「足のツリ」多彩な原因とその対策

突然、夜中に足がツリ、強烈な痛みで目が覚める。
これをお読みの方、全ての人が経験しているのではないかと思います。
寝込みを襲われるほど嫌なものはありません。
急に血圧は上がり、睡眠は妨げられます。
更に、痛い足を我慢しながら、もとに戻すほど辛いものはありません。
それも、毎日のように起こる場合もあります。
これは、俗に言う「こむら返り」です。
医学辞典に「こむら返り」の頁があり、muscle crampと英文が添えられています。
筋肉の痙攣という意味です。
これを、有痛性筋痙攣と呼ぶこともあります。
症状を引き起こす原因には、次のように様々なものが関わっています。

Ⅰ)筋肉や腱そのものの問題

腱紡錘の異常 – センサーの劣化
筋肉が極端に収縮や弛緩を起こさないよう、制御するセンサーが筋肉にあります。
筋紡錘というもので、筋肉が弛緩し過ぎて断裂しないように神経を介して脊髄へ情報を送り、脊髄からの神経伝達により筋肉が過剰に伸展した場合、筋肉が縮まるよう指令を出します。
筋肉が骨と付いている部分を腱と呼びます。
腱にも同じようにセンサーがあり、筋肉が過剰に収縮した場合、腱が断裂を起こさないように神経を介して脊髄へ情報を送り、脊髄からの神経伝達により筋肉へ緩めるように指令を出します。
これらのセンサーが上手に働いて調節しているわけですが、経年劣化などによりセンサーの働き、特に腱紡錘の感度が鈍くなると、筋肉が極度に収縮を続けてしまい足がツリ易くなります。

Ⅱ)筋肉や腱以外の問題

電解質のバランス不均衡 – 細胞の異常興奮を起こしやすくなる方向へ傾く環境の変化
筋肉の細胞や神経の細胞は、イオンバランス(カリウム・ナトリウム・カルシウム・マグネシウムなどのイオン)によって活動が始まり、収縮を起こしたり情報を伝えたりします。
通常、何らかの病気がない限り、イオンバランスは保たれた状態です。
しかし、眠っている時は水分の補給が長時間行われず、また体温調節のために目に見えない水分が皮膚から失われ、脱水に傾いています。
また、昼間活動しているときと比べて血行の循環が悪く、足などの抹消血管は細くなった状態です。
このような状態が長い時間続くと、イオンバランスに異常が起こるため、末梢神経の興奮が抑えられ難くなり、夜中に足がツリ易くなると考えられます。

要因となる主なものを挙げると
1:局所の冷却
2:循環不良
3:脱水
4:栄養障害
5:過度の運動や過度の安静
6:老化
7:様々な疾患(筋疾患・甲状腺疾患・副甲状腺疾患・人工透析・脊椎疾患など)
8:薬剤(スタチン系・カルシウム拮抗薬・βブロッカー・利尿剤など)
などです。

特に、年を重ねると次第に筋肉は衰えます。
また、年齢とともに抱える病気が増え、特に腰部脊柱管狭窄症などのような脊椎疾患は避けようがありません。
病気が増えると、それに伴い治療薬も増えてきます。
お薬も、それぞれに意味があって使われているので、勝手に止めることは出来ません。
そうなると自分で出来る対策は、一体何があるでしょう。
結局、要因になりそうなものに対策を打つことです。

1:局所の冷却 → レッグウォーマーなどで、下肢の保温を行う
2:循環不良 → 入念に下肢のストレッチやマッサージを施す
3:脱水 → こまめに、水分の補給を行う
4:栄養障害 → 偏りのない、バランスの良い食事をとる
5:過度の運動や過度の安静 → 適度な運動を心掛ける

何事もやり過ぎは禁物です。
ストレッチやマッサージの方法は、ご自分で出来る範囲のことを遣ってみましょう。
効果が期待できると思います。
7:8:に示されているような様々な疾患(筋疾患・甲状腺疾患・副甲状腺疾患・人工透析・脊椎疾患など)は自分でどうしようもありませんし、治療のための薬剤(脂質異常症で投与されるスタチン系・高血圧で投与されるカルシウム拮抗薬やβブロッカー・利尿剤など)は自分で調節することが出来ません。
また、6:の老化についても避けることが出来ません。
しかし取り敢えず、何とかならないかと薬を希望される患者様が多いことも事実です。
そのような場合、芍薬甘草湯という漢方薬をまず試して貰うようにしています。
効果が得られるかどうかは差があり、経験的に確実な効果は余り期待できないかも知れません。
症状が酷い場合は、筋弛緩作用を持った内服薬(広く頸腕症候群や肩関節周囲炎、腰痛症などに利用されている)エペリゾン塩酸塩やバクロフェンを使用することがあります。
どうしても症状が治らない場合は、一度ご相談下さい。
少なくとも下肢のストレッチやマッサージなど、ご自分で出来そうな対策は積極的にやってみることが大切です。

アクビは脳の冷却と覚醒をもたらす

今年の夏は本当に暑かった。
全国で観察された酷暑の記録は塗り替えられ、テレビでは毎日のように熱中症への注意が伝えられました。
しかし、「こんな暑さは、今まで経験したことがありません」と言えば嘘になります。
かなり昔の話になりますが、ある病院に勤務していた頃、危険なほど暑い医局で過ごした経験があります。
当時、勤務していた病院の医局は、改築のためプレハブ小屋。
真夏の暑い最中、プレハブ小屋で過ごした経験をお持ちの方は、余りいらっしゃらないだろうと思いますが、非常に暑いです。
無論エアコンはついているのですが、そもそも断熱性が低い。
折角、冷えた空気が出てきても、直ぐ暑くなります。
それよりも、外から薄い壁を通して伝わる熱で、部屋の壁側に居ようものなら、熱波が肌に張り付いて来るのです。
壁からジリジリ迫りくる熱気に堪えなくてはなりません。
そんな環境でも、診察を終え一息つくのは医局しかありません。
しかも厳しい暑さの中、更にエアコンを切る輩がいたのです。

都内某大学附属病院から毎日、交代で非常勤の先生が勤務していました。
大学病院での仕事は、忙しく大変です。
当直明けで更に勤務となれば、さぞかし辛いことでしょう。
医局でちょっと仮眠したくなるのは当然。
それは仕方ないことです。
しかし、困ったことに真夏の暑い最中、プレハブ小屋の中でエアコンを切って寝る。
これは、殆ど自殺行為です。
自ら熱中症で死を選ぶのは構いませんが、複数の人が利用する医局では大変迷惑します。
折角、エアコンをつけて出て行っても、帰ってきたらエアコン切って寝ているのです。
本当に、「このままだと死ぬぞ。」と思っても、寝ている人を起こす訳にも行きません。
疲れて眠っていることを知っていて、睡眠を妨げるのは無粋です。
結局、泣く泣くそっと耐え忍ぶしか選ぶ道がありませんでした。
白衣は脱いでも、それ以上脱いで裸になれば変質者扱いです。
しかし、仮に裸になったとしても、まだ暑いに違いありません。
何しろ、室温は32℃。
外気温と大差はないのです。
「そんなに暑いところが好きなら、医局の外で寝て欲しい。」
と言いたいところですが、それをお願いする訳にも行かず、鬱憤は募るばかりでした。

こんな環境のなかにいると、頭はボーとなりアクビが出始めます。
これはもう、熱中症の症状ではないのか。
真剣に生命の危機を感じました。

ところで、アクビはどうして出るのかご存知でしょうか。
疲れた時や眠いときにおこる動作ですが、不思議なことに詳しいメカニズムは良く分かっていないのです。
昔から、脳の酸素分圧が低下したときに起こる反射であると考えられていましたが、どうも酸素分圧の低下は観察されないため、最近はアクビの動作により脳の温度を下げているのではないかという考えが定着しています。

アクビの反射を司る中枢は、脳の視床下部にある室傍核という場所にあるのだそうです。
医学書院の医学大辞典にもアクビの頁があり、
視床下部室傍核(オキシトシン含有細胞を含む)が中枢と考えられている。視床下部室傍核から延髄の呼吸・循環中枢,唾液核,顔面神経核,脊髄などに投射し,呼吸・循環系,自律神経系,脊髄運動系の広汎な反応を引き起こす。
と記されています。
この視床下部の室傍核に刺激を与えた実験を、色々な研究者が行って来ました。

2010年頃の研究ですが、当時の東邦大学医学部生理学講座が行った研究によると、視床下部の室傍核にオレキシン(神経ペプチドのひとつで、摂食行動の制御因子であり、また覚醒の維持に重要な役割を担っていることが分かっています。因みに、比較的最近の睡眠導入剤には、オレキシン受容体拮抗薬という種類の薬が存在しています。)を投与してアクビを誘発し、この時同時に脳波をみると覚醒している時にみられる脳波が確認されるため、アクビによって脳は「覚醒」すると結論づけています。

実験を行った東邦大学医学部生理学講座の有田先生と鈴木先生は、アクビに「覚醒」と「警鐘」の二つの意味があると述べています。
確かに、眠たくなるとアクビが出るのは、脳を覚醒させる効果があるためだろうと思われます。
アクビをすると、少しスッキリしたような気がします。
人の話を聞いているときにアクビをするのは無礼だと思われますが、脳の覚醒効果から考えれば、一生懸命話しを聞こうとする態度だと褒められるべきなのかも知れません。
寧ろ、眠くなる話に問題があると言えるでしょう。
これを読んでいる方にも、既にアクビが出ているのではないかと心配しています。

