便秘についての諸々 新しい緩下剤の登場

お通じに困っている方の割合は、人口100人に4人程だと言われています。
男性より女性に多い傾向があり、若い方では女性に多く、年齢と共に男性が増加。
80歳以上になると、男女が同等になります。
若い頃から便秘が続いている方もいれば、年齢と共に便秘を起こした方もいます。
私達日本人は、お米が主食という食事スタイルも影響し、欧米人と比べ大腸が長いと言われます。
また同時に、年齢を重ねるにつれて次第に大腸が弛緩し長くなるようです。
大腸の機能は、食べた食事の残りに含まれる水分を吸収することが主な役割です。
結果、大腸に食品の残渣物が長く留まれば留まるほど、大便は水分が抜けて行き、硬くなり便秘になります。

便秘の定義は、本来体外へ排泄すべき糞便を十分かつ快適に排泄できない状態でるとされています。
つまり、便が出ない場合はもちろん、毎日排便があっても残っているような感じがある場合なども便秘に含まれます。
ガスしか出ないという方や、まだ残っているような感じがして、スッキリしないという方も便秘です。
便秘を起こす器質的な原因、例えば大腸癌などで通過障害が発生するような場合は除き、慢性便秘と呼ばれる機能的な原因で起こってきたような便秘について述べたいと思います。

機能的におこる便秘のなかで、慢性便秘あたるものが一般的な便秘と呼ばれるものです。
便意を我慢したり、浣腸を日常的に使う方に起こる直腸性便秘を除くと、二通りあります。
大腸が痙攣するようにひきつった状態となり、便の通過が悪くなるような痙攣性便秘、
筋力の低下や大腸の動きが低下し、発生する弛緩性便秘です。
痙攣性便秘の代表的な例は、過敏性腸症候群。
弛緩性便秘の代表例は、高齢者の便秘です。

便秘の予防対策に重要なことは、日常生活の管理です。
食事の内容や水分の摂取、適度な運動と十分な睡眠、それと排便習慣をつけることなど。
言うまでもなく、常識的な事ばかりです。
しかし、全てを実行し、守っていても治らない方は治りません。
お通じの薬、いわゆる緩下剤を使わざるを得ないことになります。

一般的に最も良く使われているものは「酸化マグネシウム」です。
浸透圧性下剤という分類の下剤になります。
腸管から水分を引き出し、便の水分を多くし、便を軟らかくすることにより排泄しやすくする作用があります。
腸の動きに刺激を与えることは余りなく、その分お腹の痛みは起こしにくいので、最も広く使われています。
ご高齢の方にも使うことが多い薬ですが、腎臓の機能が低下しているような場合、長期の服用で血中マグネシウムの値が上昇する場合があるので注意が必要です。

昔から良く使われる下剤として、「センナ」を主成分とするものがあります。
刺激性下剤と総称される下剤です。
確実に一定の効果がみられるため、市販薬にも含まれたものが多くあります。
しかし、長期使用することにより、次第に慣れを起こし、効き目が悪くなることも多い薬です。
そのため、服用量が増えて行き、極量を飲んでも効かないとおっしゃる方も出てきます。
俗にいう、慣れが起こってくるようです。
確かに効果が期待でき、排便感が良いのですが、連用することなく、困ったときだけ使うようにすれば良いでしょう。

ここ数年、これまでの作用とは異なる緩下剤が登場してきました。
「アミティーザ」や「リンゼス」という名前の薬です。
アミティーザは、上皮機能変容薬と呼ばれる薬で、簡単に言えば小腸の粘膜から水分を分泌させ、便に水を多く含ませる薬。
酸化マグネシウムのように大腸から水分を浸透圧で引き出すものではなく、薬の効果によりクロールのイオンチャンネルへ働き、水分を小腸へ引き出すものです。
習慣性を起こし難く、腎臓の機能が低下している方へも負担をかけずに投与出来ると考えられています。
リンゼスは、アミティーザと同様に腸管上皮細胞に働き、水分の分泌を促す作用があります。
同時に、内蔵痛覚神経繊維という部分にも作用し、お腹の痛みや不快な感覚を和らげるという効果もあります。
このため、保険適応となる病名は、慢性便秘と便秘型過敏性腸症候群です。
適応症として、便秘薬に過敏性腸症候群の病名が連ねるのは大変珍しいことだろうと思います。

更にまた、最近登場した「グーフィス」という薬があります。
胆汁酸トランスポーター阻害剤と呼ばれる薬です。
胆汁酸は、肝臓でコレステロールから作られます。
一旦、胆嚢へ蓄えられ、食事することによって胆嚢が収縮。
蓄えられた胆汁は、胆管を通り十二指腸へ排泄され、脂肪の消化吸収に働きます。
この胆汁は小腸で殆んど吸収され、再び肝臓へ運ばれ、胆汁として利用されます。
しかし、小腸で吸収されなかった一部の胆汁酸は大腸へ運ばれます。
大腸では、胆汁酸が腸から水分を分泌するように働き、また同時に、大腸を刺激して消化管の運動を亢進させます。
この、胆汁酸トランスポーター阻害薬は、小腸で胆汁酸の再吸収を抑えることにより、多くの胆汁酸を大腸へ流すことが出来る訳です。
その結果、大腸の水分が増え、腸の動きが活発になり、便秘を解消する効果へと繋がります。

便秘で悩む方が多いにも関わらず、長らく新薬の登場がありませんでした。
生活習慣病や他の病気と比較し、治療の重要性を軽んじていたのかも知れません。
欠点を考えるとすれば、その値段です。
新薬は当然、薬の値段が高くなります。
毎日のように使う薬なので、これまで使われていた緩下剤と比較し、長期になると可也の差が出ることになります。

大体3日排便がなければ、便秘と判断しても良いでしょう。
しかし中には、1週間平気で過ごす方も稀にいらっしゃいます。
1週間に1回の排便が日常だと、お通じが無いことを気になさらないのです。
余りにも長く便秘することで便が詰まり、腸閉塞になる場合もあるので気を付けましょう。
長時間、大腸の中に便が停滞することで、大腸癌の発生を上げると思われがちですが、2006年に国立がん研究センターが行った調査では、大腸癌の発生と便秘との関係はないと報告されています。
因みに、下痢と直腸癌の関連性についてはあるようです。

!このページのコンテンツは全て医学博士 安部英彦・院長 医師 安部公崇の監修に基づいて執筆・制作されております。