風疹第5期予防接種(大人の風疹ワクチン接種)

風疹第5期定期予防接種について
国の制度により、風疹の抗体価測定とワクチン接種が、無料で受けられるようになりました。
対象になる方は、昭和37年4月2日から昭和54年4月1日までの間に生まれた男性です。
3年計画で段階的に行われ、1年目(2020年3月まで)は昭和47年4月2日から昭和54年4月1日生まれの男性に対して、市町村から受診券が送付されます。
受診券が送られて来ない昭和37年4月2日から昭和47年4月1日生まれの男性も、希望すれば受診券を市町村から発行して貰うことが出来ます。

これは、免疫を持たない男性を風疹から守る目的と同時に、新生児に発症する先天性風疹症候群(CRS)の撲滅を兼ねています。
先天性風疹症候群とは、難聴・心臓の病気・白内障や緑内障など目の病気・脳脊髄炎など、妊娠時に母体が風疹に感染することで発生する、先天的な新生児の奇形疾患群のことを言います。
風疹の抗体を持っていない女性が妊娠5ヶ月までに風疹を発症すると、新生児が先天性風疹症候群を起こす危険性があり、妊娠初期、特に妊娠1ヶ月までに感染すると、先天性奇形を発症するリスクは50%以上にもなると言われています。
このため、妊娠を希望する女性は風疹の抗体価を測定し、十分な抗体価がない場合、妊娠を希望する2~3ヶ月前までにワクチン接種を受ける必要があります。
妊娠中は風疹ワクチンを接種出来ません。
もし、抗体価が低い状況で妊娠が判明した場合は、風疹の流行に注意し、ご家族を含め成るべく外出を控え、感染の予防に努めることが大切です。

風疹そのものはウイルス感染です。
「三日麻疹」と言われ、昔は普通にありふれた病気でした。
しかし、最近はワクチンの普及に伴い、殆ど見かけなくなりました。
小児科の先生は、診察する機会が多いかも知れませんが、私が最後に拝見した記憶があるのは10年以上前になるかと思います。

飛沫感染の経路で上気道へ感染を起こし、感染を受けてから約2週間で発症します。
つまり、潜伏期は約2週間ということになります。
症状は、発熱・発疹・リンパ節腫脹が主な症状です。
大人が罹患すると、発熱や発疹は長く続く傾向があります。
重症化すると、まれに脳炎や血小板減少性紫斑病などを起こすことがあるようです。
感染力は強く、インフルエンザの2倍とも4倍とも言われています。
治療法は対症療法だけで通常、最終的に免疫を獲得して自然に治ります。

昔は、風疹に感染する機会も多く、自然に免疫を獲得するのが一般的でした。
風疹ワクチンの接種が広まって行くに連れ、感染して自然に免疫を獲得することが少なくなりました。
風疹ワクチンの接種を受けていても幼少期に1回だけの方が多く、感染を予防するには不十分な免疫しかない方々が増えています。
また、ワクチン接種を受けた方々の免疫も、時間の経過に伴い徐々に低下しているであろうと考えられます。

行政からお知らせとクーポン券が届いたら、医療機関へ受診し、風疹の抗体価を調べましょう。
感染を予防できる十分な抗体価があれば、ワクチン接種の必要性はありません。

今回の制度のことではありませんが、通常の考え方や対応は、
抗体価が陰性であれば、2回のワクチン接種が必要となります。
例えば、EIA法でIgGの値を測定した場合
2.0未満であれば陰性で、2回接種が必要です。
2.0~7.9の中にあれば、1回接種となります。
8.0以上あれば陽性で、接種の必要性がありません。
2回接種する場合、1回目から1ヶ月間を置き、2回目の接種を行います。
抗体価が陰性ではないが、十分感染を予防できるだけの値がない場合、1回だけワクチン接種を行うことになります。

今回、実施される風疹第5期予防接種の適応は、
抗体価が、HI法で8倍以下、もしくはEIA法で6未満が風疹第5期(送られてきたクーポン券を利用して行う予防接種)の対象者となります。
また、ワクチン接種の助成は一回のみです。

話が混乱するのは、任意で行う風疹症候群対策がまた別途に存在することです。
クーポン券が送られていない方にも、ご本人の希望により、以下の条件が満たせば予防接種が受けられます。
1:19歳以上の品川区民
2:過去に一度もCRS対策の制度を利用したことがない者
3:風疹(MR)ワクチンを2回以上接種したことがない者
上記の1~3に該当する方で
 *妊婦と同居している者
 *妊娠を希望する女性と同居している者
上記の条件が満たせば、抗体価の判定が変わってきます。
HI法で16倍以下、またはEIA法で8未満の方がワクチン接種の対象者です。
また、抗体価を測定した時期が2014年以後の検査結果を持っていれば、新たに検査することなく、ワクチン接種の対象かどうかを判断することも可能です。

医療機関へ受診する前、以下のことを必ず確認しておいて下さい。
1:本人確認ができるものを持参する。(運転免許証、マイナンバーカードなど)
2:クーポン券が有効期限を過ぎていないかどうかを確認する。
3:クーポン券に記載されている住所と、ご本人が現在住んでいる住所と(その時点で住民登録が行われている住所)が一致しているかどうか。異なる場合、受けられません。

品川区以外の方でも、クーポン券をお持ちの方であれば、上記の条件を満たす場合、抗体価検査や風疹ワクチン接種を受けることが出来ます。

分かりにくいことが多いので、医療機関へ受診する前に念の為、受診先へ電話で連絡した方が良いかと思います。

ご参考までに、品川区の公式ホームページをご覧下さい。
https://www.city.shinagawa.tokyo.jp/PC/kenkou/kenkou-byouki/hpg000033440.html

舘内記念診療所

!このページのコンテンツは全て院長 医学博士 安部英彦の監修に基づいて執筆・制作されております。