エクソソームについてのあれこれ

生命体は色々な種類の細胞から構成されています。その生命体の機能を維持するため、細胞と細胞の間で常に情報の伝達を行なっています。細胞間同士への情報伝達方法としては、ホルモン、細胞増殖因子、サイトカインなどが良く知られていますが、 近年これまでの伝達方法に加え、細胞が非常に小さな小胞(細胞外小胞)を細胞外へと分泌して、細胞間同士の情報伝達に重要な役割を果たしていることが分かってきました。

細胞外小胞(EVs)は、細胞内で産生される由来の違いから、エクソソーム、マイクロベシクル、アポトーシス小体の3種類に大別され、すべての細胞から分泌される脂質二重膜構造をもった小胞の総称を表しています。

  • エクソソーム大きさは直径30~150nm、後期エンドソーム膜の内向きの出芽により形成され、細胞膜と融合することにより粒子を形成し、エキソサイトーシスで細胞外へ分泌されます。
  • マイクロベシクル(MVs):大きさは幅広く(直径100~1,000 nm)、細胞膜が外側へ出芽し分離することにより生成されます。
  • アポトーシス小体:大きさはさらに幅広く(直径50-5,000 nm)、細胞が計画された細胞死(アポトーシス)を起こすことにより生成されます。

DOJIN NEWS Reviews 細胞外小胞、エクソソームの特性と機能より

エクソソームは、これら細胞外小胞の中の一つということになります。

初めて細胞由来の小胞が発見されたのは 1940-1960 年です。血漿の高速遠心分離により血小板由来の小さな膜小胞(platelet dust)が見つかり、血液凝固を促進することが報告されました。Philip D. StahlらとRose M. Johnstonらによって1983年に哺乳類の成熟中の網状赤血球(未成熟の赤血球)の中に発見され、1987年にJohnstoneらによって「エクソソーム」(exosome)と名付けられました。この時は単に細胞の老廃物を排出する現象だと認識されていたのです。その後、1995年にオランダのGraça Raposoは、細胞が情報の伝達を送り合っていることに気が付きます。Raposoは、細胞が外来分子をどのようにして取り込んで細胞内の小胞の表面に付着するのかを電子顕微鏡で観察していました。細胞が外来分子を積載した小胞を放出した際、この小胞を回収して別の免疫細胞に提示したところ、外来分子に対しての反応と同じ反応が認められたのです。これは、エクソソームという細胞外小胞(EV)が細胞間の情報伝達に関わっていることを示しています。それ以後、免疫細胞由来のエクソソームが免疫調節機能を持つことや、内部に micro RNA(miRNA)が存在し、他の細胞へと運ばれることが発見され、細胞外小胞は新たな細胞間の情報伝達方法として注目されるようになりました。

エクソソームは、動物や植物など核を有する細胞の中に含まれる多胞体から分泌される直径50-150 nm(ナノメートル)の顆粒状の小器官です。

地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター研究所老化機構研究チームより

その構造は表面が細胞膜で覆われており、内部には核酸(マイクロRNA、メッセンジャーRNA、DNAなど)やタンパク質などの物質を含んでいます。エクソソームは定期的に細胞外に排出されることから、先程述べたように細胞外小胞(Extracellular vesicle)の一種とされ、細胞外に通常存在する小器官ということになります。動物のように高度な組織をもった生物では、体液(血液、髄液、尿、母乳)などにも存在し、およそ100兆個ものエクソソームが体中を循環していると考えられています。

エクソソームは、細胞内で次のような順に生成されます。

  1. エンドサイトーシス :

細胞は「エンドサイトーシス」という機構で細胞外の物質を細胞内に取り込みます。この過程で「エンドソーム」という小胞が生成されます。

2.エンドソームの成熟 :

 生成されたエンドソームは、クラスリン被覆小胞から初期エンドソーム、そして後期エンドソームへと移行して行きます。

3.多胞体(MVB)の形成 :

