精巣ホルモンは大腸癌の発生率を上げる?

大腸癌は、肺癌に次いで日本人の癌における死因、第2位です。
性別でみると、男性では1位肺癌、2位胃癌に次いで、第3位。
女性では、癌の死因で第1位となっています。
乳癌が女性の癌の第1位と言われるのは、罹患数としての順位が1位だからです。
その罹患数も男女合わせると、大腸癌が第1位になります。
この傾向は、15年以上前から続いており、その原因は、ライフスタイルの欧米化だと言われています。
和食離れが進み肉食が増えてきたこと、機械化により生活が便利になった結果、日常的に余り身体を使わなくなってきたことなどが挙げられるようです。
また、アルコール摂取量が多い人ほどなりやすいと言われています。

女性の大腸癌は、閉経後から発症しやすい傾向だと言われていますが、高齢になるに従い癌の発症率も上昇するので、ある程度、当然と考えるべきでしょう。
しかし、ここで興味深いことに「テストステロン」が大腸癌の発症に関与しているかも知れないという報告を目にしました。

「テストステロン」は精巣ホルモンです。
男性に大腸癌が多く見られることから着目した研究なのです。
国立がん研究センターの統計発表からみると、人口10万人に対して、全年齢の部位別罹患率を比較すると、男性124・女性88で確かに男性が多いと分かります。
研究は「テストステロン」の存在が有るか無いかでどれ程の差が出るか、ラットを使って実験したそうです。

ミズーリ大学獣医学部獣医病理生物学で行われた研究です。
大腸腫瘍になりやすく遺伝子改変したラットを使用し、雌のラットに卵巣を摘出した群と摘出していない群で差が出るか、また、女性ホルモン「エストロゲン」を投与した群では変化が現れるかをみています。
これらの群では、大腸腫瘍の発生率に殆ど差が現れませんでした。
逆に、雄のラットでは精巣を除去してどうなるか調べてみたところ、精巣除去を行った群では大腸腫瘍の発生が減少し、「テストステロン」を投与すると逆に増加したと報告しています。

これまでは、「エストロゲン」に大腸癌の発生を防御する作用があるのではないかと考えられていましたが、そうではなく、「テストステロン」が大腸癌の増殖に何らかの影響を与えているのではないかと結論付けています。
また、閉経後の女性に大腸癌が増加する理由についても、次のように説明しています。
「テストステロン」は女性でも僅かに分泌されています。
しかし、「エストロゲン」は閉経後に減少して行くため、相対的に「テストステロン」が多くなる。
結果、閉経後から大腸癌を発症し易くなるのではないかと推測しています。
詳細なメカニズムは分かりませんが、何らかの形で大腸癌の発生に「テストステロン」が関与している可能性は否定できません。

女性は便秘傾向の方が多いので、大腸癌を発症しやすいのかと思っていたのは間違いで、便秘と癌は関連性をもたないと国立がん研究センターでは報告しています。
女性の癌の死亡順位では、大腸癌が第1位です。
しかし、男女で発生率を比較すると男性の方が発症し易いことから考えると、女性の場合は、進行した状態で診断されることが多いのかも知れません。
下部消化管検査は胃カメラと比べ、前処置が大変です。
沢山の下剤を服用し、何度も下痢を繰り返さなければ検査が始まりません。
大腸検査に伴う前処置の煩雑さが、敷居を高くしているとも考えられます。

しかし少なくとも、便潜血反応の検査は受けてみましょう。
生肉を食べたからという理由で、陽性に出ることはありません。
人間の血液だけに反応するものです。
陽性に出た場合は、上部消化管からの出血ではなく、下部消化管からの出血を示します。
便潜血陽性と結果が出た時は、必ず下部消化管検査(大腸カメラ)を受けて下さい。
若し、早期の癌が見つかれば儲けものです。

アルコール摂取量との関連は、適当量であれば「テストステロン」の上昇が認められるものの、慢性的な大量の飲酒は逆に低下すると考えられるので、「テストステロン」との関連は複雑で評価出来ません。
男女を問わず、肉食に偏ることなく、日頃から運動を心掛け、お酒は控えるように致しましょう。