ビタミンCの不足は認知症になりやすい

ビタミンは生存に必要な栄養素ですが、身体の中で十分な量を合成できない有機化合物です。
現在、人間のビタミンは確認されたもので13種類ありますが、ほとんど体内での産生が出来ないため、食品から取り込む必要があります。
このため、ビタミンが豊富に含まれた栄養補助食品が数多く市販されています。
ビタミンの不足による代表的な病気としては、壊血病(ビタミンC)、脚気(ビタミンB1)、夜盲症(ビタミンA)、くる病・骨軟化症(ビタミンD)などが有名です。

私達がビタミンと呼んでいる物質の存在を発見したのは、鈴木梅太郎という日本人です。
1910年(明治43年)に、ハトやニワトリを白米で飼育すると脚気と同じ症状がみられて死亡すること、玄米や糠(ヌカ)に脚気を治す成分があることなどを日本国内の学会で発表しました。
米糠(コメヌカ)の有効成分はオリザニンと命名され、脚気だけでなく生命の維持に欠かせない物質であると報告したのです。
このとき、私達が今ビタミンと呼んでいる物質の存在を暗示してはいたのですが、論文の翻訳内容もれが原因で残念なことに海外へ知れ渡ることがありませんでした。

1912年(明治45年・大正元年)カシミール・フンクというポーランドの化学者が米糠(コメヌカ)の抽出成分にアミンの性質があることから、「生命(vital)のアミン(amine)」という意味でこれを「vitamine」と命名しています。
現在は e を省き「vitamin」と表記されるようになりました。
ビタミンは正式な化学構造が判明するまで、発見された順番に便宜上、アルファベット順の符号を付けられましたが、なかにはビタミンFなど間違いだったというものもあるようです。

アスコルビン酸(ビタミンC)はイギリスの化学者、ウォルター・ハースが化学構造を決定しました。
ウォルター・ハースは、この功績により1937年ノーベル化学賞を受賞しています。
ビタミンCがアスコルビン酸と命名された経緯は、壊血病という病気の名前に関係しているようです。
ビタミンC(アスコルビン酸)が不足すると壊血病になりますが、壊血病は英語で scurvy と言います。
アスコルビン酸の投与により壊血病が治るため、壊血病(scurvy)に否定する接頭辞 a を付けて Ascorbic としたのがアスコルビン酸命名の由来だそうです。

アスコルビン酸はビタミンCの正式名称ですが、ビタミンCの方が浸透しており、アスコルビン酸と命名されて後もビタミンCと呼ばれています。
アスコルビン酸は、多くの代謝経路に必要な物質で、生命の維持に欠かすことの出来ない生理活性物質です。
その働きから、病気に対しての様々な効果が期待されています。

美容への効果や癌に関連した効果など、これまでに多種多様な効果効能が報告されていますが、今回は認知症との関連性について調査した研究結果をご紹介してみます。

金沢大学の研究グループによる発表で、2018年の「Journal of Alzheimer’s Disease」に掲載されました。

中枢神経で脂質の代謝に関わっているタンパク質「アポE4」遺伝子をもっている人はアルツハイマー症を発症し易いことが以前から分かっています。
アルツハイマー型認知症の6割程度が「アポE4」を持っていると言われています。

統計上、「アポE4」をもっている日本人は、もっていない人に比べてアルツハイマー病の発症リスクがおよそ4倍にもなると報告されているのです。
特に女性の場合では、「アポE4」をもっているとアルツハイマー病を発症する大きな危険因子になると考えられています。

そこで、「アポE4」をもっていても認知症がみられない高齢者の栄養や食品の習慣に着目し、統計調査を行っています。
認知機能の正常な65歳以上の高齢者を対象に、7年から8年後に追跡調査し認知機能を評価した結果、「アポE4」を保有している女性で血中ビタミンC濃度が高いグループと低いグループを比べると、高いグループの方は認知機能低下のリスクが 0.10 倍減少すると判明したそうです。

これがどれ程すごい数字なのかは分かりませんが、認知機能低下のリスクを背負った「アポE4」保有の女性では、ビタミンCが豊富に含む食品を多く摂取することで認知機能低下リスクを少なくする可能性があるという研究結果でした。

ビタミンC不足にならないよう、新鮮な野菜や果物を毎日欠かさず戴くようにすれば、少しは認知症になり難いのかも知れません。
要するに、食事は大切だということです。

舘内記念診療所

!このページのコンテンツは全て院長 医学博士 安部英彦の監修に基づいて執筆・制作されております。