誰でも、「もうこれで一巻の終わりか!」と思ったことが、一度はあると思います。
一瞬でほっとする状況もあれば、暫くその不安が続く場合もあります。
不安が長く続くのは、嫌なものです。
頭の中で色んな思考が巡り、更に不安が膨らみます。
随分、前の話です。
その当時、戸建ての借家で暮らしていました。
設備は古く、風呂の燃料はガスですが、給湯ではなくボイラー。
水を風呂桶に溜めて、湯を沸かすタイプです。
まだ、息子らは大学受験生でした。
ある日、夜中に何となく嫌な空気で目が覚めました。
目が覚めたついでにトイレへ行こうと、二階にある寝室のドアを開けた瞬間、辺一面が真っ白です。
全く視界がなく、ドアの向こうは雲の中でした。
「エッ、火事?・・。 これだけ煙が凄いということは、もう既に一階は火の海かも知れない・・。 若しそうだとすれば、階段を降りることも出来ない・・。 屋根に上る方法はないし・・。 もう、これで死ぬのかも知れない・・。 煙で苦しい思いをするのか・・。 火の穂で熱い思いをするのか・・。」
想像が次から次に巡り、もう頭の中はパニック。
取り敢えず、側に寝ていた家内を起こし、狼狽える家内と共に大声を出し子供連を起こします。
「おーい! おーい! 皆、起きろー!」
すると、長男が隣の部屋から出てきました。
「何、どうしたのこれ?」
「分からん・・。」
「ちょっと床、湿っぽくない?・・。」
と遣り取りしていると、次第に冷静を取り戻してきます。
「余り、煙臭くない。」
「何か、下の方からポコポコ音が聞こえるみたい。」
というと、長男は一階の風呂場へ。
「風呂だ、風呂。 風呂、空焚き!」
風呂場を覗き込むと、湯は僅かに風呂桶の底でグツグツと沸き立ち、殆ど空っぽ。
ボイラーへ繋がる窯の金属と風呂釜のホーローが熱で焼け、真っ赤になっていました。
もう少しで火事を起こすところでした。
次男が深夜、風呂へ入ろうとし、追い焚きしたまま寝てしまったようです。
昔は安全装置などありません。
火事が未然に防げたのは幸いでした。
ドアを開けると、向こうは煙。
夜中のアクシデントは、本当にパニックです。
舘内記念診療所