BCGと新型コロナウイルス感染症の予防効果について
患者様から戴いたご質問へ、
忽那賢志(国立国際医療研究センター国際感染症センター)先生の見解を拝借し、お答えしたいと思います。
先ず最初に、簡単なBCGの説明から
BCGは結核を予防するワクチンの通称で、牛型結核菌を弱らせ、ワクチンにした生ワクチンです。日本では、生後1年の間(通常生後5カ月から8カ月の間)に接種することになっています。生ワクチンですので、免疫が弱っている方や妊婦さんは接種することができません。
これまで、結核の予防以外にも予防効果も調査されており、小児期の呼吸器感染症や敗血症を減らす効果があることや、低出生体重児の死亡率を減らす効果が認められるという主旨の論文が発表されているようです。
結核以外の感染症に対し、なぜ予防効果があるのか十分に解明されていませんが、BCGを接種することにより、白血球の成分の一つである単球に働きかけて自然免疫を強化するゲノム変化を起こすことや、炎症促進性サイトカインの分泌、特にIL-1Bを増加させることが影響しているのではないかと考えられています。
さて、新型コロナウイルス感染の流行分布からみると、
BCGを定期接種している国(日本、中国、韓国、香港、シンガポールなど)では新型コロナウイルスの感染者が比較的少なく、それに対し、定期接種を採用していない国(イタリア、スペイン、米国、フランス、英国)では新型コロナウイルス感染者が多いとも思われます。
しかしながら、日本ワクチン学会では以下のような見解です。
「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対する BCG ワクチンの効果に関する見解【2020.4.3 Ver.2】」
「新型コロナウイルスによる感染症に対してBCGワクチンが有効ではないか」という仮説は、いまだその真偽が科学的に確認されたものではなく、現時点では否定も肯定も、もちろん推奨もされない。
BCGワクチン接種の効能・効果は「結核予防」であり、新型コロナウイルス感染症の発症および重症化の予防を目的とはしていない。また、主たる対象は乳幼児であり、高齢者への接種に関わる知見は十分とは言えない。
本来の適応と対象に合致しない接種が増大する結果、定期接種としての乳児へのBCGワクチンの安定供給が影響を受ける事態は避けなければならない。
現時点でCOVID-19を予防する目的でBCGを接種することは推奨されません。
結論
BCG接種と新型コロナウイルス感染症の因果関係は全く分かっていないため、
新型コロナウイルス感染症の予防目的でBCG接種を行うことは、現時点において意味がないと考えます。