後期エンドソームの内部には、エンドソーム膜が内向きに出芽して形成される「腔内膜小胞(intraluminal membrane vesicle、ILV)」が存在しています。このようなエンドソームは、大きな構造体の内部に多くの小胞(ILV)が存在するという見た目から、「多胞体(multivesicular body、MVB)」と呼ばれています。

4.エクソソームの放出 :

 MVBが細胞膜と融合すると、ILVはエクソソームとなって細胞外空間へ放出されます。

この一連の過程を通じて、エクソソームは形成され、細胞外へと分泌されます。

地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター研究所老化機構研究チームより

エクソソームは、エンドサイトーシス(細胞が細胞外の物質を取り込む機構の一種)により細胞内にできたエンドソームがさらに陥入することで作られた膜小胞が、細胞外に放出されたものです。

エクソソームは細胞間同士のメッセンジャーの役目を担っています。特にエクソソームに含まれているマイクロRNAという遺伝物質は本来、細胞内のDNAの中だけにしか存在しないとされてきましたが、実際はエクソソームの中にも存在し、細胞間での情報交換に使われています。

身体中に存在する全ての小胞について、どのような役割を担っているのか明確に出来ていません。細胞内の廃棄物を細胞外へ運び出したり、同じ組織の細胞同士や、別の組織の細胞との間で情報伝達を行う小胞などがあります。Raposoが発見した免疫細胞由来の細胞外小胞のように細胞表面のシグナル分子を介して情報伝達を行う小胞もあれば、標的となった細胞の中に小胞内部の物質を放出することで情報伝達を行う小胞もあります。さらに、細胞外小胞が内容物を細胞外に放出することにより、由来している細胞にとって最適な環境を作るなど、間接的な情報伝達に関わっている小胞もあります。

病気がない正常細胞から放出された細胞外小胞は、免疫応答から細胞のホメオスタシス維持まで、幅広い生理的なプロセスをコントロールすることが知られています。また、病的な細胞から放出された細胞外小胞は、病気を助長し、病態を悪化させているのではないかと考えられています。例えば、がん細胞から放出された細胞外小胞は、がんの増殖を促進させるタンパク質やRNA分子を別の場所に運び、そこに転移を引き起こしてしまう可能性があると考えられています。また、アルツハイマー病のような神経変性疾患には、アミロイドβ、タウ、αシヌクレインなどのミスフォールド(異常な折り畳みを起こした)タンパク質の関与が知られています。このような変性疾患を起こした神経細胞から放出された細胞外小胞は、脳内に病気を拡散させる作用があるのではないかと考えられているのです。

エクソソームの機能をもう少し詳しく説明してみます。

  • 細胞間の情報伝達 :

エクソソームには様々な情報伝達物質が含まれています。特に重要なものはマイクロRNAです。エクソソームは、一つの細胞から別の細胞へと情報を送り出し、受け取る細胞に特定の指令を伝えます。これにより、身体のなかの離れた部分や臓器間で連携が可能となり、生命活動の調整が行われます。

DOJIN NEWS Reviews 細胞外小胞、エクソソームの特性と機能より

  • 免疫応答 (がんの免疫応答に関連して):

エクソソームには多様な免疫関連分子が含まれ、これらを介して免疫応答をコントロールすることが分かっています。例えば、細胞傷害性T細胞やナチュラルキラー細胞由来のエクソソームには、FasリガンドやTRAIL、CD40リガンドなどのTNFファミリー蛋白質が含まれ、標的となる細胞に対してアポトーシスを誘導します。

細胞傷害性T細胞(CTL)とは、リンパ球T細胞の一種で、細胞表面にCD8という分子を持つT細胞の一種で、ヘルパーT細胞からの指示を受け、ウイルスに感染した細胞や腫瘍細胞を認識し攻撃する働きがあります。以前はキラーT細胞とも呼ばれていましたが、最近はCTLと呼ばれることが多くなりました。

NK細胞(ナチュラルキラー細胞)は、リンパ球の一種で、ウイルスに感染した細胞などを排除する免疫細胞です。生まれつき(ナチュラル)外敵を殺傷する(キラー)能力を備えているため、このように命名されています。

