恐れ入谷の鬼子母神 朝顔の種には毒がある

「 恐れ入り谷の鬼子母神 」
フーテンの寅さんでお馴染み、如何にも江戸っ子らしい地口です。
( 地口とは、地名を入れたダジャレのことを言います )

入谷の鬼子母神とは眞源寺。
毎年七月には朝顔市で賑わいます。
地口で語られるほど有名なお寺ですが、予想と反して境内は小さく、初めてお出でになった方は少し拍子抜けするかも知れません。
失礼な言い方かもしれませんが、私はそんな感じでした。
申し訳ありません。

ところで、朝顔の種は漢方薬として利用されます。
生薬名で「牽牛子:ケンゴシ」と言い、緩下剤として便秘に使われるようです。
種を食べることはないでしょうが、小さな子供は何でも口にします。
私も小さい頃、朝顔の種を噛みました。
下痢したかどうか覚えていませんが、お腹が痛くなった記憶があります。
小さなお子さんがいらっしゃるご家庭で、朝顔を育てる時には、お気を付け下さい。
毒があり、激しい腹痛や下痢を起こします。

牽牛子の牽牛(ケンギュウ)は、七夕でご存知の彦星。
今年の七夕も雨でした。
旧暦の七夕は一ヶ月ほど先です。
新暦となった明治以降、七夕は梅雨。
彦星と織姫の再会は、難易度が高くなって仕舞いました。
偶然にしか合えないことが、また儚くて良いのかも知れません。

「 恐れ入り谷の鬼子母神 」
地口の作者は、大田南畝(蜀山人)。
これには先があり、「恐れ入谷の鬼子母神、どうで有馬の水天宮、志やれの内のお祖師様」と続いているそうです。
水天宮は、日本橋蛎殻町にある神社で、福岡県久留米市にある水天宮の分社。
昔、蛎殻町に有馬藩のお屋敷があり、そこへ分社をお祀りしたものが今の水天宮です。
お祖師様とは、杉並区堀之内にある妙法寺のことだそうです。
「そんな話あ、とっくに知ってっから面白くもねえ。」とおっしゃる方へ。
こりゃまた、恐れ入り谷の鬼子母神。

舘内記念診療所

!このページのコンテンツは全て院長 医学博士 安部英彦の監修に基づいて執筆・制作されております。