もう一つの「警鐘」は、心筋梗塞や脳梗塞など循環器疾患でみられるアクビです。
脳の血流低下により起こるため、重大な事態への警告と考えられます。
同じ頃の研究ですが、ニューヨーク州立大学オネオンタ校のアンドリュー・ギャラップ准教授が行った実験では、ラットの脳に電極を埋め込み、脳の温度を測定したところ、温度が0.1度上昇するだけでアクビを誘発し、アクビをすると温度が0.4度低下したとの報告を行っています。
これからすると、脳のオーバーヒートを防ぐためアクビをしていると考えられるのです。
脳内にある温度が高くなった血液を脳の外へ排出し、相対的に低い温度の血液を脳へ送り込んでいるのではないかと説明されています。
脳へのダメージを防ぐために警鐘を鳴らし、同時にその対策として冷却を行っていると考えて良いのでしょう。
何れにせよ、視床下部室傍核に与えられた何らかの刺激(温度変化やグルタミン酸、神経ペプチドのオレキシンなど、最も有力な刺激は温度上昇)によってアクビを起こし、脳を冷却し、更に覚醒しようとすることは間違いないようです。

因みに、「欠伸」と書いてアクビと読みます。
もともと、「欠」だけでもアクビの意味があるそうです。
アクビをする時、手足を同時に伸ばす動作を「伸」で表し、一連の動作を「欠」と「伸」の二つ合わせて作られた当て字ではないかと考えられています。

このアクビに相当する動作は、殆どの動物で確認されるそうです。
アクビが非常に原始的な反応であると同時に、自らの生命を守るために必要とされている反応だということを表しています。

プレハブ小屋の医局で経験したアクビは、生命の危機に対する警鐘だったと考えられます。
もう少しで、危うく倒れるところでした。
「この怒りの捌け口はないものか。」と考え、怒りをノートに書き殴りました。
あまりにも汚い言葉ばかりなので、残念ながら公表できません。
その昔、昭和33年に、島倉千代子さんが歌ってヒットした「からたち日記」という歌謡曲がありました。
歌謡曲とは全く関係ありませんが、題名をもじって「腹立ち日記」という記録を残していた人物がいます。
釈明しておきますが、私ではありません。
役に立っていたかどうかは知りませんが、少なくともストレスの捌け口になっていたとは思われます。

茗荷の名前は週梨槃特と生姜から由来した

夏の定番は、枝豆と心太に冷奴。
暑い日は、冷たくノド越しの良い冷奴が最高です。
絹豆腐に薬味をたっぷり載せ、醤油を垂らしてツルリと。
薬味は葱や大葉、それに茗荷(ミョウガ)を添えれば、夏の香りが口から鼻へ抜けて行きます。
茗荷は料理の引き立て役として活躍しますが、どうして茗荷の名前は、このような字を書くのでしょうか。
ご存じの方も多いかと思いますが、落語の演目に茗荷のお話があるので、内容を掻い摘んでご紹介いたします。

お釈迦様の弟子で、半六(はんろく)さんと言う、大変物忘れの酷い方がいたそうです。
なにしろ、自分の名前まで忘れてしまう。
これをお釈迦様が哀れと思い、旗に大きく半六と書き、半六さんに背負わせました。
これなら、名前を忘れても大丈夫。
やがて、半六さんが亡くなり、半六さんのお墓から草が生えてきました。
その草を食べると、半六さんのように物忘れすると言われるようになったそうです。
そこで、この草を半六さんに因み、名を荷なうと書いて茗荷と呼ぶようになったというお話です。

実際、お釈迦様のお弟子の一人に、週梨槃特(しゅりはんどく)さんという大変物覚えの悪いお坊さんがいたそうです。
落語に登場する半六(はんろく)さんは、この週梨槃特(しゅりはんどく)さんの槃特(はんどく)から拝借した名前だと考えられます。
ウィキペディアで週梨槃特(しゅりはんどく)を検索すると、
パーリ語でチューラパンタカと発音するため、週梨槃特(しゅりはんどく)と漢字に当て字をしていると記されています。
パーリ語は、仏教の経典で主に使われている言語で、梵語(サンスクリット)に比べると俗語になるのだそうです。

週梨槃特(しゅりはんどく)さんは釈迦の弟子です。
最も頭の悪い人だったので愚路とも呼ばれたようですが、その名前の由来には、出生の経緯が関係しているようです。
週梨槃特(しゅりはんどく)さんの母親は裕福な家庭に育ちましたが、使用人と駆け落ちしました。
子を身籠り、お産のため一人で実家に帰る道中、出産してしまったのだそうです。
パーリ語のチューラパンタカのパンタカは路(みち)という意味があり、兄にあたる最初の子を摩訶槃特(大路)と名付け、弟にあたる後の子を周利槃特(小路)と名付けたということです。

兄の摩訶槃特(まかはんどく)さんは物覚えが良く、非常に優秀な人物でした。
兄は、物覚えの悪い弟の週梨槃特(しゅりはんどく)さんを釈迦の弟子に引き入れたものの、自分の名前も覚えられないほど頭が悪かったのです。
三年の修行で、ほんの僅かな経も覚えられなかった弟に対し、兄は遂に諦めて家に帰るよう言い渡しました。
これを嘆き悲しんでいた週梨槃特(しゅりはんどく)さんに、通りかかったお釈迦様がその理由を尋ねます。
愚かな自分を嘆いていたことを知ったお釈迦様は、
「自分が愚かだと知っていることは智者であり、自分の愚かさを知らない者が愚者なのです。」
と説いたそうです。
そして、ホウキを渡し「塵を払い、垢を除こう」といつも唱えながら、掃除をするように命じました。
素直な性格の週梨槃特(しゅりはんどく)さんは、それから毎日「塵を払い、垢を除こう」と一心に唱えながら掃除を続けたそうです。
何年もの月日が流れ、ある時ふと「塵を払い、垢を除こう」というのは単に見た目だけのことではなく、心の塵や垢を除くことなのであると気付くことになります。

余談ですが、赤塚不二夫先生の漫画、「天才バカボン」に登場する「レレレのおじさん」は週梨槃特(しゅりはんどく)さんがモデルになったのではないかとも言われています。

悟りを開いた週梨槃特(しゅりはんどく)さんがこの世を去った後、お墓の周りに生えてきた植物を週梨槃特(しゅりはんどく)さんの生まれ変わりとして、名札の名に草冠を、名札の荷物を持って廻っていたことから荷と書き、二つ合わせて茗荷(みょうが)と名付けたということです。

ウィキペディアによれば、茗荷は、ショウガ科ショウガ属の多年草で、学名をZingiber miogaというそうです。
つまり、生姜(しょうが)の仲間なのですね。
生姜と一緒に大陸から日本に持ち込まれ、その当時は香りの強い方を「兄香(せのか)」、弱いほうを「妹香(めのか)」と呼び、これが後に、ショウガ・ミョウガに転訛したのではないかとの説が有力であると記述されています。
これからすると、週梨槃特(しゅりはんどく)さんが茗荷の由来になったお話は、何やら怪しくなってしまいます。
私が思うに、ミョウガの発音はウィキペディアで記されているように「妹香(めのか)」から転訛したもの。
茗荷の文字は、週梨槃特(しゅりはんどく)さんのお話をもとに、後から付けられたもの。
ではなかろうかと思っています。

茗荷を食べると物忘れするなど言いますが、もちろん根拠などある訳がありません。
しかし私は一寸、茗荷を食べ過ぎたかも知れないと感じています。
「こんな話、知ってるから面白くない」と仰る方には、もっとお召し上がり下さいますようお薦め致します。

HSP70に焦点を合わせたハイパーサーミアの制癌効果

ハイパーサーミアによる癌への効果について、HSP(ヒートショックプロテイン)に焦点を合わせ、説明してみたいと思います。

HSP(ヒートショックプロテイン)と呼ばれる蛋白質はご存知かと思います。
HSP(熱ショック蛋白質)とは細胞がストレスに曝された時に発現し、細胞を保護する蛋白質で別名、ストレスタンパク質(Stress Protein)とも呼ばれています。
新しく作られた蛋白質に結合し、蛋白質の折り畳みや折り畳みの解除をコントロールする機能(分子シャペロン機能)があります。
HSP(ヒートショックプロテイン)には分子量の違いにより幾つもの種類が存在していますが、HSP70(70キロダルトンのヒートショックプロテイン)と呼ばれている蛋白は、NF-kB(エヌエフカッパービー)の活性化を阻止することが分かっています。1)

NF-κBは、ストレスや紫外線の刺激によって活性化され、免疫反応で重要な役割をもった転写因子の一つです。
炎症反応や細胞増殖、アポトーシスなどの生理現象に関与し、癌ではNF-κBの活性化が認められます。
細胞分裂の際に遺伝子をコピーする因子で、遺伝子の発現を調節する蛋白質なので、NF-κBの活性が高くなると癌は増殖し易くなり、浸潤や転移が起き易くなるのです。
また、癌細胞にあるNF-κBの働きが、抗癌剤の効力が低下する要因の一つではないかとも考えられています。
このことから、ハイパーサーミアによりHSP70が産生され、NF-kBの活性化が抑えられることにより、癌を制圧し易くなると同時に、抗癌剤の効力を維持する働きが期待できます。

もちろん、HSPの関連を考慮しなくとも、化学療法とハイパーサーミアの併用は、抗癌剤の効果を高めるメリットがあります。
体内に投与された抗癌剤の分布だけを考えた場合、ハイパーサーミアで癌の病巣を加温すると、癌の血管網は血流調整が出来ないので中心部にあたる血流は低下しますが、正常な血管が存在する癌の辺縁部では血流量が増えることになります。
周囲部の血流量が増えるということは、投与された抗癌剤が血流に乗り、効率よく癌の病巣周囲に届くことになる訳です。
身体全体の分布から考えてみると、相対的に抗癌剤は癌の周りに集まるため、抗癌剤がより効き易くなります。