TNFファミリー蛋白質とは、腫瘍壊死因子(TNF)スーパーファミリーに属する膜貫通蛋白質群の総称です。主にマクロファージによって分泌されるサイトカインの一種で、特定の腫瘍細胞の細胞死を誘導することができます。細胞生存、アポトーシス、炎症反応、細胞分化におけるシグナルパスウェイを活性化する多機能な炎症誘発性サイトカインの代表です。

Fasリガンドは、細胞障害性T細胞に発現する膜貫通型タンパク質です。その受容体へ結合してすぐに、このタンパク質は三量体を形成し細胞のアポトーシスを引き起こします。

TRAIL(TNF-related apoptosis-inducing ligand)は、細胞傷害性リンパ球に発現し、がん細胞に細胞死を誘導します。癌細胞がこのリガンドによって誘導されるアポトーシスに感受性を示し、正常細胞にはこれがみられないことが確認されて以来、癌治療薬として関心がもたれてきました。また、樹状細胞に発現し、TRAILを介した細胞死は、末梢血活性化T細胞や関節滑膜に認められることから、多くの免疫疾患の制御機構に関与すると考えられています。

CD40リガンド(CD40L)は、活性化T細胞に主に発現する膜貫通タンパク質です。CD40と結合することで、B細胞の増殖や接着性、分化を刺激します。

また、がん細胞の中には、FasリガンドやTRAILなどを含んだエクソソームを放出するものがあり、免疫細胞がこれらエクソソームの情報を取り込み、免疫細胞のアポトーシスを誘導して免疫からの攻撃をかわしているようだと報告されています。

 

地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター研究所老化機構研究チームより

また、がん細胞由来のエクソソームは、免疫細胞にアポトーシスを誘導する以外にも免疫抑制効果が報告されています。例えば、エクソソームがナチュラルキラー細胞に作用すると、がん細胞を認識するNKG2Dレセプターの発現を抑制し、がん細胞への攻撃性を弱めるという報告があります。

NKG2Dは、ナチュラルキラー(NK)細胞の主たるレセプターとして、腫瘍免疫や病原微生物に対する免疫応答に関わっています。

一方、がん細胞由来のエクソソームが単球に取り込まれると、エクソソームに含まれたTGF-βやプロスタグランジンE2などの作用により、単球を骨髄由来免疫抑制細胞へ分化誘導していると報告されています。

TGF-β(Transforming growth factor-β)は、細胞の増殖や分化、アポトーシスなどを制御する増殖因子です。細胞スイッチとして機能し、免疫機能や細胞増殖、上皮間葉転換を調節します。

プロスタグランジンE2(PGE2)は、生理活性物質であるプロスタグランジンの一種です。発熱や破骨細胞による骨吸収、分娩などに関与しています。

骨髄由来免疫抑制細胞(MDSC)は、未熟な骨髄細胞(IMC)の一種で、がんや感染症、慢性炎症、外傷性ストレスなどの際に免疫反応を制御する細胞です。MDSCは、腫瘍微小環境に誘導され、エフェクター細胞の免疫応答を抑制します。がんや慢性炎症疾患で増加する細胞群で、病態を悪化させる方向へ働きます。

この骨髄由来免疫抑制細胞は、IL-10などの免疫抑制分子を放出し、免疫担当細胞を不活化し、制御性T細胞の誘導を促進して腫瘍に対し攻撃的に働く免疫を抑制することが分かっています。このような仕組みを利用し、がん細胞は攻撃から逃れ、がんの発達を促進すると考えられています。

インターロイキン-10(IL-10)は、Tヘルパー(Th)細胞、マクロファージ、単球、B細胞によって産生される抗炎症性サイトカインです。また、T細胞やマクロファージといった免疫細胞に働きかけ、直接的に細胞の活性化を抑制したり、マクロファージの抗原提示能を弱めたりすることで、免疫反応を沈静化させます。

制御性T細胞(Treg)は、免疫応答を抑制するT細胞の一種です。自己免疫疾患や炎症性疾患、アレルギー疾患を引き起こす過剰な免疫応答を抑制する役割があります。

  • 抗原提示(樹状細胞の免疫応答に関連して) : 

