか?

腕に針を刺す時の痛みはありますが、それ以外に痛みはありません。

Q 治療中に飲食は出来ますか?

可能です。しかし、両方の腕に針が留置されていますので基本的に腕を曲げることが難しく、また脂質を多く含む飲食は治療の効果を損なう結果となりますので、出来るだけお茶やお水を少し飲む程度に留めて下さい。

Q 治療中にトイレに行けますか?

可能です。針を抜く必要はありませんが、一時的に治療を中断する必要があります。トイレは出来るだけ治療の直前にお済ませ下さい。

Q 治療の効果はどれほど持続しますか?

個人差はありますが、およそ1ヶ月前後は効果が持続すると考えられます。食事の内容や毎日の運動など、正しい生活習慣により治療効果を長く保つことが可能です。

Q 治療の頻度はどれくらいで行えば良いでしょうか?

通常は1ヶ月 ~ 3ヶ月に1回の頻度が良いと考えます。

Q 治療時間はどのくらいですか?

患者様の体調や血管の状態などにより治療時間は違ってきますが、およそ3~4時間が必要です。

Q 治療の後に注意することは何かありますか?

長時間のお風呂は湯あたりを起こし易いのでご注意下さい。また、針を刺した部分は強く擦らないようにして下さい。

イムノピュアによる血球成分除去療法のよくある質問

Q なぜ、潰瘍性大腸炎の治療で白血球を除去するのですか?

白血球は異物などから体を守る働きがありますが、これが異常を起こし、自分自身の組織を敵と誤認して攻撃し、炎症を起こします。炎症には、活性化された白血球が関与し、活性化された白血球から炎症に関わる様々な物質が出されます。潰瘍性大腸炎においても、大腸の炎症に活性化された白血球が関与しているため、これを除去する目的で血球成分除去療法を行います。

Q 潰瘍性大腸炎と診断されていれば、必ず血球成分除去療法ができますか?

必ず血球成分除去療法ができるわけではありません。治療の対象は「潰瘍性大腸炎の活動期における寛解導入を目的とし(中等症の難治例の患者)の治療に用いる」となっています。

Q 白血球が除去されても免疫力に影響ありませんか?

白血球は一時的に減少しますが、白血球は常に新しく骨髄から作られるので、治療終了後から半日ほどで正常の値まで戻ります。

Q 副作用はありますか?

副作用として、腹痛、悪心、嘔吐、気分不快、発熱、倦怠感、胸部圧迫、呼吸困難、頭重などみられることがありますが、いずれも一時的なもので、これら副作用の出現頻度も非常に低く、薬物療法と比べ重大な副作用はほとんどみられません。

Q 入院が必要ですか?

当院では外来通院のみの治療を行っています。入院が必要となる状態の場合は、退院されてから以後の治療を行うことになります。

Q 効果があるのは潰瘍性大腸炎だけですか?

血球成分除去療法として保険診療で認められている疾患はイムノピュアの場合、潰瘍性大腸炎だけです。しかし、保険診療の対象とはなりませんが、慢性の炎症に対しての効果が期待できることから、慢性関節リウマチやSLE(全身性エリテマトーデス)、原発性胆汁性肝硬変など、自己免疫の異常が関与している疾患に対して効果があると考えられます。

!このページのコンテンツは全て院長 医学博士 安部英彦の監修に基づいて執筆・制作されております。