また、ハイパーサーミアは免疫機序を介し、癌の治療効果を高めます。
細菌やウィルスなどの外敵が侵入した時や、癌など異常を発生した細胞を排除する身体の免疫機序はよく知られているように、樹状細胞やマクロファージ、B細胞、T細胞、NK細胞等が担当しています。
まず敵を捉え、攻撃目標を教える役割を担っている細胞が、樹状細胞やマクロファージなどの抗原提示細胞です。
樹状細胞は、ウィルスや細胞を取り込んで分解し、目印となる抗原を免疫担当細胞に伝達します。

癌の場合にも、癌の細胞膜に目印となる抗原があり、樹状細胞は癌細胞を取り込んで癌の抗原を拾い出し、標的となる癌をT細胞に抗原提示します。
T細胞は、ヘルパーT細胞というリンパ球からの刺激でキラーT細胞が活性化し、標的であると認識された癌細胞に攻撃を始めます。
更にまた、これとは別に、常に体内をパトロールし、異常な細胞があれば自動的に直ぐ攻撃する機能をもった、NK(ナチュラルキラー)細胞というリンパ球があります。

しかし、そのような免疫機序が働いているにも関わらず、なぜ癌は身体の中で成長し、命を蝕んで行くのでしょうか。
癌は、先ほど述べたような私達の免疫から逃れる能力を持っているからです。
癌の細胞には、それぞれに特有な癌抗原がMHC-Class1(Major Histocompatibility Complex; 主要組織適合性複合体)と共に癌の細胞膜に存在します。
MHCとは細胞表面にある糖タンパク分子で、細胞内のタンパク質の断片(ペプチド)を細胞表面に提示する働きがあります。
樹状細胞などに貪食された結果できるペプチドのことを、「抗原ペプチド」や「ペプチド抗原」と一般的に呼ばれますが、「抗原ペプチド」がMHCと結合して細胞表面に抗原提示されると、キラーT細胞がこれを認識して癌に攻撃を始めます。
キラーT細胞(細胞傷害性Tリンパ球)は、癌抗原を察知して癌細胞を攻撃しますが、癌抗原が隠れていると攻撃することが出来ません。
癌は、私達の免疫から察知されないよう、癌抗原を隠しているのです。

ここでもまた、ハイパーサーミアは免疫に働きかけ、癌への効果が期待出来ます。
ハイパーサーミアによって体内に作られたHSP(ヒートショックプロテイン)、特にHSP70は、癌抗原とMHC-Class1の複合体を作り、HSP70と癌抗原、およびMHC-Class1の複合体が癌細胞の目印となり、Tリンパ球への抗原提示をより強力に行うことが出来るようになるのです。2)

以上、今回はHSP70に焦点を合わせ、ハイパーサーミアの効果を述べてみました。

1)T.Tanaka,A.Shibazaki,R.Ono&T.Kaisho:Sci.Signal,7,ra119(2014)

2) Ito, A., Shinkai, M., Honda, H., Wakabayashi, T., Yoshida, J., and Kobayashi, T. 2001. Augmentation of MHC class I antigen presentation via heat shock protein expression by hyperthermia. Cancer Immunol. Immunother. 50: 515-522.

夏バテには鰻

今年の夏は暑い。

夏は暑いものと決まっているのに、毎年のように「今年の夏は」と、さも今年に限って暑いかのように嘆くのは何故でしょう。
周囲の同意を確認し共感を得たいためか、または何処にも持って行きようもない暑さへの不満を自分に無理やり納得させるためのものか。
どちらにせよ私達の生活が豊かになると共に環境汚染は進み、地球温暖化の影響で夏は異常に暑くなる。
今やレジ袋の有料化となって、その見返りが目の前に現れました。
レジ袋が無くなれば全ての環境汚染が解決する訳ではありませんが、自然との調和や共存が進んで行かなければ、私達が生きていく場所もなくなることになります。

難しいことをアレコレ考えても、余計に暑苦しいだけです。
取り敢えず、部屋の中にいる時くらいはエアコンの恩恵にあずかり、涼しく過ごしたいもの。
しかし悲しいことに、一歩でも外へ出れば蒸し暑い。
家の内と外へ出入りを繰り返せば、次第に気怠くなり、食欲が落ち、気がつけば、口に入れるものは冷たいものばかり。
また追い打ちをかけるように、身体が更に重くなります。
これが俗に良く言う、「夏バテ」。
「夏バテ」はその呼び方から真夏だけのものと思われがちですが、気温や湿度の変化は真夏だけに限らず、梅雨や初夏にも起こり易いのです。

その原因は、
1:自律神経の乱れによる消化器機能の低下
2:食生活の乱れによる栄養不足
3:軽い熱中症や脱水傾向
などにあります。

「夏バテ」は、もともと「夏負け」と呼ばれていました。
「暑さ負け」と呼ばれることもあるそうですが、現在は「夏バテ」が最もスタンダードです。
電子辞書の医学大辞典で「夏バテ」を検索してみると、「夏負け」へと照会されます。
「夏負け」の解説をみると

夏期の高温多湿のために起きる易疲労,倦怠,食欲低下,体重減少などといった不快な身体症状をいう。

と記述されています。
更にまた、その予防には、

十分な睡眠,休養,食事摂取などが予防によいとされ,土用の丑の日にウナギを食べる習慣もその1つである。

とあります。
医学用語には、「夏バテ」や「夏負け」という病名はありません。
しかし、医学大辞典に「夏負け」の解説が用意され、その予防に土用の丑の日に鰻と記されているではありませんか。

確かに、鰻はビタミン豊富な食材と言えます。
夏バテの疲労回復には欠くことが出来ないビタミンB1、B2、B6が含まれており、特筆すべきは豊富なビタミンAの含有量です。
でも、鰻の旬は秋から冬。
皆さんご存知の通り、
夏場に売れ行きが悪い鰻屋から、何か良い知恵がないかと相談され、「平賀源内」が考案した有名なキャッチコピー。

「本日丑の日」
土用の丑の日うなぎの日
食すれば夏負けすることなし

これが、多大な影響を与えたことは間違いありません。
お気付きのように、このキャッチコピーには「夏負け」となっています。
「夏バテ」は暑さで疲れ果てるという意味合いから生まれた言葉であろうと考えられますが、「夏負け」は夏を人格化・擬人化し、夏に対しての勝敗を表していますね。
矢張り、「夏バテ」の方が誰でも理解しやすい表現だと感じます。

しかし、誰が一体どうして鰻を食べるようになったのか疑問に思うことがあります。
ヌルヌルした黒い蛇のような生き物を最初に食べようとした人は、人並み外れた好奇心を持った人だったのか、はたまた切実な空腹がその行動を決心させたのか。
もし、鰻を生で食べようものなら、腹痛や下痢で苦しみます。

厚生労働省のホームページでは、
ウナギの新鮮な血液を大量に飲んだ場合、下痢、嘔吐、皮膚の発疹、チアノーゼ、無気力症、不整脈、衰弱、感覚異常、麻痺、呼吸困難が引き起こされ、死亡することもあるといわれている。
と記述されています。

鰻の血液に「イクチオヘモトキシン」という毒があるためですが、普通に考えて鰻の血液を大量に飲むという行動はあり得ませんので、呼吸困難を起こして死に至ることは先ずないでしょう。
誤ったとしても、腹痛や下痢止まりです。
しかし非常に稀なケースとして、鰻でアナフィラキシーショックを起こした症例もあるそうです。
これは、「イクチオヘモトキシン」の毒とは関係なく、鰻のコラーゲンがアレルゲンとなった鰻アレルギーだったという症例報告です。
鰻によるアレルギーの報告は非常に少ないそうなので、これも心配するには及ばないでしょう。
「イクチオヘモトキシン」の毒は60.5℃の加熱で、その効力をなくします。
それにしても、最初に加熱して食べようと考えた人は偉いと思う。
危ものには火を通す。
人間が培った経験と対策による行動ですが、鰻に火を通して食べたことにより、偉大な食文化を後世に残したと言っても過言ではないでしょう。

鰻と言えば蒲焼き。
蒲焼きの語源は諸説ありますが、昔は鰻をぶつ切りにして竹串に刺し、それを焼いて食べていたそうです。
見た目が蒲(がま)の穂に似ていたので、「がま焼き」と言われ、それが蒲焼きに変わって行ったという説が最も有力です。
鰻の美味しさは、油の乗った鰻の身にありますが、タレにも美味しさの秘密があると考えられます。
良く言われる「秘伝のタレ」や、「継ぎ足し継ぎ足しの味」はタレに何か特別な秘密を込めたもの?
何処のお店も基本的にタレは醤油や味醂(みりん)、水飴、調味料などで、内容は殆ど変わらないのでしょうが、その店ならではの味は何か特有な配合や隠し味が潜んでいるのかも知れません。
長年に渡り染み込んだ鰻の脂も、タレに旨味を加え、味に厚みを出しているのでしょう。
ご存知のように、和食はユネスコ世界文化遺産として認定されています。
日本に醤油があればこそ生まれた、奇跡とも言える食べ物かも知れません。

鰻の稚魚が少なくなり、次第に庶民の味から遠ざかっていますが、今年の稚魚は大漁という知らせを聞きました。
美味しい鰻を、いつもより少しお安く戴けるかも知れません。
それを楽しみに、今から「夏バテ」しないよう気を付けましょう。

