治療と療法の違い – 民間療法の功罪について

治療とは、「病気や症状を改善させるために行う医療行為のこと」であり、

療法とは、「治療を行う手段や方法のこと」を言います。

当たり前のことを、改めて申し上げるのは大変に馬鹿げたことだと思いますが、あえて述べたい理由があります。

まれに「〇〇療法」というのは、「科学的な証明が行われておらず根拠のない治療の方法である」などと誤解している方がいらっしゃいます。

しかし、これは間違いです。

化学療法や理学療法、精神療法など、この「○○療法」は医療でよく登場することばです。

皆様も、少なからず一度はお聞きになったことがあるでしょう。

この療法と名前が付けられているものは、科学的な証明のもとに行われている治療の方法をいいます。

根拠のない治療などと誤解を生む理由は、「民間療法」と呼ばれているものに一部責任があると思っています。

いわゆる「民間療法」なるものが巷に溢れ、「〇〇療法」と名がつくものは全て、まやかしに違いないという概念が出来上がってしまったのではないかと感じられるのです。

それほど、民間療法と呼ばれるものが多く世の中に溢れ、氾濫しているということなのでしょう。

しかし、民間療法と言っても日常お世話になっているものもあります。

例えば、吃逆(シャクリ)のとき、コップに注いだ水を手元とは逆の縁から飲むと治まってしまいます。

これは、自分自身も良く利用する方法です。

もちろん、この方法は理論的に効果を説明できます。

無理な姿勢で水を飲むことにより、横隔神経は水を嚥下しやすいように横隔膜を動かします。

また異常な姿勢で水を飲むことにより身体に違和感を生じ、体内の活動バランスを調節するため迷走神経が活性化します。

このような神経の刺激により「シャックリ」は止まると考えられています。

どなたでも皆さんが必ず上手く行く方法とは限りませんが、昔から良い対処法ではないかと思って実践しています。

世にある民間療法は、科学的な裏付けはないけれど、経験則で何となく症状が良くなるような手立てが口伝てで広まったものだと考えられます。

民間療法の信奉者ではありませんが、なかには症状を改善する手段として何らかの効果が出るものもあるようです。

さて、「民間療法」とは一体どういうものでしょうか。

民間療法とは、医師の資格を持っていない者が、伝統的な知識にもとづいて行なうような治療のことを言い、薬物療法、物理的療法、呪術的療法、信仰的療法などのカテゴリーに分けられています。

1)薬物療法:

草の根や木の皮、その他さまざまな化学薬品を使った民間薬を服用するもの

2)物理的療法

摩擦・圧迫・加熱・加湿・冷却などの刺激を与えるもの

3)呪術的療法:

シャーマンと呼ばれる霊能力者や祈祷師が行うもの

4)信仰的療法

神社仏閣でご祈願、ご祈祷など行うもの

など、非常に多岐に渡っています。

民間療法と呼ばれるものの範疇は非常に広く、また曖昧です。

あたかも、確立したカテゴリーがあるように述べていますが、そのような棲み分けはなく、様々な方法が混在していると言えるでしょう。

また、いくつかを組み合わせた方法も存在しているのであろうと思います。

それぞれの方法には経験的に、あるいは伝統的な方法が継承され、まだ医療が発達していなかった時代には、ある程度の効果がみられていたかもと考えられます。

人間には本来、見えないものや神秘的なものに対して畏敬の念をもつ傾向があります。

昔から、神仏の力で疫病を封じる目的で執り行っていた祭り事は、伝統行事として受け継がれています。

もちろん、神の祭り事が民間療法の一つだと述べるつもりではありません。

効果の一つとして心理的な作用があり、病気そのものや不安に対して、癒しの効果があるということだと思います。

呪術や信仰に頼る人の理由は、多分そこにあるのでしょう。

呪術や信仰のみならず、広くサプリなどを含めた民間療法の全てにおいて、少なからず癒しの効果があるのではないかと私は思っています。

当然ですが、これは近代医療と全く異なった部分に存在意義をもっているのです。

特に「がん」の病気に絞ってみても、医療が発達した今でさえ治療の選択肢が無くなってしまい、命を救うことが出来ない患者様が多くいます。

何も治療しないまま進行する病気をただ眺めているだけでは、ご本人も周りのご家族も為す術なく、遣る瀬ない気持ちが募る一方でしょう。

治療難民が民間療法へ救いを求める行動は、近代医療にも責任の一端があると言えるのかも知れません。

もしかすると、近代医療の及ばない部分を補足するように機能しているのではないかと思うことさえあるのです。

病気と戦い続けているという一種の安堵を求め、民間療法を始める患者様も沢山いらっしゃるに違いありません。

しかしこれを逆手に取り、救いの手を求める気持ちに乗じて、営利だけを目的に近づく業者へ隙を与える機会になっていることも事実です。

民間療法の問題点は、安全性が保証されないものがあるということです。

実際、極端な民間療法による副作用で健康被害がいくつも報告されています。

自己責任のもとに行動することは非難出来ませんが、最終的には近代医療に携わる者が民間療法で生じた弊害を診ることになります。

また、いつ・どのような状態で健康被害を起こすか予測不能です。

医療に携わる者が、民間療法に対し懸念を抱く理由には、このような伏線があるからだろうと思います。

もちろん、全ての民間療法で健康被害を起こす訳ではありません。

しかしながら、臓器障害を含め、何らかの後遺症を残す場合があるということを十分理解し、知っておく必要があるでしょう。

注):2024年5月に内容の一部削除、修正、変更および追記を行いました。

舘内記念診療所

!このページのコンテンツは全て院長 医学博士 安部英彦の監修に基づいて執筆・制作されております。