観測史上最大の寒波が到来しています。
北海道では、札幌市内でも-15℃。
街が丸ごと製氷室に入った状態です。
夏の北海道は涼しく過ごしやすい場所ですが、冬は長く厳しい天気が続きます。
もうかれこれ、四半世紀も前のこと。
家族で函館へ出かけたときの話です。
年末年始ともなると、まとまった休みを利用し、遠くへ足を伸ばすことも屡々。
その年は、函館へ車で出かけることにしました。
スキー場を移動し易く、費用が安く上がるように考えての計画です。
函館大沼は景勝地。
夏の大沼は、緑と湖、駒ケ岳の稜線と青い空がとても綺麗です。
一転して冬は真っ白な世界に。
湖から湯気が立ち上り、幻想的な風景です。
七飯のスキー場で朝から半日過ごし、午後3時には引き上げ。
北海道の冬は、夕暮れが早く、午後3時を過ぎればアッと言う間に、辺りは真っ暗になってしまいます。
その日、早めに切り上げ、宿へ帰る途中。
まだ明るかったので、周辺をドライブすることにしました。
四輪駆動車なので、少々の雪は大丈夫と思っていたのです。
しかし、無謀にもノーマルタイヤにラダーを巻いての走行。
当時は、確かに認識が甘かったと思います。
若気の至りでしょう。
若い時は何となく大丈夫だろうと、根拠のない確信を持ち、余り深く考えずに行動できるように思います。
ゆっくり車を走らせ、山手の湖を周回する道路に差し掛かったところで事件は起きました。
道は、僅かに右へカーブしながら緩やかに下り。
ここは慎重にと思い、ブレーキよりもギアを一段下へ落とそうと判断しました。
しかし、ギアを一段下げた途端、車はクル~と尻を振り始めたのです。
車内は「ワ~、キャ~」という悲鳴。
ハンドルは、全く効きません。
そのまま、ゆっくりと回転しながら、湖畔沿いの山道を下って行きます。
「もう是までか・・・」
漠然と死が脳裏を掠めました。
「自分は良いが、子供達が可愛そう・・・」
頭の中でそんなことを考える時間がある程、車はゆっくりと回転を続けたのです。
回転すること3回転半。
運良く、山側の雪溜まりへ尻を埋めるように止まりました。
フィギアスケートに例えれば、トリプルアクセルでしょうか。
冗談抜きで、これが反対の湖側へ落ちていれば完全にアウトです。
冷たい冬の湖底に沈んでいた、と思うと今でも身の毛がよだちます。
今思えば、走っている車は一台もなく、用事もないのに雪の山道をドライブすること自体が非常識でした。
テレビのニュースで観るような、無計画な登山の遭難騒ぎと何ら変わりありません。
一歩間違えれば、本当にそうなっていたかも知れません。
何より、危ないところへは近づかない。
「君子危うきに近寄らず」
格言通り、これが一番大事です。
湖畔の凍結道路は本当に怖いと感じた、北海道の思い出でした。
舘内記念診療所