心気症治療には症状の理解と苦しみの共感が必要

外来診療では、些細な症状が心配になって仕方ない患者様が、まれに来院されます。
そのような患者様の症状は多彩で、吐き気や胸やけ胃痛などの消化器症状、動悸や胸痛などの循環器症状、皮膚がチクチクやピリピリするなどの知覚の異常、熱感や発汗、倦怠感、ふらつき、不眠等など様々な訴えがあり、統一性や一貫性は余りみられません。
多彩な症状があるにもかかわらず、病院で調べても特別な器質的疾患が発見されることはなく、そのような症状が6ヶ月以上続いた場合に診断されます。

心気症という病気につい、その原因は良く分かっていませんが、ストレスや過労、または患者様のご家族、知人の病気などを契機として発症することがあります。
軽微な心身の不調から、何か生命に危険が及ぶような重い病気ではないかと強い恐怖や不安を感じてしまうのです。
あらゆる検査を受け、医師から異常がないと診断されてもそれを受け入れることができず、他の病院へ転々と受診することが多いのも特徴です。
疫学的にみて、病気の発症に性差や年齢差はないようです。
病気の位置づけとしては、身体表現性障害というカテゴリーに入ります。
このような病名は、他に器質的疾患が無いことを除外した上で診断されます。

心気症の定義は、重篤な身体疾患があるという頑固な確信やこだわりが半年以上持続し、そのために日常生活が障害され、医学的治療や検査を執拗に求めるもので、身体表現性障害の一つとされています。

抗うつ薬や安定剤の投与が、一般的な治療方法となります。
症状に囚われることなく、何か嬉しいこと楽しいことを計画したり、夢中になることに参加したりして、日々の生活を充実したものにすることが大切であり、患者様にはそのような指導が行われます。
ご自分の症状と付き合いながら、生活していくことが必要です。
治療としては抗うつ薬や抗不安薬などが用いられますが、ご本人が薬に対して不信感を持っていたり、服薬により体調不良を訴えることが良くみられます。

実際に、当院で経験した患者様との遣り取りをご紹介させて頂きます。

「センセ〜、お腹が張って苦し〜」。
何度も同じ訴えで 来院される70代の女性の患者様です。
「お腹は空くの。空くから全部食べちゃう。その後、お薬飲んだらお腹が張って痛いの。」
どうも薬が合わない、と言うことらしいのです。
近くのクリニックで胃カメラを受け、異常なしの診断を頂いたようです。
一応、制酸剤を処方されています。
それを飲むと、お腹が張って痛くなるのだそうです。

何か他の薬はないかと、別のクリニックにも受診。
「そこの先生が、僕も飲んでいるからと良いよって言うので貰って来たんです。」その薬がまた合わない。
「薬を貰ったその日は何となく良いけど、翌日からお腹が張って調子が悪くなってくるの。」だそうです。
これまでいろんな薬をもらったようですが、全て合わないと仰います。
「世の中には、沢山の薬があります。しかし、どの薬も合わないと思いますよ。」
とお話を致しました。
「私も気分だと思う。もともと心気症だから・・。」

昔から精神科へ通院しているようで、精神科から心気症の診断を受けています。
精神科から安定剤を処方され、次第に良くなった経験があるとのお話です。
それなら同じ薬を飲めば良いと思うが、ご本人は薬に頼りたくないという気持ちがとても強いのです。
症状は辛いが、薬は飲みたくない。
この矛盾が、悪化した原因の一つかも知れません。
「今必要なことは、精神科への受診だと思います。」と申し上げると、
「精神科の先生は今、夏休みでいないの。だから先生、何とかして下さい。」
「薬が嫌なら、日常生活の過ごし方を工夫し、自分に合った方法を見つけて下さい。」
そして、お腹のマッサージやストレッチを指導しました。

お具合から察すると、胃や腸のガスが腸を圧迫している可能性も考えられます。
「排便はどうですか。」と伺うと
「便がちょっとずつ何回も出るの。」だそうです。
しかし、お腹を診察しても異常はなく、ガスが溜まった様子もありません。
腸の音も普通で、消化管の動きは良好です。
取り敢えず、マッサージやストレッチをご自宅で実行して貰いました。
すると「ガスが少し出れば、お腹が一寸楽になるみたい。」
それでも「食べるのは食べるけど、食べたら後でお腹がキュッと痛くなる。」そうです。

そしてまた、ある日のこと
「夏休みに、家族が皆で出かけようって言うんです。行った先が山の中だから、もし何かあったら心配で・・。どうしましょう。」と仰しゃいます。
「それは良いことです。気分転換になるので、是非行ってください。」
とお答えしました。
悶々と病気と向き合うより、ご家族皆さんで楽しくお話をして過ごす方が、どれほど精神的に良いか分かりません。
しかし、ご旅行から帰って来ても症状は変わらず。
お腹の症状は、それ以後も繰り返し続きました。

このように心気症の患者様は、症状に対しての心配が強く、医師は忍耐強い対応が要求されることが多いことも事実です。
また、医療機関を転々とする傾向を起こしやすいので、継続した治療が難しくなるのも特徴の一つと言えます。
時間をかけながら、お話に耳を傾け、患者様の症状を受け入れ、病気への恐怖を理解し、その苦しみに共感することが大切だと思います。

実際にあった不思議な体験は磁覚の覚醒によるものか

世の中に、奇妙な体験話は掃いて捨てるほどあります。
誰でも一つは、奇妙な体験をしている筈です。
何故なのか、今考えても分からない奇妙な経験が私にもあります。

私がまだ小さい頃、家の手伝いをして貰っていたお婆さんがいました。
お婆さんは、遠い縁故にあたり、小さい私の面倒を良くみて貰っていました。
私は中学生になると、片田舎にある実家を出て、実家から数百キロほど離れた他県の市内に下宿を始めました。
小さい頃、お世話になっていたお婆ちゃんは、その頃すでに実家の手伝いを止め、実家から百キロほど離れた北九州市内にある自分の家に戻っていました。
その家には、私が小学生低学年の頃、たった一度だけ連れて行って貰ったことがあります。
中学生の夏休み、何故か不意に一人で行ってみようと思いたちました。
田舎とは言え、百万都市(現在96万)の北九州市です。
一度行ったことはあるものの、住所は小倉区までしか知りません。
加えて、方向音痴です。
辺りの様子は、何となく薄っすらとした記憶が残っていましたが、同じような風景は世の中に沢山あります。
たったそれだけの情報で、行き着く訳がありません。
しかし、どうしたことかフラフラと道中分からないまま、目的地まで辿り着いてしまったのです。
確かこんな処だったような気がするなと、暗い路地の奥へ。
一寸、暗くて怖かったのですが、恐る恐る入って行き、何度か「すみませ~ん、誰かいますか~。」と叫んでみました。
すると、暗い家の中から、お婆ちゃんがゆっくりと出て来るではありませんか。
随分と年老いて身体が曲がり、脚が不自由そうに見えました。
この時、既に80代だったと思います。
私が来たことを、大変喜んでくれました。
しかし折角、遠い処まで来たにもかかわらず、何故か長居することなく帰りました。

それから間もなく、お婆ちゃんの訃報を耳にしました。
「死ぬ前、呼ばれたのだろうか。」
「もしかすると、これは虫の知らせか」。
その時ふと、自分にはそのように感じました。
亡くなる直前、会いに行こうと思い立ったのは、単に偶然かも知れません。
しかし、住所も知らない場所へ迷うことなく一人で行くことが出来たのは、偶然では説明できないほど不思議な話です。
世の中には、理屈では説明出来ない、何か目に見えない力が働いていると感じるときが稀にあります。

因みに「虫の知らせ」は、道教の教えに由来するそうです。
道教では、戒めとして、身体の中に3匹の虫「三尸(サンシと言うそうです)」が棲んでいるとの教えがあります。
年に6回(およそ60日に1回)の頻度でおとずれる庚申の日の夜、三尸の虫は人が眠っている隙きをみて身体から抜け出し、上帝に罪を告げるのだそうです
更に、その罪の重さによって、告げ口された人の命が縮まって仕舞うというから、怖くて庚申の夜は眠れません。
広辞苑によると庚申の夜、仏家では帝釈天や青面金剛を祀り、新道では猿田彦を祀って徹夜する習慣を庚申待と言い、平安時代に伝わり、江戸時代に流行ったと記載されています。
平安時代には、貴族が庚申の日に寝ないで一晩中起きて過ごすという習慣があったようです。
江戸時代になると庶民の間でもこれが流行し、落語にも取り上げられています。
上方落語に「宿屋仇」と言う演目があり、5代目の古今亭志ん生さんは、これを「庚申待」という演目として披露していたようです。
落語の演目になるほど「庚申待」の風習は、江戸時代に定着していたのでしょう。
「腹の虫」や「虫が好かない」など、日常で良く用いられる表現は、身体の中に虫がいることを前提として生まれたのではないかと考えられます。
「虫の知らせ」も同じ理屈で、説明がつかない現象の理由を、身体の中にいる虫に押し付け、無理やり自分を納得させているのです。

