夕立は 昔は涼で 今災害

暑い日が続きます。
今年の夏は異常に暑い。
かつて経験したことがない暑さです。
しかし、夏は暑いものと相場は決まっています。
思えば毎年、「今年の夏は異常に暑い」と愚痴をこぼしているような気がしなくもありません。

夕立は夏の風物詩です。
私が幼い頃の夕立は、入道雲が出てきて辺が薄暗くなると「ゴロゴロ・・」
その内、「ポツ・ポツ・・」
「ザー」と降り始め地面に水たまりが出来たかと思えば、日が差し始める。
開けた戸口から吹き込んだ風が草木と道の匂いを運び、窓の向こうへ通り過ぎます。
その風が身体にまとわり付いた重い空気を拭い去り、打ち水をしたような涼を感じるのです。

落語に夕立の小噺があります。
エアコンのない昔は、夕立で涼を感じていたのでしょう。
少しだけ、ご紹介させて戴きます。

男「暑いねぇ、こんな日は、ひと雨来ると良いけど。」
夕立屋「えー、夕立や夕立。」
男「なんだい、あの夕立屋ってのは、面白い、呼んでみよう、おーい、夕立屋。」
夕立屋「へい、毎度。」
男「お前さん、雨を降らせるのかい。」
夕立屋「へぇ、左様で御座います。」
男「へぇ、で、幾らなんだい。」
夕立屋「へぇ、ほんのお志しで。」
男「そうかい、じゃあ、三百文ほど降らして貰おうか。」
夕立屋「へ、かしこまりました。」
男は暫く呪文を唱えておりましたが、やがて雨がざーっと降って来ます。
男「おかげて涼しくなったけど、お天道様を操るなんて、お前さん、唯の人間じゃないね。」
夕立屋「はい、実は私、龍で御座います。」
男「なるほど、道理で不思議な術を知ってなさる。けどね、夏は雨を降らしてりゃ商売になるが、冬はどうすんだい。」
夕立屋「へぇ、寒くなったら、倅(せがれ)の子龍(炬燵)をよこします。」

オールシーズン家内工業だったのですね。
それにしても、近頃の天候は本当に極端です。
夕立かと思えば、雷と雨霰(あられ)。
一旦、雨が降りはじめれば豪雨になります。
こうなると、もう夕立とはいえません。
道路が水浸し、川のような濁流となります。

昔はこんなに激しい天気の変化はありませんでした。
異常気象があり過ぎて、今の日本は災害大国です。
日本だけの現象ではなく、水による自然災害は世界的な規模で発生しています。
文明が自然を犠牲にして進化し、自然への償いを疎かにしてきた見返りでしょう。
今は新型コロナの蔓延でそれどころの話ではありませんが、地球存亡の危機を避けるためにも、カーボンニュートラルは必須だろうと思います。

話が在らぬ方向へ行ってしまいました。
この新型コロナ流行を、綺麗サッパリ洗い流してくれるような、爽やかな夕立を心から期待して止みません。

舘内記念診療所

!このページのコンテンツは全て院長 医学博士 安部英彦の監修に基づいて執筆・制作されております。