樹状細胞は、体内に侵入してきた細菌や異物を取り込み、細胞の表面に抗原提示し、T細胞へその情報を伝えることでT細胞を活性化しています。樹状細胞が分泌しているエクソソームにはMHCクラスⅠ、クラスⅡの両方が在るため、それぞれ抗原特異的なCD8+細胞傷害性T細胞やCD4+ヘルパーT細胞のT細胞受容体と結合することで、樹状細胞からある程度離れているT細胞に対しても活性化することが出来ます。

MHCクラスI(HLA class I)は、主要組織適合遺伝子複合体(MHC)分子の主要な2つのクラスのうちの1つです。脊椎動物の全ての有核細胞の細胞表面に存在し、ウイルスなどの抗原ペプチドをCD8陽性T細胞に提示する働きをします。

MHCクラスII(MHC Class II)は、免疫細胞の表面にある抗原の一種です。免疫反応において外来抗原を免疫細胞に提示するために不可欠な分子です。

CD8陽性細胞傷害性T細胞(CTL)は、細胞表面にCD8という分子を持つT細胞の一種です。異常細胞(がん細胞、ウイルス感染細胞など)を認識し、その顆粒中に含まれるエフェクタータンパク質(パーフォリン)を放出して標的細胞のアポトーシスを誘導します。キラーT細胞とも呼ばれます。

ヘルパーT細胞は、CD4だけを発現(CD4+CD8-)し、キラーT細胞はCD8だけを発現(CD4-CD8+)します。CD4陽性ヘルパーT細胞は、リンパ球の一種でヒトの免疫反応系において免疫細胞を活性化し指令を出す役割を持ち司令塔のように機能します。さまざまなサイトカインの産生を誘導し、抗体を分泌するB細胞の活性化を促進します。また、免疫抑制機能も持ち、自己に対する免疫応答を抑制するほか、IL-10やTGFβなどの抗炎症性サイトカインを分泌し、過剰な炎症を抑制する機能も持っています。

美容への利用

美容治療や健康維持などの効果が期待され、すでに数多くのクリニックで利用されています。

  • 美肌効果 :

エクソソームは抗炎症作用や免疫調整作用、血管の再生や新生効果により、皮膚の炎症を抑えるとともに、皮膚の再生に効果があると考えられています。また、肌の真皮層にある繊維芽細胞にエクソソームが取り込まれると、繊維芽細胞が活性化されコラーゲンやエラスチンの増産が期待できます。

  • 育毛効果 :

エクソソームは毛髪の再生を促す成分を毛根に届け、毛包細胞を分化・増殖させる効果があるため、発毛や育毛を目的に利用されています。

臨床への利用

病気に対しての治療法が研究され、それぞれの分野で利用の可能性が示されています。

1:組織の再生を目的とした疾患への治療応用(肝硬変症への治療)

新潟大学大学院医歯学総合研究科消化器内科学分野の研究チームは、肝硬変に対して間葉系幹細胞から産生された細胞外小胞・エクソソームがマクロファージを介して治療効果を発揮することを明らかにしています。

2021年3月30日 NPJ(Nature Partner Journals)Regenerative Medicine誌に掲載

論文タイトル:

Small extracellular vesicles derived from interferon-γ pre-conditioned mesenchymal stromal cells effectively treat liver fibrosis

著者:

Suguru Takeuchi, Atsunori Tsuchiya, Takahiro Iwasawa, Shunsuke Nojiri, Takayuki Watanabe, Masahiro Ogawa, Tomoaki Yoshida, Katsunori Fujiki, Yuta Koui, Taketomo Kido, Yusuke Yoshioka, Mayu Fujita, Junichi Kikuta, Tohru Itoh, Masaaki Takamura, Katsuhiko Shirahige, Masaru Ishii, Takahiro Ochiya, Atsushi Miyajima, Shuji Terai

2:ドラッグデリバリーシステム(DDS):