同じようなことを表現する言葉に、第六感というものがあります。
第六感は視覚や聴覚、嗅覚、味覚、触覚の五感以外の知覚で、予知能力や霊感など、理屈では説明できない能力として扱われます。
一般的に、直感と同じ意味で用いられることが多く、その人の経験的な積み重ねから得られた予測能力ではないかと私は考えます。
しかし、鳥や蜂などと同じように、磁気(地磁気)を感じる能力が人にもあるのではないかという研究結果が、2019年3月、東京大学やカルフォルニア工科大学などの共同研究チームからeNeuroという科学雑誌に発表されています。
「地磁気と同等の強度で方向が変化する人工的な磁気刺激をヒトに与えると、その方向の変化を識別し、脳波が異なる反応を示した」という研究結果です。
地球のS極N極を取り巻く地磁気を遮断した室内で、様々な人種で異なる年齢の被験者を数十人集め、地磁気と同じ程度の強さの磁気で刺激する実験を行っています。
その結果、磁気の向きに応じ、脳波が無意識に異なった反応を示したということです。
このことから、人間は地磁気を漠然と感じる能力があるのではないかと考察しています。

もし、磁覚というものが存在するとすれば、これが第六感ということになります。
中学生の時に「虫の知らせ」でフラフラ遠く離れた場所に行き着いたのは、突如として磁覚が覚醒し、強力なナビゲーション機能が発揮された可能性も考えられるでしょう。

超常現象の肯定論者でも、否定論者でもありません。
実際にあった不思議な経験ですが、世の中には未だ良く解っていないことが沢山あるのだろうと思っています。

COVID-19による死亡率の性差とエストロゲンは関係するか

パンデミックとなった、今回の新型コロナウイルス感染症。
今のところ日本では、イタリアやアメリカで報告されている大惨事はみられません。
余談は許しませんが、出来るだけ早く治まることを祈るばかりです。

これまで、中国やイタリアなどのデータから判明している死亡率の男女差について、非常に興味深い点があります。
今までに海外で報告されている死亡率の男女差は、男性の方が高いのです。
中国武漢市での統計では、男性の死亡率が2。8%に対し、女性は1.7%と男性に比べて低かったようですし、イタリアでも、男性は10.6%であったのに対し、女性は6%と、同様に女性の方が低かったのです。
同様な現象は、他のコロナウイルスが原因となったSARS(重症急性呼吸器症候群)やMERS(中東呼吸器症候群)でも男性の死亡率が高かったことが分かっています。
その一因と考えられているのが、女性ホルモン(エストロゲン)です。

アメリカ合衆国アイオワ大学のマウスを使った実験で、コロナウイルスに感染させた結果、人間の場合と同じように雄の死亡率が高かったそうです。
次に、雌の卵巣を取り出した後、コロナウイルスに感染させてみた結果、雌の死亡率が大幅に上昇したということです。
このことから、エストロゲンが持っている何らかの作用で、コロナウイルス感染への効果をもたらしたのではないかと考えることが出来ます。

そこで、大豆に含まれるイソフラボンの効果を利用できないかと考えるのは、自然の流れかも知れません。
大豆に含まれるイソフラボンは、分子構造が女性ホルモンの「エストロゲン」に似ているため「植物エストロゲン」と呼ばれています。
納豆やみそ汁などの大豆食品を毎日摂っていれば、新型コロナウイルスの感染リスクを少しでも下げることが出来るのではないかと期待してしまいます。
しかし、腸内にエクオール産生菌を持たない人は、イソフラボンによるエストロゲン(女性ホルモン)様の作用は期待出来ません。
また、エクオール産生菌を持っている人は、30~60%だと考えられており、エクオール産生能力にも相当な個体差があるといわれています。
しかも、一体どの程度摂取すれば一定の効果が得られるのか、全く分かりません。
大量に大豆食品を摂取したとしても、感染リスクが下がることを期待するのは無理でしょう。

もう一つ性差に関連し、興味深い話があります。
新型コロナウイルスが人間の細胞内に感染する場合、アンジオテンシン変換酵素2(ACE2)という酵素を利用して侵入しているそうです。
アンジオテンシン変換酵素2(ACE2)という酵素は、人間の身体に広く分布していますが、肺や心臓、消化管などに多く、また精巣にも比較的多く存在するそうです。
しかし、卵巣にはアンジオテンシン変換酵素2(ACE2)という酵素がほとんど存在していないのだそうです。
このことから考えると、女性ホルモンを主に作り出す卵巣へは、新型コロナウイルスの感染を受け難いことになります。
当然のことですが、新型コロナウイルスの感染経路として考えられる部位は気道です。
卵巣への感染は考えられませんが、死亡率の性差という視点から比較してみると、精巣と卵巣にはアンジオテンシン変換酵素2(ACE2)酵素の分布差があるという事実の妙を感じます。

女性ホルモンには、まだ解明されていない何らかの働きがあり、新型コロナウイルス感染による死亡率の性差を生んでいる可能性を完全に否定することは出来ないかも知れません。
しかし、男性は圧倒的に喫煙率が高いという事実の方が、死亡率に男女差ができる最大の原因になっていることは間違いないでしょう。
女性の方が男性より新型コロナウイルス感染による死亡率が低い理由を、無理にエストロゲンと関連させて判断するのは多少、飛躍し過ぎた考え方だろうと思います。

BCGは新型コロナウイルス感染症の予防になるだろうか

BCGと新型コロナウイルス感染症の予防効果について

患者様から戴いたご質問へ、
忽那賢志(国立国際医療研究センター国際感染症センター)先生の見解を拝借し、お答えしたいと思います。

先ず最初に、簡単なBCGの説明から
BCGは結核を予防するワクチンの通称で、牛型結核菌を弱らせ、ワクチンにした生ワクチンです。日本では、生後1年の間(通常生後5カ月から8カ月の間)に接種することになっています。生ワクチンですので、免疫が弱っている方や妊婦さんは接種することができません。

これまで、結核の予防以外にも予防効果も調査されており、小児期の呼吸器感染症や敗血症を減らす効果があることや、低出生体重児の死亡率を減らす効果が認められるという主旨の論文が発表されているようです。

結核以外の感染症に対し、なぜ予防効果があるのか十分に解明されていませんが、BCGを接種することにより、白血球の成分の一つである単球に働きかけて自然免疫を強化するゲノム変化を起こすことや、炎症促進性サイトカインの分泌、特にIL-1Bを増加させることが影響しているのではないかと考えられています。

さて、新型コロナウイルス感染の流行分布からみると、
BCGを定期接種している国(日本、中国、韓国、香港、シンガポールなど)では新型コロナウイルスの感染者が比較的少なく、それに対し、定期接種を採用していない国(イタリア、スペイン、米国、フランス、英国)では新型コロナウイルス感染者が多いとも思われます。

しかしながら、日本ワクチン学会では以下のような見解です。
「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対する BCG ワクチンの効果に関する見解【2020.4.3 Ver.2】」

「新型コロナウイルスによる感染症に対してBCGワクチンが有効ではないか」という仮説は、いまだその真偽が科学的に確認されたものではなく、現時点では否定も肯定も、もちろん推奨もされない。

BCGワクチン接種の効能・効果は「結核予防」であり、新型コロナウイルス感染症の発症および重症化の予防を目的とはしていない。また、主たる対象は乳幼児であり、高齢者への接種に関わる知見は十分とは言えない。

本来の適応と対象に合致しない接種が増大する結果、定期接種としての乳児へのBCGワクチンの安定供給が影響を受ける事態は避けなければならない。

現時点でCOVID-19を予防する目的でBCGを接種することは推奨されません。

結論
BCG接種と新型コロナウイルス感染症の因果関係は全く分かっていないため、
新型コロナウイルス感染症の予防目的でBCG接種を行うことは、現時点において意味がないと考えます。

「元の木阿弥」の由来 木阿弥について思ったこと

「元の木阿弥」の謂れをご存知でしょうか。
木阿弥とは、人の名前だそうです。
天文19年(1550年)ごろ、戦国時代のお話です。
奈良、大和郡山の城主だった筒井順昭(つついじゅんしょう)は、息子の順慶(じゅんけい)がまだ幼かった時に病死しました。
幼かった息子を庇うため、逝去を隠すように遺言をしていました。
順昭の替え玉として、声が似ていた木阿弥という盲人の僧を招聘し、寝室に寝かせて訪問者を欺いていたそうです。
順慶が成人した後、順昭の逝去を公表しましたが、木阿弥は用済みとなってしまい、ニセ城主の生活から元の身分に戻ったというお話です。

これは、史実かどうか不明ですので、決して鵜呑みにしないようにお願いします。
ここでは、木阿弥が実在し、隠密に仕事を遂行したと仮に設定して、木阿弥の立場に近づいて、感じたことを述べています。

努力が実らず、振り出しへ戻る意味で良く使われている故事成句ですが、図らずも木阿弥は後世へ名を残すことになりました。
木阿弥は、どのような思いで城主に成り済ましたのでしょうか。
人に利用され、権力のもとで他人に成り済まし、刺客に怯え、一歩間違えれば敵はもとより味方から殺されるかも知れない。
厳重な健康管理と生活の制限を受け、家族とも合うことは禁じられていたに違いありません。
城主の遺言に従わなければ、更にまた違った意味で、身の危険に晒されることになるでしょう。
しかし、当時の状況から想像すると、命令に従わざるを得ません。

ただ単に、城主と声が似ていたというだけの理由で、木阿弥に白羽の矢が立ったことになります。
若し、何かの巡り合わせで依頼を受けたとしても、その役を演じるだけの才能と度胸がなければ、大役を成し遂げることは出来ません。
少なくとも、木阿弥は大役を演じ切った訳です。
良いか悪いかは別にして、自分の意思とは関係なく、図らずも有名になってしまいました。
意思に関わらず名を残す者、対して大多数の名もなき凡人との差は、一体どのようなものがあるのでしょうか。

