今でも分からない奇妙な体験 往診先の特殊能力者

昔、往診先で奇妙な体験をしたことがあります。
今から、20年程前のことです。
患者様のご家族から、自宅に往診して貰えないかという依頼がありました。
肝臓がん末期の患者様です。
食事も召し上がれないほど衰弱していました。
水分も僅かに口へ含むだけ。
毎日のように、点滴を行うしかありません。
対応可能な範囲で、往診を引き受けしました。

ある日、患者様のご家族から、ご質問がありました。
「特殊な能力を持っている人に来て貰い、施術を受けても良いでしょうか?」
既に、全身に黄疸がみられ、肌は黄色と言うよりも殆ど茶色。
お腹は、腹水で臨月を迎えた妊婦さんのように腫れていました。
改善の見込みは全くなく、現在の状態を少しでも維持できるように管理することが往診の目的でした。
「ご本人が希望すれば、何を遣っても良いですよ。」
即座に申し上げました。
しかし、一体どんなことを遣っているのか、見たくなるのが人情です。
そこで今度は、私からご家族にお願いをしてみました。
「若し良かったら、往診に行く時間に合わせて、その方に来て戴き、施術の様子を見せて貰うことが出来ますか?」

その日は、間もなく訪れました。
当日、患者様のお宅へ伺うと、既に横たわった患者様の隣に座り、両手を上にかざした中年の女性がいます。
体に沿って頭から足、足から頭へとその手をヒラヒラと動かしているのです。
決して、如何がわしい雰囲気もなく、何処にでも普通にいるような「叔母さん」でした。
その様を凝視していると、
「分かります? もう何か感じていますか?」
突然、私に話し掛けてきます。
「いや、別になにも・・。」
私も、正直一体どういう風に答えて良いのやら分からず、感じたままを答えました。
「それじゃ、此方にどうぞ。」
招かれるまま、隣に座りました。
「ここに、手を出して。」
と患者様の上へ手を出すように指示されます。
誘導されるがまま、右手を差し出すと、
「ジ~ン」と痺れるような感じがしたのです。
「これは、私の右手がもともと痺れているのかも知れない。」と思い、
今度は確認のため、左手を差し出しました。
これも、また同じく「ジ~ン」とします。
思わず、「おー。」と口を衝いて、声が出てしまいました。

初めての体験で頭が混乱し、15分程その施術をじっと眺めていました。
「世の中には、まだ分からない現象が沢山あるのだ。」
とその時、感じ入ったという思い出が今回のお話です。

その後、間もなく患者様は他界されました。
ご家族へ、「施術を受けた後は、どんな様子でしたか?」と尋ねたことがあります。
「何だか分かりませんが、顔の表情が少し柔らかくなったような気がします。」とご返事戴きました。

本当に超常現象だったのか、何かトリックがあったのか。
若しかすると、後者だったかも知れません。
今も良く分からないままです。

!このページのコンテンツは全て医学博士 安部英彦・院長 医師 安部公崇の監修に基づいて執筆・制作されております。