エクソソームは、薬剤や核酸の輸送媒体として利用できます。エクソソームをDDSとして利用するためには、エクソソームが細胞に取り込まれるメカニズムの解明を行うとともに、目的とするエクソソームを作製するための加工技術の開発も必要になります。エクソソームを介して核酸などを特定の組織や細胞、疾患部位へ特異的に送達するため、エクソソーム膜に特定のタンパク質を付加させる方法や、膜タンパク質に糖鎖修飾を施す方法が研究されています。また、エクソソームの中に、バイオ医薬品を封入しなければなりません。現在、核酸医薬品としてmiRNAやsiRNAが注目されています。エクソソームを用いたDDSの具体的な応用例は限られていますが、その可能性は非常に大きく、新たな治療分野の開拓が期待されています。

miRNAは、一般に標的遺伝子の翻訳抑制を行うことでタンパク質産生を抑制します。miRNAが介する転写抑制は、発生、細胞増殖および細胞分化、アポトーシスまたは代謝といった広範な生物学的プロセスに重要な役割を担うことが知られています。

siRNA(small interfering RNA)は、RNA干渉(RNAi)と呼ばれる現象に関与しており、伝令RNA(mRNA)の破壊によって配列特異的に遺伝子の発現を抑制します。

RNA干渉は、1998年に2本鎖のRNAを細胞に導入することによって遺伝子の発現を効率よく抑制する技術として発見されました。2006年にノーベル賞を受賞しています。

3:がん診断への応用 – リキッドバイオプシー

リキッドバイオプシー(液体生検)とは、患者様から血液などの体液を採取し、その中に含まれているがん細胞や、がん細胞由来の物質を解析する技術です。がんの患者様の血中には、がん細胞そのものや、がん細胞から分泌されるエクソソームが存在しています。身体を循環している血液などの体液からこれらを検出することで病気を診断するというのがリキッドバイオプシーです。血液のみならず、尿、唾液、脳脊髄液、便などから、がんの早期検出や詳細な遺伝子情報を得ることができます。しかし、腫瘍組織自体の検査に比べると感度が低く、体内の腫瘍量が十分にないと検出し難いため、正確な診断ができません。

エクソソームは、再生医療で最もよく利用されている間葉系幹細胞からも分泌されています。幹細胞培養の際、培養液から幹細胞と不純物を取り除き、残った液体部分に滅菌処理や遠心分離などを加えた上澄みを幹細胞上澄液と呼びますが、その幹細胞培養上清液に幹細胞のエクソソームが含まれていることになります。そのため、幹細胞培養上清液の投与による治療をエクソソーム療法と呼ぶことがあります。

このエクソソームの製造において重要な点がいくつかあります。なかでも最も重要なことは、培養の原料となった幹細胞です。何らかの疾病が潜んでいる幹細胞のエクソソームには、当然、疾病に関連した情報が含まれており、それらの情報は投与された者へ伝達され、潜んでいる疾病の発症につながる可能性があります。そのため、厳格な幹細胞の選択と品質のチェックは不可欠です。また、製品となるまでの過程は全て無菌操作により製造されなければなりません。これも常識的なことですが、過去に敗血症での死亡例も報告されています。原材料となる細胞の安定確保や大量培養技術、およびエクソソーム等の大量抽出技術の開発や安全性・有効性確保の上でのリスクの明確化、そして法整備が整えば、多くの分野で新たな治療として活躍すると期待されます。

生命の活動は、複雑な機能がお互いに微妙な調節を取り合いながら維持されています。ここでは、エクソソームについてこれまで分かっていることを述べていますが、いまだに解明されていない機能は、まだ沢山あると想像できます。

これからまた更に、エクソソームの機能が解明されて行くに従い、エクソソームを利用した新たな治療法が登場し、臨床応用の適応が拡大し、様々な疾患の治療にエクソソームを利用することができるようになるだろうと考えられます。美容目的だけの利用に留まらず、がんの治療や慢性の炎症性疾患、自己免疫性疾患など、これまで有効な治療法がなかった病気に対しても新たな手立てに繋がることを期待致します。

舘内記念診療所

!このページのコンテンツは全て院長 医学博士 安部英彦の監修に基づいて執筆・制作されております。