もちろん、人から期待を受けるためには、何か魅力がなければなりません。
もしかすると自分の魅力は、気が付かないだけで、人から見れば価値があるものを、人それぞれ持っている可能性があります。
木阿弥の声が、眞にそれです。
自分には当たり前だと思えるものが、一部の人にだけ価値を持っていた訳です。

しかし、人から何かの価値を見出して貰ったとしても、更にもう一つの条件があります。
依頼を受け入れるだけの、懐が自分にあるか否かの違いです。
誰でも、危険から逃れようとします。
しかし、木阿弥の場合、逃れようとしても逃れない状態であったことは違いありません。
ここでは一般論になりますが、要は「リスクをどこまで背負うことが出来るか」という許容範囲を指しています。

言うまでもなく、リスクが無いものは見返りがなく、逆に大きな期待には、大抵の場合、大きなリスクが付き纏うものです。
そのようなリスクに対し、自分が許容する閾値を何処に置いているかの違いだと言えるでしょう。
自分の身に危険が及ぶような依頼を引き受ける人は、先ずいません。
若し居るとすれば、かなり危険に対して鈍感な人でしょう。
物事を成し遂げる人には、発想力や注意力、行動力、忍耐力などが必要です。
しかし、鈍感という資質は、努力しても決して得ることが出来ません。
そのような意味からすると、「天然の鈍感さ」という才能が、最も重要なのかも知れません。

役目を終えた木阿弥は、故郷で家族と共に安楽な余生を過ごしたと言われています。
戦国時代、城主の「影武者」を立てることは良くある話です。
この説話は嘘かも知れませんが、木阿弥を影武者として起用したという話は、何となく納得し易い理由になるかも知れません。
しかし、一般的に政治的な陰謀や策略に翻弄された人の末路は、闇に葬られて仕舞うものです。

役割を終えた木阿弥が、若し生きていなければ「元の木阿弥」という故事成句も無かったことになります。
元の生活に戻れたということは、仮にそれが史実であれば、手厚く抱えられに違いありません。

アベノミクスで築いた虚構の繁栄は、新コロナウイルス感染症という思わぬ伏兵で、見事に崩れ落ちました。
「元の木阿弥」レベルではなく、これから世界的な大恐慌へと更に転落して行くシナリオが容易に想像できます。

ウイルスという目に見えない敵は、別け隔てのない試練です。
この局面を、乗り切るために私達は何をすべきでしょうか。
盲目の木阿弥が与えられた役を果たしたように、私達は自身に与えられた役を今は唯、直向きに務めて行くのみであろうと思っています。

実際に木阿弥が居たかどうかは分かりませんが、木阿弥の存在を前提に、思いを馳せてみました。

ハイパーサーミアの副作用について

電磁波温熱療法の副作用について、少し述べておきたいと思います。
電磁波温熱療法(ハイパーサーミア)でみられる副作用は、化学療法や放射線治療などの標準治療と比べ、非常に軽微です。
生活に影響するような、重い副作用は有り得ないと考えて良いでしょう。

敢えて副作用を挙げるとすれば、先ず火傷です。
火傷をするとしても、電極を当てていた皮膚の一部が赤くなり、少しヒリヒリするようなもので、そのまま放置していても、2~3日で良くなる程度(Ⅰ度の熱傷)が殆どです。
当院では、それ以上に重度の火傷を経験したことがありません。
火傷を起こして仕舞う最も多い原因は、身体と電極の間隙です。
電極と皮膚との間に隙間があると、そこにある空気に遮られて電磁波が乱反射し、そこがチクチクとした痛みを感じ、その部分の皮膚が赤くなったりします。
そのため、成るべく電極と身体が圧着させた方が良いのです。
多少、苦しいと感じるかも知れませんが、圧迫することが可能な患者様には、出来るだけ電極を圧着するようにしています。
電極で押さえることで、副作用を軽減することが出来ます。
背側と比べ、腹側の方が人体表面の皺や凹凸が多く、ご自分の体重で電極へ圧着させることを目的とし、うつ伏せの姿勢で行います。
こうすることで、火傷も起こし難くなる筈です。
更に、エコーゼリーを身体と電極の間に塗り込んで、隙間が出来ないようにし、痛みを感じやすい部分には、テープを貼り保護すると共に、皮膚の皺や弛みがある部分を伸ばすように貼り、成るべく症状が出ないような工夫を加えます。
また、火傷を避けるためにも、施行の最中に何か異常を感じることがあれば直ぐ、係の者へ伝えるようにお願いしています。

その他、注意すべき点は脱水です。
出力が上がれば上がるほど、身体から発生する熱は多くなります。
当然、体温は上昇し、発汗します。
発汗が多くなれば、体液が奪われ、脱水へ傾く訳です。
そのため、脱水に陥ることがないように、予め水分の補給をお願いしています。
一度に大量の水分を摂るよりも、少量の水分をこまめに摂るようにした方が良いと思います。
治療を受けている最中にも、水分を摂ることが可能です。
手助けが必要な場合には、係の者へ伝えて頂ければ、お手伝いを致します。
終了した後、治療中に余り汗が出なかったと感じても、必ず水分を補給するようにお願いしています。

また、一時的に熱のため、皮下脂肪が溶け、治療後に皮下脂肪の塊が皮膚の上から触ることがあります。
コロコロした塊が皮膚の上から触れるので、驚くことがあります。
しかし、治療を受けた後から起こったという明確な因果関係があり、触れるとヒリッとした痛みを感じるので、直ぐに判断することが出来るでしょう。
皮膚への転移で生じた腫瘍を触れたとしても、そのような痛みを感じることはありません。
大体、10日から2週間ほどで、脂肪の塊は溶け、身体の機能に異常は残しません。
このような現象が起こる場合があると知らなければ、驚くことがあります。
滅多に経験しませんが、このようなことが起こる場合もあると知っていれば、慌てることがないでしょう。

その他、起こり易い症状は、倦怠感です。
一般的には、湯中りと同じ状態で、遅くとも1日から2日で治ります。
筋肉痛も稀に起こすことがあります。
これらの症状は、いずれも軽微なものであり、通常生活への支障はあり得ません。
最初に申し上げましたが、ハイパーサーミアを受けるにあたり、重大な副作用を考える必要はないでしょう。

但し、ご高齢の方や梗塞や出血などの血管障害をお持ちの方、心不全や呼吸不全の既往がある方など、リスクをお持ちの場合には十分な注意が必要です。
そのため、治療を行う場合には患者様の状態を考慮し、経験的な出力の調整が不可欠となります。

標準治療とハイパーサーミアを受けるタイミング

癌の標準治療と同時に、ハイパーサーミアを受ける際、そのタイミングはいつが良いのでしょう。
化学療法や放射線治療の前が良いのか、後が良いのか。
いつ受けるべきかと、患者様から良くご質問を受けます。
同時に行う事が出来ればより良いでしょうと申し上げますが、治療を受ける医療機関が違う場合は些か困難です。
実際の診療から感じた自身の意見を交え、少しだけ述べてみたいと思います。

ハイパーサーミアを受けるタイミングについては、標準治療の前後それぞれに違ったメリットがあります。

1:標準治療前
p53蛋白と呼ばれる、がん抑制遺伝子の活性化や耐性化蛋白の半減期を考えると、標準治療を予定している日より前3日の間にハイパーサーミアを行うことで、化学療法や放射線治療の増感作用が期待できます。

2:標準治療当日
放射線治療では、がん細胞を破壊するための活性酸素が必要です。
当日にハイパーサーミアを行った場合、がん細胞の攻撃に必要な酸素分子を供給する作用があると考えられます。
また、化学療法に対しては、薬物の分配システムに対して効果が期待できます。

3:標準治療翌日
放射線治療や白金製剤投与などの化学療法により、がん細胞はDNA損傷を起こします。
がん細胞では、障害を修復するためにDNA修復酵素が働き始める訳ですが、酵素が機能を保つためには、一定の至適温度が必要です。
DNA修復酵素が働いている時、酵素が働く至適温度から外れてくると、上手く機能しなくなり、がん細胞はアポトーシス(プログラムされた自然死)を起こすことになります。

治療の際に最も大切な要素は、患者様の体調だろうと思います。
個体差はあるものの、標準治療には少なからず副作用が出ることを考えなくてはなりません。
抗がん剤の副作用が酷い方は、身動きが出来ないほど全身が重く、何も口に出来ないほど食欲がなくなることがあります。
抗がん剤の種類によっては、全身に皮膚炎を起こし、手足が腫れたり、ヒリヒリする痛みを起こしたり、一日中トイレから出られない程酷い下痢が続くこともあります。
副作用に苦しみながらハイパーサーミアを受ける事自体、心身ともにストレスとなり、治療を続けることが困難でしょう。

化学療法のスケジュールは、抗癌剤の選択や投与法により異なりますが、休薬期間が設けられます。
投薬によって起った酷い副作用も、休薬することにより徐々に改善して行く筈です。
副作用が重い方の場合、ハイパーサーミアを予定するとすれば、抗癌剤投与の直前に行う方がより確実ではないかと思います。

また、副作用が余り現れない方もいらっしゃいます。
そのような方の場合、基本的に週1回の割合でハイパーサーミアを受け、更に化学療法の予定がある時には、投与日になるべく近い日を選択し、予定を組むようにお薦めしています。

癌に対するハイパーサーミアの抑制機序

一般的に、35℃位の低体温が続いていると、免疫力が低下すると考えられています。
NK細胞や細胞傷害性T細胞の機能も低下してしまうため、癌になり易い状態になるのです。
人間の身体には、毎日5000~6000個ほどの癌細胞が発生しています。
しかし、全ての人が癌にならないのはNK細胞が巡回し、直接癌細胞を攻撃し駆除しているからだと言われています。
低体温やストレスなどで免疫力が低下すると、癌の発生率は上昇すると同時に、癌細胞を駆除するNK細胞の能力も低下して行くので、癌が育ち易くなるのです。

