私達が最も良く遭遇する病気と言えば、風邪症候群です。
感染の原因となる微生物の殆ど、8~9割がウイルスです。
そのウイルスのなかでも、ライノウイルス、コロナウイルス、RSウイルス、パラインフルエンザウイルス、アデノウイルスなどが多いと言われています。
ウイルスの語源は、ラテン語の「毒」から名付けられたとのことです。
古代、体調を悪くするものとして、「毒」だと考えられていたのかも知れません。
代謝機能や増殖機能を持つものが、生物と呼ばれます。
ウイルスは遺伝子を持っているものの、ウイルスは自己増殖が出来ず、感染することでその宿主の代謝系を利用して繁殖するのです。
そのため、生物とも非生物とも言えず、その両方の特徴を持っているものと位置づけられています。
どうして、このようなものが存在するのかどうかは別にして、ウイルスは細胞の中に侵入して、その細胞の遺伝子へウイルスの遺伝子を入れ、ウイルスの蛋白を作らせる。
それによって、宿主となった細胞が次第に機能を奪われ、細胞が病気になるのです。
感染を起こした宿主側の動物は、これに対して免疫応答が発動します。
ウイルスに対しての中和抗体が作用する液性免疫や、細胞傷害性T細胞やNK細胞が感染した細胞を処理する細胞性免疫が働き、感染拡大を防ぎます。
この時、病気の状態から治ろうとする身体の反応が、様々な風邪の症状として現れるのです。
風邪の多くは、ご自身の免疫により改善します。
しかし、免疫自体が低いご高齢の方や、重い基礎疾患を持っている方は重症化し、稀に肺炎を起こして亡くなる方もいます。
「風邪は万病のもと」と昔から言われるように、多岐にわたる病気と関連している疾患です。
風邪症状の後から、急に手や足の麻痺を起こし、力が入らなくなるギラン・バレー症候群という病気があります。
自己免疫機序が関与していると考えられていますが、よく分かっていません。
風邪を繰り返す方の中には、見過ごされている重大な病気を抱えている患者様もいます。
実際、義理の兄がそうでした。
頻繁に風邪をひくので精査したところ、肝臓癌と診断されたのです。
既に他界していますが、仕事が忙しく、風邪で休むことは出来ませんでした。
体力にも自身があり、重大な病気を抱えているとは微塵も考えてなかったに違いありません。
治るだろうと過信しないで、長引く場合は内科へ受診をお薦めします。
インフルエンザは、流行性感冒と呼ばれます。
感染力が強く、潜伏期間が短いウイルス感染は、ワクチン接種が予防対策として最善の手段です。
勿論、予防接種で病気にならない訳ではなく、罹患時の症状を軽減する意図で行います。
インフルエンザと違い、一般的な風邪症候群は、何と言っても予防が大切です。
感染経路となり易い手の洗浄は、そのなかでも最重要と考えます。
ウイルスの感染と繁殖を起こし易い、上気道の湿潤を保つことも大切です。
ご自分の免疫を下げるような無理をせず、睡眠時間を十分取ることだけでも違います。
当たり前の話になりますが、手洗い・うがいを励行しましょう。
風邪の症状が長引くようであれば、早めに医療機関へ受診して下さい。
舘内記念診療所