腰痛は脊椎動物の宿命 腰部脊柱管狭窄症は歳と共に

老いとともに、腰の痛みを訴える方が多くなります。
脊椎動物の定めとして、腰痛は切っても切り離すことが出来ない永遠のテーマです。
なかでも、最もポピュラーな病気は腰部脊柱管狭窄症です。
長時間のデスクワークやドライブなど、座って過ごす時間が長い職業は、特に多くみられます。
長時間同じ姿勢で座っていると次第に腰が痛くなったり、歩いていると次第に腰が痛くなったりします。
間欠性跛行といい、歩いては痛くなって止まり、少し休むと楽になり歩くような歩き方。
姿勢を前傾し、前屈みになるような位置にすると痛みが楽になるので、手押し車で散歩するのは良い方法です。
痛みだけではなく、同時に痺れも感じる方が多いようです。

ほとんどの場合、原因は脊柱管を取り囲む組織の老化です。
脊柱管の後にある黄色靭帯が、老化でもろくなり厚くなります。
椎骨の骨は長年の負担で変形します。
椎間板は老化のため形が壊れると、前後に膨隆してきます。

脊椎は起きている状態で、積み木のように縦一列に並んでいます。
脊髄神経は脊柱管という椎骨の中の穴を通り、脳から尻の位置まで脊椎一つ一つの縦の穴を貫いて通っています。
其々の椎骨の後ろから、身体中へ神経が出入りしているのです。
その脊椎に、先程のような現象を起こすことで神経を圧迫するようになり、痛みを感じるようになります。

痛みや痺れだけではありません。
圧迫されている神経の位置によっては、膀胱直腸障害を起こす場合もあります。
脊髄が一本一本の細い神経になり、馬尾という馬の尻尾のような状態となる部分。
脊椎の位置は、仙骨辺りになります。
この位置で障害を起こした場合、尿や便が意識せず出てしまう状態になるのです。

治療法として広く利用されている薬剤は、経口プロスタグランジン製剤です。
末梢循環の血行を促進する作用があり、慢性閉塞性動脈硬化症に対して使用される薬です。
腰部脊柱管狭窄症に効果がある理由の詳細については、良く分かりません。
劇的な効果は期待できませんが、効果を実感する方もいます。
他には、神経の栄養としてビタミンB12を服用や、痛みの際には、非ステロイド性消炎鎮痛(痛み止め)を使います。

それでも痛みが強く、生活に支障がある場合、試みられるのは硬膜外ブロックです。
仙骨辺りから、長い針で硬膜外腔へ局所麻酔薬を注入します。
これは、診察台の上で行うことが可能です。
複数回行っても効果ない場合、神経根ブロックという方法があります。
レントゲン透視下で痛みの原因になっている部位を確認し、麻酔薬と同時にステロイドを混ぜて注入することがあります。
何度か繰り返して行う必要がありますが、それでも治らない強い痛みに対しては、手術の選択肢があります。

手術には大きく分け、除圧術と固定術があります。
除圧術は、骨の一部と厚くなった黄色靭帯などを切除し、脊柱管を広げる方法です。
固定術は、腰椎すべり症や側弯症などを伴う場合、脊柱管を広げるだけでなく脊椎を矯正する目的で、金属の器具を使い固定する方法です。
当然、入院が必要となりますが、術後のリハビリが非常に大切です。
手術により痛みは軽減しますが、痺れは続く方が多いように思います。

ご自分で出来る対策は、体重の管理と体操です。
先生によっては、体操は意味がないと仰る先生もおられます。
診断には、MRIが最も役に立ちます。
整形外科への受診が必要です。

舘内記念診療所

!このページのコンテンツは全て院長 医学博士 安部英彦の監修に基づいて執筆・制作されております。