古代ギリシャの医師、ヒポクラテス(紀元前460~370年)も「癌は熱に弱い」と記しています。
昔から、皮膚の表面に現れる皮膚癌や乳癌には、発熱によって縮小したり消えて無くなったりする報告が数多くあるのです。
外部温度環境と癌細胞の生存率について調査した研究が過去に行われていますが、その結果によると、環境温度が1℃上昇するだけで癌細胞の生存率は変化し、42℃以上1時間の加温で癌細胞の生存率は100分の1まで低下することが分かっています。

このような基礎研究を踏まえ、癌組織内の温度を上げる治療(ハイパーサーミア)が行われるようになりました。
以前から行われてきた研究結果より、ハイパーサーミアの効果には、次のような理由が挙げられています。

1:腫瘍組織内では血流が少ないところで熱がうっ滞するため、腫瘍組織の温度が正常組織より上昇しやすく、癌細胞に直接的なダメージを与えることができる。

2:血流の悪い腫瘍組織を加温すると、癌細胞に抗癌剤が届きやすくなる。

3:細胞分裂が盛んな癌ほど抗癌剤が与える癌細胞へのダメージが強く、抗癌剤により癌細胞がDNA障害を受けた後、DNAの修復のためDNA修復酵素が働くが、熱があるとDNA修復酵素の作用が低下して癌細胞が死に至りやすくなる。

4:腫瘍組織の低酸素状態で、癌細胞は嫌気性解糖によりエネルギーを生み出しており、結果として乳酸が腫瘍細胞内に蓄積し、酸性状態になっているため、熱による癌細胞への殺傷能力が高くなる。

時代が進むに従い、更に研究が進みます。
新たに解明されてきた分子レベルの発見から、ハイパーサーミアが癌に対しての効果を発揮する理由について、これまでになかった機序が登場してきました。

1:マイルドハイパーサーミア(39~40℃までの加温)によって、腫瘍組織内の血流が増加し、腫瘍組織内部の酸素分圧が増加します。
これにより、低酸素誘導因子(HIF-1α)の減少が起こり、化学療法や放射線治療に対しての感受性が改善する効果が期待できます。

2:43℃以上の高い温度で行う電磁波温熱療法では、正常組織の細動脈が拡張するため、正常組織の血流が増加します。
その影響を受け、逆に腫瘍組織内の血流はスティール現象によって低下し、腫瘍組織内の酸性化や、赤血球や血小板の凝集、腫瘍血管内皮の熱障害を発生します。

3:癌細胞に対して腫瘍免疫の増強、例えばHSP70(ヒートショックプロテインの一種)の増加、リンパ球の免疫監査力の増強、インターフェロンγの産生などがみられます。

4:RNA遺伝子転写因子であるNF-κB活性化の抑制がみられます。

5:癌細胞中での低酸素誘導因子が減少し、その結果、P糖蛋白減少や多剤耐性遺伝子蛋白減少、CREBなど生存シグナルの減少、CD95細胞死シグナル(Fasシグナル)の増強などが関与して、抗がん剤や放射線に対して癌細胞毒性が高くなります。

6:腫瘍組織内の血流増加によって薬物分配が改善し、抗癌剤が腫瘍組織に届き易くなります。

7:誘導型一酸化窒素ガスにより、腫瘍組織内に出来た細胞傷害性高濃度の一酸化窒素ガスを発生する機序が働きます。

8:低酸素条件下、嫌気的解糖系でエネルギーを産生して生きている酸性状態にある癌細胞が熱の影響で死に至り易くなります。

また、免疫に関わる効果についても、次のようなことが考えられています。
39~42℃程度の軽い電磁波温熱療法(マイルドハイパーサーミア)を行うことにより、免疫系の活性化をもたらし、癌への攻撃が始まるのです。
理由の一つとして、NK細胞の表面上に存在するNKG2Dという受容体が活性化するとともに、癌細胞表面にある癌の目印であるMICA/Bも活性化しますが、MICA/Bが強く発現している癌細胞であれば尚更、NK細胞からの攻撃を受け、癌は死に至ることになるからです。
更にまた、マイルドハイパーサーミアでは、ヒートショックプロテインを癌細胞内に作るため、ヒートショックプロテインと癌蛋白との複合体が細胞表面に出てきます。
細胞傷害性Tリンパ球が癌細胞を破壊すると、ヒートショックプロテインと癌抗原の複合体が飛び散り、それを樹状細胞が取り込んで行きます。
これにより、樹状細胞は細胞傷害性Tリンパ球へ、より効率的に癌を抗原提示し、癌に対しての免疫力が上がることになる訳です。

生理学の新たな発見とともに、様々な生命の構造が解明されてきました。
今後も更に、複雑に入り乱れ絡め合う生命の糸が次々に紐解かれて行くものと思います。
経験的な実証から、ハイパーサーミアへと発展してきました。
これからも、ハイパーサーミアが効果を生む新たな機序が解明され、書き加えられて行くでしょう。

嫌気性解糖:
酸素を利用せず、糖をピルビン酸や乳酸に分解して、エネルギーを産生する反応を指します。酸素がある条件の下ではピルビン酸まで、酸素がない条件の下ではさらに乳酸やエタノールなどに分解されます。

低酸素誘導因子:
低酸素誘導因子は、細胞に対する酸素供給が不足した環境により誘導されるタンパク質で、転写因子として機能します。癌の病巣においては栄養不足や細胞外pHの低下、血流不足による酸素供給不足状態が認められますが、癌細胞が生き延びるためには新たに血管網を構築することで病巣への血流を増加し、低酸素状態を改善する仕組みをもっています。

HSP70:
熱ショックタンパク質(ヒートショックプロテイン)とは、細胞が熱などのストレスを受けたとき、細胞を保護する蛋白質の一つで、分子シャペロンとして働きます。ストレスタンパク質とも呼ばれています。HPSは分子量によって名前があり、Hps60、Hps70、Hps90、は分子量が其々、60、70、90kDaの蛋白質です。

インターフェロンγ:
インターフェロンγ(IFNγ)は、活性化Tリンパ球およびNK細胞によって産生され、ほぼ全ての免疫応答や炎症応答に関与する多指向性サイトカインです。IFNγは、T細胞、B細胞、マクロファージ、NK細胞の他、様々な細胞種の活性化、増殖、分化に関与しています。IFNγは、上皮細胞、内皮細胞、結合組織の細胞や単球系細胞株などの抗原提示細胞のMHC発現を増強します。腫瘍細胞に対する細胞障害ではマクロファージ活性化因子(MAF)として働き、抗腫瘍効果をもたらします。

NF-κB:
NF-κB(nuclear factor-kappa B)は転写因子として働く蛋白複合体です。ストレスや紫外線の刺激により活性化され、免疫反応で重要な役割を果たす転写因子の一つとされています。急性および慢性的な炎症反応や細胞増殖、アポトーシスなどの生理現象に関与しています。悪性腫瘍では一般的に、NF-κBの活性化が認めらます。

P糖蛋白:
P糖蛋白質は細胞膜上に存在し、毒性のある化合物などを細胞外へ排出する働きがあります。P-gpはABC輸送体のMDR/TAPサブファミリーに属する分子で、腸や肺、腎臓の近位尿細管、血液脳関門の毛細血管内皮細胞等に見られます。

CREB:
CREB(cAMP response element binding protein cAMP応答配列結合蛋白)は、神経細胞ニューロン間の恒久的接続を確立する蛋白質を、転写・翻訳するのに必要な因子です。この分子をブロックした場合、タンパク質合成や新たなシナプスの発達が妨げられ、その結果長期記憶の形成が阻害されます。

CD95:
CD95(FasまたはAPO-1と同義語)抗原は、腫瘍壊死因子(TNF)スーパーファミリーに属し、アポトーシス(プログラム細胞死)を媒介します。

Fasシグナル:
Fasリガンド(別名:CD95L)は、アポトーシスを誘導するサイトカイン(デス因子)です。FasリガンドやTNF(腫瘍壊死因子)は盛んに研究され、いろいろなアポトーシス誘導系の中で、細胞外のシグナルから細胞死に至るまでの経路が明らかになっているのは、デス因子によるアポトーシス誘導系だけです。

誘導型一酸化窒素ガス:
誘導型一酸化窒素合成酵素(iNOS) はマクロファージなど免疫系の細胞に含まれ、炎症に伴い発現誘導されます。iNOS発現誘導による過剰なNO生成は正常細胞のDNAを傷害し突然変異を誘導するなど癌の発生に深く関係していると考えられています。

NK細胞:
ナチュラルキラー細胞(NK細胞)は、細胞傷害性リンパ球の一つです。特に腫瘍細胞やウイルス感染細胞を自然に排除する役割があります。特定の細胞を殺傷する細胞傷害性T細胞とは異なり、感作の必要がないという意味から、生まれつき(natural)の細胞傷害性細胞(killer cell)と名付けられています。

NKG2D:
MICA/Bに対する受容体として知られており、異常細胞や癌細胞を攻撃する免疫細胞に発現しています。例えば、NK細胞は癌細胞表面上にあるMICA/Bを認識することで、癌細胞を攻撃するようになります。

MICA/B:
MICA (MHC class I chain-related gene A)、MICB (MHC class I chain-related gene B)は、主要組織適合抗原(MHC)に対し、非古典的な組織適合抗原と呼ばれており、癌やウイルス感染に対しての免疫応答に関与しています。MICAとMICBは、正常細胞には殆どみられませんが、癌細胞や感染症などで何らかの障害を受けた細胞に見られます。

