便潜血陰性でもある大腸癌 巨大ポリープの内視鏡切除

随分、昔の話です。
外来に、大腸内視鏡検査を目的として受診された男性がいました。
40歳位、体格が良く、膨よかな方でした。その方は、腹痛や便秘などの自覚症状は何もなく、健康診断で受けた便潜血反応も陰性。唯一、お父様が大腸癌でお亡くなりになったという、家族歴がありました。
「折角だから念の為、遣ってみましょうか。」とお話すると、「ま~、そうしますか。」と、乗り気ではないものの、検査の日取りが纏りました。

検査当日、「まあ、何も無いだろう。」と思いながら始めました。
しかし、開始早々、視界を塞ぐように、腸管の隙間がないほど大きな腫瘍が、S字状結腸にドンとあります。
普通、小さなポリープは、内視鏡からワイヤーを出した後、ワイヤーの輪の中に鉗子を通すようにしながら、鉗子でポリープを摘み、ワイヤーをポリープの根本で絞り込み、電流を流して焼灼切除行います。
余りにも大きなポリープは、そのサイズがゆえ、ワイヤーをポリープの根本へ回すことが出来ません。その当時、これ程大きなポリープは、外科的に開腹手術して取り出すのが常套手段。
どうしたものかと思案した結果、部分的に少しずつ切り取ってみようと考えました。
腸管に触れないよう注意を払いながら、大きなポリープの一部にワイヤーを掛けます。
「エイ、南無三!」と念じながら電流のスイッチを入れると、焼けたときに出る煙で、視界は雲の中のように、一面真っ白。
煙が少し収まるまで待つと、ポリープの切れた断面がはっきりと見えてきました。
大きな出血はなく、先ずは一安心。
もう一度、別の場所へワイヤーを掛け、同じ作業を繰り返すこと5回。
漸く、巨大な腫瘍はバラバラの断片となり、腸管の向こうを見渡すことが出来る状況になりました。

ポリープの断片は、自然排泄を待って、病理組織検査へ。
結果を待つこと1週間。
表面の一部に、癌があると診断されました。
幸いなことに、癌は粘膜内に留まっており、ほっと胸を撫で下ろしました。

便潜血反応がなくとも、何もないとは限らない。この場合、大腸内視鏡検査を受けて戴き、本当に良かったと思っています。

舘内記念診療所

!このページのコンテンツは全て院長 医学博士 安部英彦の監修に基づいて執筆・制作されております。