樹状細胞:
樹状細胞は、樹のような形の細胞です。白血球の免疫細胞の一つで、ウイルスや細菌などの病原体や異物を発見すると、貪食し特徴を覚えます。その特徴をリンパ球へ伝えることにより、リンパ球は細胞傷害性T細胞となり、その病原体や異物を攻撃するようになります。

細胞傷害性Tリンパ球:
細胞傷害性T細胞(cytotoxic T lymphocyte:CTL)は、リンパ球のなかのT細胞のひとつで、ウイルスや癌細胞などを認識して破壊します。病原体を殺すという意味で、キラーT細胞とも呼ばれています。

恵比寿講とべったら漬け 神無月に恵比寿様は地元に残る

恵比寿様は五穀豊穣の神様です。
毎年、10月20日に一年の無事を感謝し、五穀豊穣を祈る恵比寿講が各地の恵比寿神社で執り行われます。
旧暦の10月20日は、今の暦に直すと、本来は11月中旬にあたります。
なかでも有名な恵比寿講は、日本橋宝田恵比寿神社の「べったら市」。
起源は、江戸時代中期だと言われます。
恵比寿講に合わせ、地域住民は親戚知人を招いていたようです。
この時、客人をもてなすため、魚や野菜、神棚などが露天で売られ、門前市が立っていたと言われています。

それでは、どうして恵比寿講が「べったら市」と呼ばれるようになったのでしょうか。
その謂われについて、一寸調べてみました。
先ず、「べったら」という名前の由来ですが、「べったら」は、大根を浅く塩漬けにし、米麹の床に漬け込んだものです。
米麹に甘酒や砂糖、飴など糖分を加えて作られているため、漬け物なのに甘く、表面はベタベタしています。
露天商の売り子がふざけて、 「ほら、買わずに通ると着物にくっつくよ」 「べったらだ~ べったらだ~」 と着物の袖に付け、からかったことから「べったら漬け」の名前になってしまったそうです。

今では到底、考えられません。
そんな事を遣ったら、通報ものです。
若し、着物に食べ物を故意に付けようものなら、それこそ犯罪です。
江戸時代、そんな戯れは普通の感覚だったのでしょうか。
一歩間違えば、冤罪でも獄門、晒し首の時代だったということは、それだけ下々の秩序は保たれていなかったと考えて良いのでしょう。

大根を干さずに漬け込むため、沢庵とは違い水分が多く、シャキッとした歯触りが特徴です。
江戸時代、甘いものが少ないため大変人気を博し、次第に「べったら漬け」を売る店が多くなったと考えられています。
その「べったら漬け」が、日本橋の恵比寿講で良く売られて名物となり、そのまま「べったら市」と呼ばれるようになったと言われています。

宝田恵比寿神社のご神体は、恵比寿様。
鎌倉時代の名匠、運慶の作と伝えられています。
残念ながら、拝見したことはありません。

10月(神無月)は全国の神様方が出雲へお出掛けになるので、恵比寿様もお留守とばかり思っていました。
しかし、恵比寿様は御祭神なので地元に残って居られるそうです。

10月(神無月)、八百万の神々が出雲大社へお集まりになるには、それなりの理由があります。
10月16日が伊邪那美命(イザナミ)のご命日なので皆集い、そこで男女の縁結びを話し合うためと言われています。
しかし、母の命日に息子が出席しないようであれば物議を醸すことでしょう。

恵比寿様の生い立ちは、伊邪那岐命(イザナギ)と伊邪那美命(イザナミ)の間に生まれた蛭子命(ヒルコノミコト)が未熟な子だったため、葦舟に乗せられ沖へ流されたというお話が古事記に登場します。
どのような経緯で変化したのか分かりませんが、後になって蛭子は恵比寿へ、縁起の良い字に当て替えられたと言うことです。

欠席の理由が若し生い立ちにあるとすれば、それはそれとして何となく理解出来なくもありません。
しかし、手前勝手な解釈ですので、決して鵜呑みになさらないようお願い致します。
何しろ、神話の世界ですから。

潰瘍性大腸炎の薬(スルファサラジン)は癌幹細胞に効果があるだろうか?

私達の身体には、それぞれの役割に合った細胞や組織を再生する特殊な細胞があります。
幹細胞と呼ばれており、骨髄にある造血幹細胞がその分かり易い例です。
末梢血の成分には、白血球や赤血球、血小板などがあり、白血球にもリンパ球や好中球、単核球など様々な種類の細胞で構成されていますが、造血幹細胞は、末梢血中にあるこれら全ての細胞へ、色々な過程を経ながら成長して行きます。
言わば、血球の成分をつくる種のような役割を担っているのです。
造血幹細胞以外にも身体の中には、組織が損傷を受けた時など、その組織を再生して同じ状態に戻す能力をもった細胞があり、このような働きがあるものを幹細胞と呼んでいます。

すでに人工的に幹細胞が作られ、数種類の幹細胞が実験的に利用されています。
胚性幹細胞(ES細胞)や成体幹細胞(tissue-stem-cell)、iPS細胞がそれです。
ES細胞は、受精卵が分裂して来る途中の段階で胚から取り出された内部細胞で、全ての細胞に分化してゆく能力があります。
成体幹細胞は身体の組織に存在し、障害を受けた組織の再生に伴い、新しい細胞を作り出す役割があると考えられています。
自分自身の身体の組織から作り出した幹細胞を利用できるのが利点です。
iPS細胞は、良く知られているように、京都大学山中伸弥教授の研究により生まれた幹細胞です。
四種類の因子の遺伝子を細胞内へ入れることにより、ES細胞と同じ様な多機能性幹細胞を作ることが可能です。
現在、臨床応用への取り組みが盛んに行われています。

癌にも、幹細胞があると考えられています。
完璧な治療が行われ、癌が無くなったと診断された患者さんも、再発する例が認められます。
これは、癌にも幹細胞が存在し、治療により一旦無くなった癌が、再び癌幹細胞から細胞が生み出され、癌が増殖し再発するからだと考えられているのです。
実際、放射線治療の後に残っている癌の組織を調べ、その癌の特徴を調べところ、細胞膜表面にCD44を持った細胞が多く観察されました。
CD44は癌幹細胞のマーカーですが、癌にとっては都合の良い機能をもっています。
このCD44は細胞膜でシスチントランスポーターと結合し、細胞内へシスチンアミノ酸の取り込みを亢進する働きがあります。
シスチンはグルタチオンを作る材料となりますが、グルタチオンは抗酸化作用があるため、活性酸素の毒性を失活させる効果があるのです。
このため、癌幹細胞はグルタチオンの抗酸化作用を利用し、抗癌剤治療や放射線治療から身を守り、生き延びているのであろうと考えられています。
抗癌剤や放射線は、細胞内に活性酸素を発生させ、癌細胞を死滅させる効果を発揮します。
これに対し、癌幹細胞は活性酸素の発生を減らすため、酸素を利用しない非効率的なエネルギー産生を行っているのです。
しかも、活性酸素そのものを抑制する能力があると考えられています。

話が少し逸れますが、活性酸素について述べておきます。
私達は生命維持のため呼吸を行ない、毎日500Lほどの酸素を消費していますが、取り入れた酸素の全てが利用されず、僅かですが取り入れた酸素の数%は活性酸素になると考えられています。
活動のエネルギーを得るため、口から摂った栄養を消化し、消化されたグルコースや脂肪酸は細胞内のミトコンドリアで酸化的リン酸化により酸化されます。
酸化的リン酸化の際、酸素は分子を受け渡すことによって不安定となり、活性酸素になります。
活性酸素は人が酸素を消費する過程で発生する副産物ですが、毒性の高い活性物質です。
色々な原因で活性酸素が過剰になると、組織に障害を発生し、病気に繋がる原因となります。
しかし、その強い毒性を利用して病原性をもった細菌やウイルスなどの微生物を殺し、身体を守る役割もあるのです。

ここで一寸、興味深い作用をもった薬があります。
スルファサラジンという薬です。
潰瘍性大腸炎や慢性関節リュウマチに対して使われる薬ですが、昔からある薬で、これまで長く使われて来ました。
このスルファサラジンは、シスチンの取り込みを阻害し、細胞内のシスチンを枯渇させて、グルタチオンの合成を低下させる作用があります。
前述しましたが、グルタチオンは抗酸化作用があり、活性酸素の毒性を弱める効果を利用して癌幹細胞は、抗癌剤や放射線の治療から逃れています。
このことから考えると、スルファサラジンを抗癌剤治療や放射線治療と同時に投与することにより、癌幹細胞が持っているCD44の機能を阻害し、グルタチオンによる抗酸化作用を抑えることで、癌幹細胞に対しても効果がみられる筈です。
抗癌剤治療や放射線治療の際、これまで効かなかった癌幹細胞への効果が期待できることになります。
実際、動物実験では既に、スルファサラジンを投与したマウスにおいて腫瘍の形成や転移が抑制されたとの報告があるようです。

既存薬の安全性は確立しているため、効果が実証されるようであれば、臨床に応用されるようになる期間は新薬よりも短くなります。
しかし、製薬メーカーにとっては、新薬を開発する方が魅力的です。
既に定められた既存薬の価格を考えると、新しい適応を得るために行う時間と努力に見合わないでしょう。
新薬の開発を否定する訳ではなく、これからも絶対に必要ですが、既存薬の隠された可能性を見出す努力も疎かに出来ないと思います。